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【書籍化】影魔法使いは悪役かませ犬のままで終わらない  作者: くーねるでぶる(戒め)


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031 エドワードくんの破滅ルート

「剣を下げてくれないか? やっとみんなが誤解していることに気が付いたよ」

「なにを白々しい! オールディス侯爵の策略でないとどうして言い切れる!」


 迫る危機に気が動転しているのか、女騎士が吠える。


 オレが言えたことじゃないけど、まだ若いからなぁ。十代後半くらいだろう。それでシャーロットの近衛兵になっているのだから、おそらく家柄がいいのかな?


 まぁ、どうでもいいけどね。


「黙れ」

「何……?」

「黙れと言ったんだ、新兵。これ以上何かその口から垂れるなら、オールディス侯爵家への侮辱と見做すぞ?」

「ぐっ!」


 いかにも屈辱そうな表情を見せる女騎士。


 そんなんじゃ、シャーロットにも笑われてしまうよ?


 せめてもの抵抗なのか、女騎士は剣を少しだけ下げただけで、依然としてオレの方に剣先を向けていた。


 威嚇のつもりなのかな?


 そんなもの怖くもなんともないんだけど……。


 オレは女騎士のことを無視して、シャーロットの方に体ごと振り向くと、その場で跪いた。


「シャーロット殿下、これは好機です」

「好機?」


 シャーロットのことを殿下を付けて呼んだからか、それとも女騎士がいるからお姫様モードになったのか、その顔には先ほどまでの怯えた表情ではなく、いつもの涼しい無表情が浮かんでいた。


 シェリルのことを話している時は、あんなにも表情豊かだったのに。ギャップで風邪ひきそうだね?


「このエドワード・オールディスに任せていただければ、アーミーアントなど根絶やしにして御覧に入れましょう!」

「「ッ⁉」」


 息を呑むような音を無視して、オレはシャーロットの下知を待つ。


 オレはずっと疑問だった。


 それは、オレの全力についてだ。


 オレは、全力を出したことがない。


 シャーロットの氷の盾を破壊する時も、ちょっとした工夫はしたが、全力とは言い難い。


 なのに、魔法に絶対の自信を持っていたシャーロットを上回ってしまった。


 今思えば、オレに魔法を教えてくれたバージル先生の反応も変だったしね。


 噂では、バージル先生は筆頭宮廷魔導士だったらしい。きっとオレなんかより魔法について詳しいはず。


 そんなバージル先生から見ても、オレの魔法は異常だったとしたら?


 アーミーアントは、オレの実力を計る上での試金石になってくれるだろう。


 そして、オレがアーミーアントに挑むべき理由がもう一つある。


 それは、オレが十中八九悪役モブだということだ。


 これは可能性の話に過ぎないが、おそらく、ゲーム本編のエドワードくんは、シャーロットと婚約できず、自身の魔法の才能に気が付かないまま、魔法を否定した状態で学園に入るはずである。


 学園の正式名称は、王立魔道学園だ。当然、魔法について勉強する。


 しかし、魔法嫌いのエドワードくんのままだったら、落ちこぼれになるのは必定。


 そんな中、魔法が得意な主人公たちが現れる。その主人公は、『絶対防衛圏~カチドニアの魔女~』のシェリルをなぞるなら、きっと平民のはずだ。


 『絶対防衛圏~カチドニアの魔女~』は、成り上がり物語としても人気だったからね。たぶん、その要素は引き継ぐはずである。


 となると、魔法嫌いのエドワードくんは、みんなにちやほやされている平民主人公が目に入るはずだ。


 たぶん、気に入らないとか、自分の方が貴族だから、しかも侯爵の息子だから偉いとか言って難癖をつけるのではないだろうか。


 ここまでくれば、立派な序盤の悪役モブ、エドワードくんの完成である。


 正直、学園編ではバカにされるだけで終わりだろう。命の危機はないと思う。


 でも、ここが『絶対防衛圏~カチドニアの魔女~』の続編の世界だとしたら、必ずこのカチドニア王国は戦乱に陥る。


 オレは、この流れを断ち切りたい。


 できれば戦争自体を止めたいけど、オレにそんな力はないだろう。


 だったら、オレにできることは、自分が死なないように、そして誰かを守れるように強くなることだけだ。


 そのための好機が今、目の前にある。


 アーミーアントなんて滅多にないレベルアップの機会を逃すわけにはいかないのだ。


 期待を込めて見上げる先、シャーロットは少しだけ迷うような表情を見せていた。


「そう言って、姫様をこの地に釘付けにするのが狙いか! その手には乗ってはいけません! 姫様、早くご避難を!」


 後ろで女騎士が叫ぶ声が聞こえる。


 なるほど。そういう見方もできるか。


 ならば――――。


「ご心配でしたら、私をここに残して、シャーロット殿下には退避していただきたく。近衛兵もお下げください」

「ッ⁉」

「貴様、正気かッ⁉」


 フランシスが息を呑み、女騎士がオレの頭を疑うような言葉を投げつける。


 失礼しちゃうぜ。


 オレはいつでも本気だよ?


 オレの言葉を聞いて、シャーロットは覚悟を決めたような表情を浮かべた。


「いいでしょう、エドワード。お好きになさい」

「ありがとうございます。では――――」

「ただし!」


 立ち上がったオレに、シャーロットの言葉が届く。


 なにかあるのか?

お読みいただき、ありがとうございます!


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