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2 - 第2話「泥と鉄の衝突」

第3部「 新貨と覇権編 」  第2章「大霊樹の覚醒と『最後の泥』」

「冗談じゃねぇ!!」


「ふざけるな!!」


前線から、

耳を劈(つんざ)くばかりの

地鳴りのような怒号が

巻き起こった。


「誰が食うかそんなパン!」


「俺たちは

 肉と酒を食って笑うんだ!」


「皇帝だか皇子だか

 知らねぇが、

 俺たちの邪魔をする奴は

 頭を叩き割ってやる!!」


正義のためでも、

王家への忠誠のためでもない。


「昨日より良い明日」


「腹いっぱいの飯」という

泥臭い執念が、

2万の軍勢を

一つの巨大な

「狂暴な野獣」へと変えていた。


「ハハハ! 

 聞いたかラグナル、ガルド」


リン・アルティナは

長剣を抜き放ち、

地平線を埋め尽くす

10万の帝国軍へと刃を向けた。


「綺麗事を抱いて死ぬ時代は

 終わった。……

 泥を喰らい、

 欲望を牙として

 解き放った俺たちの

『生き残るチカラ』を、

 帝国の気取り屋どもに

 叩き込んでやる!」


「ウオオオオオッ!!!!」


2万の

泥の兵団が解き放たれた。


整然とした権威と

格式を誇る帝国軍に向かって、

欲望に狂った

「新時代の怪物たち」が、

地響きを立てて

雪崩(なだ)れ込んでいくのだった。


「怯(ひる)むな!

 相手は

 訓練も受けておらぬ

 暴徒と落ちこぼれ王子だ!」


北方神聖帝国の

第一皇子ハインリヒは、

白銀の甲冑を輝かせ、

愛馬の上から剣を掲げた。


「我が帝国軍の隊列は不動!

 聖なる教義のもと、

 不浄なる

 売国奴どもを叩き潰(つぶ)せ!」


帝国の最前線を固めるのは、

重装歩兵が

隙間なく組み上げた

「大盾の壁」と、

その隙間から突き出された

5メートルを超える

巨大長槍

ファランクスの陣列。


かつて

数多の魔物や異民族の突撃を

跳ね返してきた、

伝統と格式を誇る

絶対防御の陣形だった。


だが、

地平線を埋め尽くして

突進してくる

「アリスト泥の連合軍」

の動きは、

帝国軍の将校たちの常識を

根底から打ち砕くものだった。


「突き崩せえええっ!!」


先頭を切って

突っ込んできたのは、

重い鎧(よろい)など

一切身につけていない、

アリスト地下工廠の

鉱夫たちだった。


彼らが手にしていたのは、

長槍ではなく、

魔素鋼の巨大なツルハシと、

蒸気圧で振動する

「掘削用魔導ハンマー」だった。


ズガガガガガガガッ!!


「な……なにぃっ!?」


帝国の兵士たちが

驚愕の声を上げる。


鉱夫たちは

帝国の「大盾の壁」に

突き当たると、

剣を振るうのではなく、

鉱山で岩盤を砕く要領で、

大盾の接合部や

兵士の膝元へ

魔導ハンマーを

豪快に叩き込んだのだ。


激しい火花と金属疲労の断末魔。


伝統ある帝国の鉄壁が、

まるで

脆(もろ)い岩盤のように

ガラガラと音を立てて

崩れ落ちていく。


「壁が破れたぞ!

 殴り込めぇぇぇっ!!」


隙間へ雪崩れ込んだのは、

元闇市の用心棒や

破産した元農民たちだった。


彼らは

作業用の肉厚なナタや

鉄パイプを振り回し、

重装甲で動きの鈍い

帝国兵の隙間へ潜り込み、

泥臭く

泥泥になって

組み伏せていった。


「ひ、ひぃぃっ!

 こいつら、

 陣形も規律もないのか!?」


「ただの野蛮人ではない……!

 死を恐れず、

 泥にまみれて

 襲いかかってくる!」


騎士道の美徳や

陣形の美しさを

叩き込まれてきた

帝国兵にとって、

手段を選ばず、

己の生への執着だけで

襲いかかってくる

アリストの民は、

理解不能な

「怪物」そのものだった。


「……ハッ!

 綺麗な騎士様方が、

 現場の泥臭さに

 泡を吹いてやがるぜ!」


戦場の中央、

アリスト製の

新型魔導車両の屋根の上で、

ガルド提督が

巨大な魔導機関砲を

撃ちまくりながら

爆笑していた。


「陣形だの戦術だの

 言ってる暇があったら、

 目の前の敵の首を噛みちぎる!

 それが俺たち

 アリストの生き残り方だ!」


「殿下!

 敵の右翼、

 魔導騎兵隊が旋回して

 我が方の側面へ

 向かっております!」


ラグナルが大剣で

敵の騎士を叩き伏せながら、

前方の

リン・アルティナへ叫んだ。


「かからせるな」


アルティナは

旅人笠を深くかぶり直し、

胸元の「魔素コア」へ

魔力を流し込んだ。


漆黒のコアが

怪しく光り輝くと同時に、

アリスト陣営の

後方に置かれていた数十台の

「移動式魔導砲」が

一斉に首をもたげた。


「全砲門、放て!」

明日 17:10 に投稿します。

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