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【書籍化】影魔法使いは悪役かませ犬のままで終わらない  作者: くーねるでぶる(戒め)


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040 王都クレイヴン

 大歓声を受けながら王都のメインストリートを進むことに三十分ほど。


 目の前には庭付きの大きなお屋敷があった。王都にあるオールディス侯爵家のお屋敷である。


 王都クレイヴンは、見てきた通り防壁に囲まれた街だ。その限られた面積の中でもこんなに広いお屋敷を持っているオールディス侯爵家は、正しく国の重鎮なのだろう。なんといっても侯爵家だしね。


 でも『絶対防衛圏~カチドニアの魔女~』にはオールディス侯爵家って出てこなかったような気がするんだけど……オレの気のせいか?


 もしかしたら、主人公であるシェリルとは違うところで戦っていたから、出番がなかったのかもしれないね。


「じゃあね、シャル」

「ええ。婚約式で会いましょう」


 オールディス侯爵家の屋敷の前で、シャーロットと別れた。


 シャーロットは王族だからね。一か月も留守にしていたらお仕事も溜まっているだろうし、これから大変だ。


「エドワード、少し話があるんだが、今大丈夫かい?」

「馬に乗っていたのでしょう? 疲れているのなら、後でもいいのよ?」


 家族でシャーロットを見送った後、さっそくとばかりに両親が訊いてきた。


「大丈夫ですよ、父上、母上」

「そうか! では、リビングでゆっくり話すとしよう」


 父上は嬉しそうに先陣を切って歩き出す。オレと母上はその後に続いた。


「おかえりなさいませ、旦那様、奥方様、エドワード様」

「「「「「おかえりなさいませ」」」」」


 そんなオレたちを出迎えるのは、執事やメイドたちだ。王都の屋敷の管理を任されていた者たちだろう。


「うむ。さっそくだがリビングを使わせてもらおう。儂とクラリッサにはアルトーのストレートを、エドワードにはクリームたっぷりの――――」

「父上、私にもアルトーのストレートをください」


 父上は僕の好みをよく知ってるね。でも、ここは断腸の思いで断って、お茶にする。クリームはたしかにおいしい。だが、奴は敵だ。


 そんなオレを父上は驚愕の表情で見ていた。


「エドワードはクリームと砂糖たっぷりのミルクティーが好きなんじゃなかったのかい⁉」

「好きですよ。でも、私はシャーロット殿下に痩せることを誓ったのです。その誓いを破りたくはありません」

「なんて素晴らしい覚悟だ……! やはり、褒賞を――――」

「いりませんよ!」


 父上は事あるごとにオレに褒賞を渡したがるなぁ。


 まぁ、それだけ愛されているということなんだろうけど、甘すぎて心配になる。


「立派になって……」

「は、母上、こんなことで泣かないでください」


 母上なんてハンカチを目元に押し当ててるし!


 まったく、オレの両親はオレに甘すぎる!



 ◇



 王都のオールディス侯爵家のお屋敷。そのリビングは、格調高い家具たちに囲まれたオールディス侯爵家の権威を見せつけるような部屋だった。


 大きなローテーブルを挟んで、父上と母上の向かいのソファーに座る。ソファーは適度な反発力で、オレの体を支えてくれる。


 そんなオレの前のローテーブルには、お茶の入ったティーカップとソーサーがあった。ここまでまるで花の香りのようないい匂いがする。


 ティーカップを手に取って一口飲むと、口から鼻へ香りが抜けていく。これがまた心地いい。


 心地いい気分を味わっていると、父上がご自慢のUの字になっているヒゲの先端を整えながら口を開いた。


「それにしても、エドワードの魔法には驚いたよ。最初はバージルが大袈裟に言っているのかとも思ったのだが、エドワードの魔法は本当に強力無比だな! まさか、あのアーミーアントを一人で殲滅するとは思わなかったぞ。エドワード、お前は儂の誇りだ」

「そうですわね、あなた。エドワード、本当によくやってくれました。きっと陛下からもお褒めの言葉を頂けるでしょう。エドワードが謙虚なのは知っていますが、陛下からの贈り物を辞退してはいけませんよ? 失礼になってしまいますからね」


 両親はニコニコでオレを見ている。


 エドワードくんの記憶では、この国では強いというのは美徳らしいので、両親にとってもオレが強いというのは嬉しいことらしい。


 まぁ、下手に怖がられるよりいいけど、ここまで全肯定だと逆に心配になってくるレベルだ。


「うむ。陛下と言えば、今確認中ではあるが、きっとシャーロット殿下との婚約式には、陛下もおいでになるだろう。とはいえ、陛下もお忙しい方だからな。もしかしたら、シャーロット殿下との婚約式は待たされることになるかもしれん。まあ、気長に王都観光でもしていよう」

「そういえば、エドワードは王都は初めてでしたわね。この機会に王都で遊ぶのもいいですわ。それと、少し時間はかかりますけど、親しい貴族の方とのお茶会もする予定ですから、わたくしの自慢の息子だと紹介させてください」

「わかりました、父上、母上」


 王都は、『絶対防衛圏~カチドニアの魔女~』にも登場する舞台だ。もちろん見て回りたい場所なんていくらでもある。


 お茶会は面倒だけど、これも将来のためを思えば仕方がない。


 それにしても、王都観光か。楽しくなってきたぞ!

お読みいただき、ありがとうございます!


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