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【書籍化】影魔法使いは悪役かませ犬のままで終わらない  作者: くーねるでぶる(戒め)


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035 対アーミーアント

「まだまだ来るか! そうこなくっちゃなあ!」


 オレは嗤いながら天然の影を使ってバレットの魔法をエンドレスで行使していく。


 その発射口はすでに全部で二十門を超えている。今、さらに二門追加したところだ。


 その狙いは、だいたい体長一メートルほどもある巨大なアリだ。


 アーミーアント。何度倒しても倒しても湧いてくるさまは、まるで波のようだ。


 撃ち出されたバレットの一発の弾は、一匹のアーミーアントを砕くどころか、二匹三匹と貫通してアーミーアントを屠っている。


 それなのに、アーミーアントの群れは減るどころかどんどん増えている。


 たしかおじいちゃん近衛兵が、二千はいるって言ってたっけ?


 もう千匹近くは倒したはずだが、それでもどんどん増えている。これはおじいちゃん近衛兵が言ってたよりも多いかもな。


「いいね! 楽しくなってきたあ!」


 レベルアップの影響なのか、オレの魔法は威力が上がる一方だし、オレの魔力の最大値も増える一方だ。


 最高にハイってやつだね! 最高だ!


「これは……夢か……?」

「どうなってやがる……⁉」

「はは、ハハハハハハ……」

「ああ……。神よ……」

「どうしてこんな存在がこの現世に……?」


 いつまでも戻ってこないオレとおじいちゃん近衛兵を心配したのか、いつの間にか後ろに近衛兵たちが呆然とした様子で並んでいた。


 彼らの口々から漏れるのは、まるで夢遊病患者のようなたわごとばかりだ。中には壊れてしまったのか、止まらない笑いをあげている者もいるくらいである。


 こんなことで壊れてしまうなんて、なんて情けない。


「オレはまだバレットしか使っていないのに……」


 こんな体たらくで、近い将来に来る戦乱をこいつらは乗り越えられるのか?


 彼らが死ぬのは、この際どうでもいい。だが、ちゃんとシャーロットを守ってくれないと困る。


 彼らはシャーロットの近衛兵だ。おそらく、このままいけばシャーロットが率いる軍の中核を担う存在である。


「それがこれではなぁ……」


 でも、彼らの気持ちもわからなくもないんだ。このカチドニア王国は、平穏すぎた。


 今までだったら、もしカチドニア王国を他国の侵攻を受ければ、シェリルが戦線に投入されただろう。周辺国はシェリルを恐れてカチドニア王国に攻め入ることはなかった。


 だから、戦乱が続くこの世界でも、カチドニア王国は長らく平穏を甘受してきた。


 しかし、これからは違う。カチドニア王国には、もうシェリルという絶対の護符がない。


 おそらく、この危機をどう切り抜けるかが『絶対防衛圏2』のメインストーリーになるはずだ。


 オレはここを乗り越えれば、王都で王様に会える予定だ。その時にそれとなく軍の増強と近衛兵を鍛え直すことを提案してみよう。平和ボケしている奴らに喝を入れてやる。


 そんなことを考えていたら、まるで氷を打ち付けたような涼しい声が耳を打つ。


「エドワード」


 まさかのシャーロットの登場だ。しかも、近衛兵たちの目があるからか、冷たいお姫様モードだ。いつにもまして冷たい視線が痺れるね!


 シャーロットの隣には、フランシスがなんとも言えない顔を浮かべて立っていた。


「これはこれは、シャーロット殿下。このような場所にようこそおいでくださいました」

「礼は不要です」


 礼は不要と言われたが、オレは敢えてシャーロットの方を向いて跪く。


 シャーロットに自身の余裕を示すためでもあり、近衛兵たちにオレはちゃんとシャーロットのことを敬っていますよと示すためでもある。


「状況は……余裕そうですわね? 相手は都市をも飲み込むアーミーアントのはずなのですが……」

「私にとってはただの経験……ただの的でしかありません」

「頼もしい限りです」


 やった! シャーロットに頼もしいと言ってもらえたぞ!


 喜んでいると、もう一団がこちらに向かってきているのが見えた。


 あれは……父上と母上?


 見知った顔の兵士たちに守られながら、父上と母上がこちらに向かって歩いてくる。


「シャーロット殿下、御機嫌麗しゅう。シャーロット殿下もこの息子の晴れ舞台を見学しに?」

「はい。さすがに好奇心が勝ってしまいました」

「わかりますとも。儂たちも同じですからな」

「そうですね」


 頷き合うシャーロットと父上と母上、そしてシャーロット。


 三人ともなんだか通じ合うものがあるようだ。ずるいよ。オレも入れてよ!


「しかし、なんたる光景だ……! あの厄介なアーミーアントがまるで相手になっていない! バレット系の魔法はただの牽制だと思っていたが、極めるとこうまでなるのか! 素晴らしいまでの殲滅力だ! さすがだぞ、エドワード! これには儂も脱帽だ!」

「凄まじいですわね。しかし、こんなに撃ってしまって魔力は大丈夫なのでしょうか?」

「はい、母上。私の魂の魔法は影の魔法。影を操ることができます。影の魔法は元々魔力消費の少ない魔法ですし、バレットの弾を影から作れば、魔力の消費も抑えられます」


 まぁ、魔力がなくなれば影さえあれば無限にMPに変換できるのだが、それはオレの切り札だ。ここでバラす必要はないだろう。

お読みいただき、ありがとうございます!


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