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2 - 第4話「セルヴァ札を、国際貿易通貨として採用」

第3部「 新貨と覇権編 」  


第2章「大霊樹の覚醒と『最後の泥』」

「バカな……!

 陸の帝国軍10万が

 全滅しただと……!?」


港の断崖絶壁に

ずらりと並んだのは、

カイゲン艦隊を

震え上がらせた

『対艦巨砲』だけではない。


アリストの

全工場から持ち出された、

数百台の移動式魔導砲と、

無数の魔素鋼装甲突撃船が、

港全体を

埋め尽くすように展開していた。


そして

船首に立つガルド提督が、

大音量の魔導拡声器で

高笑いを響かせる。


『おいおい、

 本国の老いぼれタヌキども!

 陸の軍隊は全滅だぞ!

 次は海の上の貴様らが、

 その豪華な金ピカの船ごと

 サメのエサになる番だ!』


「ひ……ヒィィィッ!

 舵を切れ!

 退却だ!

 本国へ退却せよーっ!!」


元老院議長は腰を抜かし、

金切り声を上げた。


だが、

自慢の巨大装甲艦隊は、

旋回する間もなく

アリストの突撃船団に囲まれ、

次々と

白旗を掲げて降伏を選んだ。


かつて

「海の絶対者」と誇った

カイゲン商業連合の

権威もまた、

アリストの泥臭き

実利と圧倒的な工業力の前に、

完全に挫(くじ)かれたのだった。



数日後。


アリストの中央広場。


壊滅した帝国軍の武装、

そして

捕獲された

カイゲン連合艦隊の金銀財宝が、

山のように積み上げられていた。


広場を埋め尽くした

何万という民衆の前に、

つばの広い旅人笠を被った

リン・アルティナ、

そしてラグナル、

ガルドの三人が姿を現した。


「アリストの民よ!

 そして、

 生まれ変わったセルヴァの民よ!」


アルティナの声が、

静まり返った街に響き渡る。


「本日、北方神聖帝国、

 およびカイゲン本国との

 講和条約が締結された!

 両超大国は

 我が国の主権を完全に認め、

 我が国が発行する

『セルヴァ札』を

 唯一の国際貿易通貨として

 採用することを承認した!」


静寂の後、

天地を揺るがすほどの

狂乱の歓声が爆発した。


「ウオオオオオオッ!!!!」


「勝った!

 俺たちが超大国に勝ったんだ!」


「セルヴァ札万歳!

 リン・アルティナ殿下万歳!!」



ラグナ大国際港の

水平線を覆(おお)い尽くしたのは、

旧大陸の誰も

見たことがない異形の巨獣だった。


帆を持たず、

3本の巨大な

煙突から漆黒の煙を吐き上げ、

激しい蒸気音とともに

波を切り裂いて

進む全黒鋼の超大型戦艦。


カイゲン本国やアリストが誇る

最新鋭の装甲船すら、

その圧倒的なスケールの前には

玩具に見えるほどだった。


新大陸の超巨大国家――

ヴァルハイト蒸気帝国の

特命派遣艦隊であった。


港に緊張が走る中、

黒鋼の戦艦から下ろされた

艦載艇が埠頭へと横付けされ、

白銀と紫紺の豪華な軍服に

身を包んだ使節団が降り立った。


その先頭に立つのは、

青い瞳を持つ

ヴァルハイト特命全権大使、

カイザー子爵である。


「……ほう。

ここが旧大陸の辺境で、

不当な紙きれを

刷り散らかしているという

泥の港か。……」


カイザーは

手袋をはめた手で鼻腔を覆い、

軽蔑の眼差しで

アリストの街を見下ろした。


彼らを出迎えたのは、

つばの広い旅人笠を被り、

質素な上着を纏った

一人の男だった。


「ようこそ、ラグナ港へ。

ヴァルハイトの大使殿」


「ふん。

貴様が

旧セルヴァ王国の

落ちこぼれ王子で、

現在は『アリスト』なる

自治都市を

牛耳っている指導者か?」


カイザーは

羊皮紙の文書を広げ、

傲慢に言い放った。


「我が

ヴァルハイト帝国

皇帝陛下からの通達である!

リン・アルティナ・セルヴァ摂政!」


その場に居合わせた

ラグナルや

ガルドの表情が硬直する。


「アルティナ」――

それは新大陸の伝承において

「最果ての豊かな大地」を

指す言葉であり、

大洋進出と

世界市場への参入を見据え、

リンが自ら

ミドルネームとして掲げた

称号であった。


「我が帝国は、

世界共通の絶対真理である

『金銀本位制』を

尊(とうと)ぶ者である」


カイザーは

手にした金の羊皮紙を、

リンの足元へ投げ捨てた。

明日 17:10 に投稿します。

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