第42話
「それではこちらで一度解散となります。2時間後にまたこちらに集合でお願いします。遅れませんよう時間厳守でよろしくお願いします。」
バスガイドがそう言うとお客様達は各々好きなように歩き出した。
バスが駐車場に着いた後バスガイドに案内されながら少し歩き、鳥居の辺りまで来たところで自由探索となったのだ。
その言葉を聞いた匠は隣にいた奏に対し『では』と言うと、奏は手を振りながら『いってらっしゃい』と返す。
そんなやり取りをした後、匠は小走りで走り出す。
バスの中で匠が奏に説明した『現地での匠達の仕事』は大きく分けて2つ。
1つは観光地各地でお土産を大量に購入する係。
このお土産は帰りのバスの中で行われる『お楽しみビンゴ大会』の景品として使用される。
訪れた各地でお土産屋さんに行き、事前に決められた予算と相談しながら決められた個数になるよう購入していくのだが、人気のお土産だとお客様が個人的に購入しており、被ってしまう可能性が高いので『お客様が個人的に買っては無さそうだが、もらって嬉しいお土産』という微妙な所を選定するセンスが必要となる。
もう1つは訪れた観光地の目玉の場所で待機し、お客様が来たらお客様のカメラやスマートフォン等を預かって撮影する係である。
日光東照宮では『見ざる、言わざる、聞かざる』の三猿と『眠り猫』がその対象で匠の担当は眠り猫の為、真っ先に現地へと向かったのだ。
現地に着いて実物を確認すると、職員だと分かりやすいように旗を掲げるように持ちつつ、どう撮れば綺麗に撮れそうか確認する。
しばし待機していると深森信用金庫の目印を付けたお客様が現れたので匠は笑顔で手を上げ。
「良かったらお写真お撮りします」
と言いながら近づき、お客様が手に持っていたデジタルカメラを預かった。
――――
匠がひたすら眠り猫とお客様をカメラに収め続けていると、奏が姿を現す。
「カメラ係お疲れさまです」
と言いながら匠に近づくと、頭上にある眠り猫に気付いたようだ。
「お〜可愛いですね〜」
「良かったら写真撮りますよ」
と匠が他のお客様同様写真を撮ろうと奏に近づくと、奏は少し考える素振りをした後。
「折角ですし一緒に撮りましょう!」
と言ったので匠は驚く。
「え? 私とですか?」
「他に誰がいるんですか? ほらこっち来てください」
奏は驚いている匠の手を問答無用とばかりに引き眠り猫の下まで来ると、スマートフォンを取り出しカメラを起動した後インカメラに切り替える。
「はい撮りますよ〜3·2·1……」
匠は戸惑いつつもとりあえずカメラの辺りに視線を送る。
カシャリと小さくシャッター音が鳴り響いた後、奏は撮れた写真を確認すると『あはは』と笑った。
「朝倉さん顔硬っ!」
と言われ匠は恥ずかしさを感じつつ。
「あんまり写真撮られるの得意じゃ無いんですよ……」
と言い訳のようなものを口にするが、奏は聞いているのかいないのかしばし笑顔で写真を眺めた後満足したようで。
「ではでは、引き続き頑張ってください」
と言いながら先へと進んで行った。
その後ろ姿を眺めつつ『まるで嵐だな……』と考えていると匠のスマートフォンから通知音が鳴る。
周りに他のお客様もいないのでスマートフォンを手に取ってみると、奏からメッセージアプリに先程の写真が送られてきていた。
匠はその真顔の匠と笑顔の奏が一緒に写った所謂ツーショット写真を見て、何故かは分からないが何とも言えないこそばゆい気持ちになるのであった。




