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第一部  【 停滞の掟と、餓えゆく王国 】  第三章 【 炎上する聖域 】 第四話 【 灰と泥の戴冠 】

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【第3章 第4話 スタート!/毎日 18:30 更新予定です】


ご覧いただきありがとうございます。


~結束した大群は、ガルシア大公率いる重装歩兵の鉄壁を、数の暴力と圧倒的な熱量で瞬く間に押し潰した~


地べたに這いつくばり、涙と鼻水で顔を汚しながら命乞いをするガルシア。

そこには、かつて「清貧と高潔」を宣い、民を飢えで殺そうとしていた威厳など欠片かけらもありませんでした。


それでは、最新話をお楽しみください!

暴動の波は、もはや誰にも止められなかった。


数千の民衆と、カイゲンの最新兵器を手にした地下の作業員たち。そして、彼らを率いるリンとラグナル。

「腹を満たしたい」というただ一つの泥臭い欲望で結束した大群は、ガルシア大公率いる重装歩兵の鉄壁を、数の暴力と圧倒的な熱量で瞬く間に押し潰した。


「押せ! 王宮の壁を突き崩せ!」

「俺たちのパンを奪い返すんだ!」


大盾の陣形は崩れ去り、銀色の鎧を纏った近衛兵たちは、民衆の持つスコップや石ころ、そしてむき出しの拳の前に次々と地面へ叩きつけられた。彼らが誇っていた「王家の威光」など、飢えた民の執念の前には紙くず同然だった。


「ひ、ひぃぃっ! 退け! 退くのだ!」


黒馬から転がり落ちたガルシア大公は、豪華な長袍を泥まみれにしながら、悲鳴を上げて王宮の門の内側へと這い逃げようとした。


「逃がすか、叔父上!」


人混みを引き裂き、影のように肉薄したのはラグナルだった。

かつて「王国の最前線」を守った英雄の剣がひと閃きし、ガルシアの身を守ろうとした側近たちの槍をことごとく撃ち落とす。そしてリンが踏み込み、ガルシアの喉元へ刃を突きつけた。


「ひ……っ! リン! 助けてくれ! 狂った乱民どもを制止しろ! 私はお前の叔父だぞ! 王家の血を引く重臣だぞ!」


地べたに這いつくばり、涙と鼻水で顔を汚しながら命乞いをするガルシア。

そこには、かつて「清貧と高潔」を宣い、民を飢えで殺そうとしていた威厳など欠片もなかった。


「……汚らわしいな」


リンは冷ややかに見下ろした。


「叔父上。あなたが抱きしめていた『高潔な誇り』の無価値さが、これで分かったか? 綺麗な言葉で腹は膨れない。泥を啜ってでも生き延びようとする民の『商魂』と『執念』こそが、国を動かす本物のチカラなのだ」


「リン……頼む、殺さないで――」


「殺しはしない。死ぬことすら、いまのあなたには生ぬるい」


リンは剣を収め、背後の民衆に向かって大声で宣言した。


「この男から豪華な着物を剥ぎ取れ! 牢へ叩き込み、今日から一日半個の、木の実の殻混じりの黒パンだけを与えろ! 民がどれほどの地獄を味わってきたか、その身で思い出させろ!」


「うおおおっ!」


民衆の手がガルシアに群がり、彼の着ていた高級な絹の衣装が破り取られていく。かつての権力者が惨めに泣き叫ぶ姿を、民は悲鳴ではなく、生々しい歓声で見送った。


広場の中心、壊れた噴水台の上にリンは再び登り詰めた。


王宮の重い鉄門は破られ、奥に鎮座する巨木――大霊樹の黒い影が、夕闇の中に浮かび上がっていた。

リンは手にした「赤手形の黒旗」を大霊樹に向かって高く掲げた。


「アリストの民よ! そしてセルヴァの民よ!」


リンの澄んだ声が、静まり返った街全体へと響き渡る。


「今日、古い王家が押し付けてきた『死の掟』は死んだ! 栄光という名の過去に縋り、綺麗事を抱いて枯れていく時代は終わりだ!」


民衆が息をのんでリンを見上げる。その瞳には、かつての「死んだ魚のような諦め」はどこにもない。自分たちの手で時代をひっくり返したという、野性的で力強い光が宿っていた。


「明日から、この国は全ての港を開く! 闇市を解禁し、他国との貿易を開始する! 土地を耕し、鉱山を掘り、己の手で稼ぎ、腹いっぱいに食え!」


リンは黒旗を地面に力強く突き立てた。


「正しさで腹は膨れない! だが、俺たちの貪欲な『生きるチカラ』が、この死に体の大国を世界一の富国へと変えてみせる! 泥を啜ってでも、這い上がれ!!」


「ウオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」


地鳴りのような大歓声がアリストの空を突き破り、遠く海の向こうまで届くかのように響き渡った。


栄光に酔いしれ、形式に殺されかけた大国が、美徳を捨てて泥の中から這い上がった瞬間であった。


第一部・第三章、完。


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(次回更新は 明日 18:30 を予定しております。お楽しみに!)

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