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【書籍化】影魔法使いは悪役かませ犬のままで終わらない  作者: くーねるでぶる(戒め)


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013 シャーロット・カチドニアの試練

 立ったまま、オレを睨み付けるシャーロット。その顔は無表情に近く、美人が黙ると怖いとはこういうことかと納得させられた。


 でも、まだまだかわいいね。前世の嫌な上司連中だったら、速攻で土下座を要求してくるところだ。


「わたくしが、かわいい?」

「はい」


 さらに目を細めるシャーロット。


 とはいえ、まだまだ子どもだ。その姿は、精一杯自分を大きく見せようと毛を逆立てている子猫を思わせた。


 オレだって伊達に前世で社会の底辺をしていたわけじゃない。理不尽な要求なんて死ぬほどあったし、自分が悪くなくても謝るのなんて日常茶飯事だった。


 そんなストレスフルな社会を生き抜いてきたオレに言わせれば、シャーロットの圧なんてまだまだ甘々のおこちゃまレベルである。


 それに、シャーロットは王族として教育されているからか、土下座なんて野蛮な要求をしてこないからいいね。


「その顔、嘘ではなさそうですわね?」

「本心ですので。シャーロット殿下はおかわいいですよ」

「ッ! ……いいでしょう、エドワード。ひとまずは合格にしてさしあげますわ」


 よくわからないけど、オレはシャーロットに試されていたらしい。


 あれか? これがシャーロット流の婚約者決めの儀式なのか?


 なんか変な女の子だなぁ……。


「エドワード、今すぐその顔をおやめなさい。まったく、噂などあてになりませんわね……」

「はぁ」


 噂か……。


 たぶん、シャーロットが集めた噂というのは、エドワードくん時代の悪い噂ばかりだろう。それを基準にしているとしたら、オレが合格するのも無理はない。


「ですが! 次はどうかしら?」

「次?」


 どうやらシャーロットの婚約者決めの試験は続きがあるらしい。


「エドワード、魔法が撃てる場所に案内してちょうだい。そこであなたの実力を測ってあげる」

「かしこまりました」


 どうやら次の試験は魔法らしい。


 魔法かぁ。自信ないんだよなぁ。


 一応、自主練はしているけど、もう四日も魔法の授業をしていない。


 噂では、バージル先生はオレの魔法の講師を辞めたがっているらしい。きっと、オレの才能のなさに呆れているんだ。


 オレとしては、影の魔法はかなり応用力の利く便利な魔法だと思っている。悪いのは影の魔法じゃない。オレの想像力のなさだ。


 影の魔法のポテンシャルはこんなものじゃないはずだ。もっと柔軟に考えないとなぁ。


 でも、影の魔法は物理だ。バージル先生の火の魔法のようにものを燃やすというプラス効果がない。


 こんなことになるなら、もっとちゃんと理科とか勉強すればよかったなぁ……。


 そんなことを思いながら、オレはシャーロットとそのメイドを魔法練習場に案内した。


「こちらです」

「立派な施設ですのね」


 弓道場のような施設を見ながら、シャーロットが言う。


「あなたの実力が、この施設に見合っているといいのですけど」


 嫌味? もしかして、オレってシャーロットに嫌われてる?


 でも、さっき怒らせちゃったみたいだし、その反撃のつもりかな?


 王女様といってもちゃんと子どもっぽいところがあってかわいらしいね。


「だから! その子どもを温かく見守るような顔をおやめなさい!」


 でも、その観察眼はさすがの一言だ。オレの心を正確に見抜いてくる。


 顔に出したつもりはないんだけど……。ポーカーフェイスの練習もしないとな。


「そんなつもりは――――」

「いいわ。そうやって笑っていなさい。すぐにその余裕を壊してあげる」


 言い訳しようとしたら、シャーロットはそう言って、オレから二十メートルほど離れたところに陣取った。


「エドワード。わたくしは何よりも破壊力を重んじるわ。だから――――」


 シャーロットが右腕を胸の高さに上げると、横に勢いよく振りぬく。


 その瞬間、オレは寒さを感じた。


 それもそのはず。オレとシャーロットの間には、いつの間には大きな氷の盾ができていた。しかも、まるで雪の結晶ができるように、氷はどんどん成長していく。


 そして、氷は厚さ五メートルほどになるとその成長を止めた。


「次の試験よ、エドワード。この氷を破壊してみなさい。あなたにできるなら、ね」


 ふむ。ようはこの氷の盾を破壊すれば、シャーロットの試験にクリアできるのだろう。


「かしこまりました」


 オレはそう答える。


 しかし、内心困っていた。


 どうしよう?


 シャーロットの用意した盾は氷とはいえ、その厚さは五メートルはある。これを破壊する。かつ、盾の向こうにいるシャーロットを傷付けないとなると、かなりの難易度がある気がする。


 氷の盾を破壊する手段なんていくらでもある。それこそ、氷以上の大質量をぶつけるのが手っ取り早いだろう。


 しかし、盾の向こうにいるシャーロットを傷付けないとなるとあまり派手に氷の盾を壊すのはダメだな。


 さすがに王族に怪我させるのはアウトだろう。


 これはたぶん、必要なもののみを壊してみせろというシャーロットの試練だな。

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