第46話
保証協会に匠と鎌蔵社長が到着し少しすると担当者が現れパーテーションで区切られた個別相談ブースに通された。
担当者は60代くらいの初老の男性で、現在机の上に鎌蔵興業の過去3期分の決算書を並べて見ている。
「ふむふむ……いや~これまで頑張ってきたんですね……どんどん業績が拡大していますね……」
そう褒められた鎌蔵社長だが喜ぶ様は一切ない。
「ただ今回取引先が倒産してしまって……1,200万円くらい入ってこなくなってしまって……」
そう言った鎌蔵社長に匠は説明を加える。
「支払いはこの先2か月ほどで600万円程度なんです。預金等かき集めると200万円くらいはあります。また他社との取引も社長は頑張って広げようとしていたところでして、実際に売上200万円程が入ってくる予定です。今後はこちらの他社の仕事量を増やしつつ新規開拓も継続的に行っていくことで業績を回復させる予定です」
匠はなるべく良い印象を与えるように言葉を選びながら喋る。
「なるほどなるほど、メインだけでなく他にも取引を広げる努力もされていたんですね……素晴らしい経営努力ですね……」
「ですので今後のことも考えて500万円程融資をお願いできないかと……」
そう匠が言うと担当者はうんうんと頷く。
2か月だけを見れば預金と入ってくる売上で400万円になるので200万円もあれば支払いが可能だが、その先も見据え2人で相談の上500万円という金額を提示した。
「えぇえぇ……これだけ努力されてきたんです。なんとかしたいですね……満額いけるかは分かりませんが……はい……一度部署で相談して後日連絡差し上げますので」
「よろしくお願いします」
そう言いながら匠が頭を下げると鎌蔵社長も深々と頭を下げた。
――――
それから数日匠は通常業務をこなしながら保証協会からの連絡を待ち続けた。
あの後帰りの車の中の空気は行きとは全く違うものだった。
匠も鎌蔵社長も担当者の反応を見て少し安心したのだ。
「あの言い分であれば満額は難しいかもですが……ある程度は大丈夫そうですね」
と匠が言うと、鎌蔵社長も同じことを感じていたようで。
「えぇ……少しほっとしました……あとは売上を増やす努力ですね……」
と言っていた。
言葉通り鎌蔵社長はあの日から早速色々なゼネコンに泥臭く営業をかけに行っているらしい。
スクエアフォルムの件は業界でも有名らしく、割と鎌蔵社長に同情的なゼネコンも多いらしく、今後見積依頼を回してくれそうな気配はあるそうだ。
元々仕事の品質は良いらしいので一度使われれば継続的に使ってもらえるだろうと匠は思う。
また鎌蔵社長は同業他社間での人脈を大切にしていたおかげもあり、今後自社だけでは人手が足りず他社にお願いして来てもらう『応援』を鎌蔵興業に優先的にお願いすると言ってくれている同業他社もあるらしい。
また職人や材料屋も鎌蔵社長の窮状を知り『支払いを少し待ちますよ』と申し出てくれているところもあるそうだ。
鎌蔵社長が今まで培ってきた努力や大切にしてきた人脈がここに来て実を結ぼうとしているのを見て、匠は少しだけ光が見えてきた気がした。
だが仮に仕事がもらえたとしてもすぐに入金があるわけではない。
やはり今後の支払いを考えると融資は必要不可欠であろう。
そんなことを考えながら匠はひたすら保証協会からの電話を待ち続けていた。
――そして2人で保証協会に直談判した日から4日後の朝、保証協会の担当者から匠宛に電話が入った。




