第49話
匠は花岡事務所から支店に戻るが、支店長は今日は昼から本部での集会があるので午後は不在でかつそのまま直帰の予定だった。
つまり匠が支店長と話せるのは週明けの月曜日となるので、匠は週末を憂鬱な気持ちで過ごすこととなる。
何をしていても『鎌蔵社長は今この瞬間も苦しみながらもなんとかしようとしているだろうに自分は……』とつい思ってしまうのだ。
祥子はそんな匠の様子を見て何かを察したようで、週末は陽の家に泊まるとのことだった。
月曜日に支店長に伝えるべき言葉を頭の中でまとめながら1人、匠はただただ週末が過ぎるのを待ち続けた。
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週が明け月曜日、匠は早速朝一に支店長室を訪れ週末にまとめた言葉を支店長へと伝える。
「なので……鎌蔵社長ならきっと……きっと立て直せると思うんです……」
そう纏めた匠の言葉を支店長は目を瞑り、腕を組みながら聞いていた。
伝えるべきことを伝え、匠は支店長の反応を待つ。
少しの沈黙の後何かを考えていた様子の支店長がゆっくりと口を開く。
「……ふむ……鎌蔵興業はスクエアフォルムからの仕事のみという印象が強かったが……他社の仕事も増やしていたのか……」
「えぇ……実際に注文書を見せてもらいましたが現在200万円ほどは入ってくる予定です……今も色々と営業をかけているようですし……また社長の人柄もあって今後応援を積極的に依頼してくれると言ってくれている同業他社も出てきてます」
その言葉を聞いた支店長は再度深く考える素振りをする。
再度訪れた沈黙の中匠がただひたすらに支店長の次の言葉を待っていると、支店長は1つ頷き匠を見る。
「……その話が本当なら……手形貸付なら対応しても良い……」
「ほ……本当ですか……!?」
一般的にイメージされる3年や5年といった長期間で借入をし、毎月一定額の元本と利息を返済していくという融資の形態を『証書貸付』という。
それに対し主に数ヶ月という短期で借入をし、毎月返済するのではなく期日に一括で返済をする融資の形態を『手形貸付』という。
仮に仕事を契約できたとしても、もちろんすぐにお金は入ってこない。
だがお金が入る前にも様々な支払いが発生する為、実際にお金が入ってくる日を期日として一括返済する短期の貸付を実行する。
将来入ってくる売上の入金日を期日とした約束手形を担保として、それまでの繋ぎ資金としての融資をするのだ。
「鎌蔵社長は信頼できるのだろう?」
もし社長が嘘の売上をでっち上げたり、何かの間違いで期日に売上が入ってこなければ返済は不可能となり、もちろんプロパーなので融資した金額は丸々支店の損失となる。
また手形が不履行になることを不渡りと呼ぶが、もし不渡りを起こしてしまえばその情報は全国の金融機関に共有され、鎌蔵興業の信頼は地に落ちることとなる。
もちろん深森信用金庫としてもその後の新規融資は不可能であろう。
その辺りを含めて支店長は『信頼できるのか』と聞いてきたのだ。
支店長の言葉に匠は力強く頷く。
「もちろんです! ありがとうございます!」
そう言って深く頭を下げた匠に支店長は笑みを向ける。
「ま……やれるだけやってみな」
そう言われた匠は再度礼を言うと支店長室を後にし、急いで支度を整え鎌蔵興業へと向かった。




