↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
30/37

2 - 第3話「崩れ去る巨頭と新しい世界」

第3部「 新貨と覇権編 」  


第2章「大霊樹の覚醒と『最後の泥』」

「全砲門、放て!」


リン・アルティナの一声で、

空を埋め尽くすような

魔素砲弾の雨が

帝国の魔導騎兵隊へ

降り注いだ。


大霊樹のエネルギーと

アリストの工業力が生み出した

圧倒的な火力。


輝く白銀の騎兵隊は、

接触することすら叶わず、

爆炎と土煙の中に

呑み込まれていった。


「バ……バカな……!

 我が神聖帝国の精鋭が、

 あのような下品な兵器と

 暴徒どもに

 押されているだと……!?」


本陣の丘の上で、

第一皇子ハインリヒは

顔面を蒼白にさせて

戦況を見つめていた。


整然とした権威、


伝統的な兵法、


綺麗な美徳。


奴らが

信じて疑わなかった

それらすべてが、

泥を啜(すす)って生き残った民の

「貪欲な生のエネルギー」と

「爆発的な工業力」の前に、

見る影もなく

踏みにじられていく。


「ハインリヒ皇子」


いつの間にか、

ハインリヒの本陣のすぐ側まで、

一人の男が足を進めていた。


血と油の匂いを纏(まと)い、

長剣を手に歩み寄ってくる

元・落ちこぼれ第二王子――

リン・アルティナだった。


「な……貴様……!

 いつの間にここまで……!?」


「お前たちの戦いは美しすぎる」


アルティナは

ハインリヒを見下ろし、

長剣の刃先を

皇子の首元へ突きつけた。


「綺麗事の陣形、

 気取った騎士道……

 そんなもので、

 今日を生きるために必死な

 俺たちの胃袋と未来を

 奪えると思ったか!」


「くっ……売国奴め!

 恥を知れ!

 聖国の気高き歴史を

 汚した悪魔めが!」


「悪魔で結構だ」


アルティナは

不敵にあざ笑った。


「綺麗事を抱いて

 枯れていく聖者より、

 泥を啜って民を活かす

 悪魔になる。……

 さあ、皇子殿下。

 次は海の上の

『お仲間』たちの番だ」


陸の超大国・神聖帝国の

10万の軍勢は、

アリストの「泥の暴力」の前に、

完全な崩壊を

迎えようとしていた。


「退(ひ)くでない!

 踏み止まれ!

 我ら

 神聖帝国の栄光にかけて――!」


第一皇子ハインリヒの

必死の悲鳴も、

惨状を食い止めることは

できなかった。


「大霊樹」の根元から

引かれた莫大な魔素エネルギーと、

地下工廠から続々と

供給される最新の魔素鋼兵器。


そして何より

「二度とあの飢えと

 清貧の時代には戻らない」

という民衆の執念が、

帝国軍十万の鉄脚を

完膚なきまでに

叩き潰していた。


「ひ、ひぃぃっ!

 逃げろ!

 こいつらは人間じゃない!」


「皇帝陛下の威光も、

 聖なる騎士道も、

 この怪物どもには通用せん!」


白銀の鎧を

泥で汚した帝国兵たちが、

武器を投げ捨てて

北の平原へ向かって逃げ惑う。


かつて

大陸全土を震え上がらせた

「世界の保護者」の威厳は、

どこにも残っていなかった。


「……勝負あったな」


リン・アルティナは

逃げ腰になった

ハインリヒ皇子の首元に

長剣の刃先を添えたまま、

告げた。


「皇子殿下。

 自慢の十万の軍勢は

 全滅だ。……

 これ以上、

 無駄な血を流したくなければ、

 全軍へ『降伏』の合図を出せ」


「くっ……!

 殺せ!

 殺すがいい!

 我が帝国が……

 この不浄なる泥の街に

 屈することなど――」


「殺しはしない」


アルティナは鼻で笑い、

長剣を鞘へと収めた。


「お前を殺しても

 一文の得にもならん。

 生かして本国へ返し、

 今回の全軍資金および

『セルヴァ札』での

 賠償金の支払いに

 サインさせる。……

 お前たちの誇りなど、

 我が国にとっては

 ただの『請求書』の

 送り先に過ぎんのだよ」


「な……なんという屈辱……!

 お前は

 どこまで我らを

 愚弄(ぐろう)すれば気が済むのだ……!」


「愚弄などしていない」


アルティナは

ハインリヒの背を見つめた。


「これが

『現実に生きる』ということだ。

 綺麗事を抱いて死ぬより、

 屈辱に塗れても生きて

 賠償金を払う。……

 お前たちも今日から、

 俺たちと同じ

 泥のルールで生きるのだ」


時を同じくして、

ラグナ大国際港の沖合。


カイゲン本国が誇る

第1・第2連合艦隊(50隻)の

旗艦『カイザー・ヘルメス』の

甲板上では、

カイゲン中央評議会の

元老院議長自らが、

絶望の表情で

陸地を見つめていた。


「バカな……!

 陸の帝国軍10万が

 全滅しただと……!?」

明日 17:10 に投稿します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。