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【書籍化】影魔法使いは悪役かませ犬のままで終わらない  作者: くーねるでぶる(戒め)


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028 馬車の中の誓い

 馬車の中。移り変わりゆく景色を見ながらのシャーロットとの話は楽しかった。


 とくに、『絶対防衛圏~カチドニアの魔女~』の主人公のシェリルの話はかなり興味深かった。オレとしては、シェリルのゲームエピローグのその後が知れるまたとない機会だった。


 シャーロットにとって、シェリルは尊敬する祖母らしい。オレたちはシェリル大好きという点で共通の話題が見つかった。


「シェリルおばあ様のことは、学園の教科書にも載っているのよ。とくに、アスカム砦防衛戦やトーヴィーの戦いは絶対に習うわ!」

「いい選択だ」


 アスカム砦防衛戦。カチドニアの国土防衛のために学徒動員された主人公の最初の戦闘だ。


 アスカム砦は、国境から離れているので、改修もされておらず、


 砦を守るのは、これまでの戦闘で傷付いた敗残兵と動員された学徒の合計三百人のみ。


 敵は王国の南に広がるロブレス王国の誇る猛将カリスト率いる兵三千。


 敗戦色濃厚の中、ここで初めてシェリルはその力を見せつけることになる。


 シェリルの魂の魔法。それは光の魔法だ。光を収束させ、レーザーのように撃つことができる。


 しかし、シェリルの魔法は強力だが、MPの消費が激しい。しかも、この時点では、シェリルはブレッド、ボール、アロー、ランスの基本の四つの魔法しか使えない。


 そんな状態でもシェリルは仲間と共に戦い抜き、ついにはアスカム砦を守り切る。


 その作戦は、砦から逃げ出すフリをした兵士を敵に追撃させ、兵士と砦で敵を挟み撃ちにするというものだった。


 どちらかといえば、奇策の部類に入るだろう。しかし、通常の作戦ではあまりにも戦力に差がありすぎて磨り潰されるだけだ。


 泣けるんだ。傷付いた敗残兵たちが囮になることを決意し、まだ若い学生たちに国の未来を託して逝く姿は涙なしには見れない。


 しかし、勝って当然の戦闘で負けたことで面目を潰された敵将カリストとの間に因縁が生まれてしまう。


 この因縁は、物語の終盤まで続いていく。これが良い味を出しているんだよなぁ。


 猛将カリスト。わりと好きなキャラなんだよなぁ。まさに武人といった感じの敵ながら好感の持てるキャラだった。


 アスカム砦を守り抜いたことで、カチドニア王国はなんとか持ちこたえることができた。


 おそらく、アスカム砦が落ちていたら、王都への道が開かれ、カチドニア王国は敗北していただろう。


 そんな重要な砦を敗残兵と学生に任せるなよと思うんだけどさ。この時のカチドニア王国は、三つの周辺国から攻められていっぱいいっぱいだったんだ。学徒も動員しちゃうレベルだからね。もう末期である。


 まぁ、そこからカチドニア王国はシェリルとその仲間の活躍で戦勝国になるんだけどさ。そりゃ教科書にも載っちゃう大活躍だよね。


 そのことをシャーロットに話したら、シャーロットは驚きと共に目を輝かせた。


「あなた、意外と詳しいのね? 歴史が好きなの?」

「歴史も好きだけど、シェリル様が好きなんだ」


 エドワードくんもシェリルに憧れていたし、オレとしてもシェリルは『絶対防衛圏~カチドニアの魔女~』での推しだったからね。最推しは別のキャラだけど。それでも二番目に好きなキャラだ。


「わたくしはシェリルおばあ様の血を引いているわ。だから、わたくしは国を、民を守る義務があるの。そのために、あなたも力を貸してくれる?」


 シャーロットはオレに向かってその細い手を伸ばす。


 シャーロットは王族だ。おそらく、これからカチドニア王国に起こる戦乱を予見するだけの情報を持っているのかもしれない。


 その上で、シャーロットはオレの助力を乞うている。


 オレはシャーロットの伸ばした手を両手で押し抱くように手に取った。


「シャル、オレはいつでもキミの味方だ。当然、力を貸すよ」


 これは、オレの本心だ。


 オレはまだ、シャーロットと出会って一週間も経っていない。


 それでも、オレはこの高貴な少女のことを気に入り始めていた。


 たしかに、最初は父上と母上が望んでいたからだったし、推しキャラだったシェリルの孫というのも大きい。


 でも、オレ自身がシャーロットを気に入り始めているのも事実だ。


 これはオレの勘だが、シャーロットはいい人だと思う。そして、いい人ほど死にやすいのが『絶対防衛圏~カチドニアの魔女~』というゲームだった。


 たしかにシャーロットは公式ページにも載っていた主人公と友だちになるかもしれない重要キャラだが、絶対に死なないとは言い切れない。


 だから、オレはシャーロットに降りかかる災厄から彼女を守りたい。


 自然とそう思えた。


 だから――――!


「オレは、オレの持つすべてをかけて、シャルを、そしてシャルの守りたいものを守ると誓うよ。この誓いは絶対だ!」

「ッ⁉」


 オレがこんなことを言うと思っていなかったのか、シャーロットは瞳が零れそうなほど目を大きく見開いて驚いていた。


 サッと筆を走らせたようにシャーロットの肌がピンクに染まっていく。


「あ、あなたは気軽に大袈裟なことを言いすぎよ。本気にしちゃうじゃない……」

「してもらっていいよ? すべてオレの本心だから」

お読みいただき、ありがとうございます!


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