第43話
予定していた観光地を全て訪問した後、東京へと帰るべく高速道路に乗った直後に行われた『お楽しみビンゴ大会』も大きな盛り上がりを見せつつ無事終了となった。
この後は何度かトイレ休憩を挟みつつ帰るだけなので、匠はほっと安堵のため息をつく。
後は帰りの高速道路で事故が起こらないことを祈るのみである。昨年は帰りに事故渋滞に巻き込まれ19時に到着する予定が21時過ぎになってしまったのだが、その時の車内が最悪の雰囲気だったことを思い出す。
嫌な記憶を思い出したのが顔に出ていたのか、隣の奏が不思議そうな顔で匠を見ていた。
「どうしたんですか……? 険しい顔して」
「あ……いえ……昨年帰りに事故渋滞に巻き込まれて予定よりも2時間以上遅くなったのを思い出しまして……」
「うわぁ……想像しただけで大変そうですね……」
そう言った奏の言葉に匠は深く頷く。
「えぇ……少しずつしか動かない中『トイレ行きたい』から始まり『薬飲む時間だけど持ってきてないんだけど』とか『何時もならもう寝てる時間だよ』とかぽつぽつ文句も言われ……最悪の雰囲気でした……」
「文句は事故起こした人に言って欲しいですね……」
「ですね……ですので今年はそうならないと良いなと……」
匠がそう言うと奏は同意するように軽く頷いた。
そこで会話が途切れる。
ふと『そういえば随分と静かだな』と思い座席から顔を出し後ろを見ると、ほとんどのお客様は眠っているようだった。
朝早くに起きて丸1日バスに乗り観光地を歩き回ったのだ。疲れた体にバスの振動が心地良く響き、眠ってしまうのも頷ける。
匠も仕事なので気が張っているが、そうでなければ寝ているだろうな……と思っていると突然左肩に重みを感じた。
驚き左を見ると、左肩には奏の頭が乗っていた。
奏は朝の時点でも眠そうだったし、観光地でも隅々まで歩き回っていたので他のお客様同様睡魔に襲われたのだろう。
左肩にかかる重みになんとなく奏からの信頼のようなものを感じつつ、匠は奏を起こさないようにゆっくりとポケットからスマートフォンを取り出す。
何度かタップし画面に表示したのは先程の眠り猫でのツーショット写真。
匠は写真を見ながら、芽依との1件以来考え続けていた事を再び考える。
奏から感じる信頼……。
芽依から感じる好意……。
そしてそれらに対する自分の気持ち……。
だが何時も思考は堂々巡りをして、結局まとまらない。
それでも匠は考え続けなくては、と思う。
「……まぁ……そう簡単に結論が出るなら誰も苦労しないよな……」
と匠は小さく呟き、スマートフォンの画面を消した。




