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【書籍化】影魔法使いは悪役かませ犬のままで終わらない  作者: くーねるでぶる(戒め)


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023 必要なのは手加減?

「紹介します。ここがブラン……」


 林を抜け、ブランコのある広場に到着したと思ったら、オレは目の前の光景に目を疑ってしまった。


 まるでそこだけ強大な嵐が吹き抜けていったかのように木々が一定の高さで薙ぎ倒されている。中には根元からひっくり返っている木もあったほどだ。


 その倒れた木々の中に、ブランコの吊るしてある木々があった。


 幸い、バルコニーは無事なようだが、ブランコが全滅だ。


「コがあったんですけどねぇ……」


 いったいどうしてこんなことに?


 というか、木々の倒れ方が異常だ。


 嵐で倒れたというのなら、他の木々にも影響はあるはず。本当に巨人が「通るのに邪魔だから」と言わんばかりに一直線に木々が折られている。


 だが、現実には巨人なんていないし、人為的なものだと考えると、誰が何のためにやったのか謎だ。


 オレは悲しかった。


 このブランコには、エドワードくんの両親との楽しい記憶が詰まっていたのに……。


「ひどい。いったい誰がこんなひどいことを……」

「あなたでしょ!」

「え?」


 隣を見ると、シャーロットが「マジか、こいつ」と言わんばかりの顔をして、オレを指差していた。


「ひどいよ、シャル。オレがこんなことするわけないじゃないか。第一、する理由がないよ」


 オレは正論を返すと、シャーロットが会話を諦めたように折れた木々の方にオレを連れて行く。


「これを見ても、まだそんな寝ぼけたことをおっしゃいますの?」

「え?」


 シャーロットが指差した方向には、オレの見間違いじゃなければ、魔法練習場があった。その壁は崩れ去っていて、そのまま一直線に木々を薙ぎ倒して道を作っている。


「あぁー……」


 さすがにここまでされれば鈍いオレでも気が付く。


 そういえば、シャーロットの氷の盾を壊す時に放ったランスの魔法。あれは魔法練習場の壁を破壊し、そのまま林を抜けていったんだっけ。


 今思えば、この広場はその林の中にある。


 そうか。オレがやったのか……。


「やっちった」

「それだけ⁉ これだけの破壊を撒き散らしておいて、出てくる感想がそれだけなの⁉」


 シャーロットが信じられないと言わんばかりにオレの顔を見ていた。そんな顔をしても奇麗だなんて、シャーロットの美貌ってすごいね?


「シャル、誓って言うけど、わざとじゃないんだ。こんなことになるとは思わなかった」

「あなた、いつか人を殺した時もそんなこと言いそうね?」

「さすがにひどくない⁉」

「ひどいのはこの惨状よ。あなたの魔法は強力だけど、これからは手加減も学ぶべきかもしれないわね……」

「手加減かぁ……」


 オレの認識としては、魔法は強力であれば強力であるほどいいと思っていた。


 だって、せっかくMPを消費するんだ。その分くらいは大きな効果を期待したっていいじゃないか。


 でも、たしかにシャーロットの言うこともわからなくもない。


 前世で見た公式ページでは、王立魔導学園がゲームの舞台だと明確に書いてあった。


 この王立魔道学園。カチドニア王国の王都にある学園である。主に貴族の子どもが通う学園だね。平民の中でも、魂の魔法が優秀な者も入学を許される。


 その授業でも、模擬戦とかあった気がする。


 もしかして、このまま手加減を覚えないと……殺しちゃう感じ?


 そんなまさか。そう思いたいけど、この破壊の跡を見るとなぁ……。


「手加減、覚えてみるよ……」

「そうしてちょうだい。わたくし、嫌よ? 婚約者が前科者とか」

「気を付けるよ……。それよりどうするかなぁ……」


 オレの視線の先には、折れた木々と全滅してしまったブランコたちがあった。


 せっかくシャーロットをブランコに誘ったのに、これじゃあ何もできない。この惨状を見ながらお茶を飲む気にもならない。


「なければ作ればいいか」

「作る?」

「まぁ見てて」


 オレは魔法を使って日本の公園にありそうなブランコを再現していく。


 待てよ?


 エドワードくんの記憶によると、日本にあったブランコとちょっと形が違った。なんというか、日本にあったブランコがシンプルと表現すると、エドワードくんの記憶にあるブランコは遊園地にありそうな豪華な感じだ。


 これだと、日本の普通のブランコを作ると、シャーロットががっかりしてしまうかもしれない。


「こんな感じか……?」


 オレはエドワードくんの記憶にあるブランコを再現していく。


 なんだか精巧な船の形をした家族で乗れるようなやつだ。もちろん二人で乗ることもできる。


「どうだろう?」


 オレとしては会心のできなんだが!


「……あなたの魔法って便利なのね。想像力がどうかしているわ」


 どうかしているって、ひどいなぁ。


「じゃあ、乗ってみよう」

「大丈夫なの? あなたを疑うわけではないけど、本当に大丈夫なの?」


 それって疑ってるんじゃないのかな?


「きっと大丈夫だよ。座るところにはクッション性も持たせたし、会心のできと言ってもいいね!」


 オレは先に船型のブランコに乗ると、シャーロットに向けて手を伸ばした。

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