第36話
芽依と祥子の会話を聞きながら、匠が日本酒に口をつけつつ先程の芽依の言葉を頭の中で反芻していると、唐突に祥子が匠に視線を向ける。
匠が『何……?』と問いかけると。
「そういやあんたとこういう話した事無かったなぁと思って。あんた好きなタイプとかあるの?」
「えぇ……あんま考えたことないし……」
「じゃあ今考えて」
そう祥子にバッサリと言われ匠は困惑するが、チラリと芽依に視線を向けると興味深そうにこちらを見ていた。
芽依はちゃんと英語に逃げずに答えたのだ、自分が答えないのはフェアじゃないよな……と思い少し思考する。
「……ん〜……強いて言うなら……一緒にいて落ち着く人……とか……? いやでも分かんない……好きになったらその人がタイプじゃない? ぶっちゃけ姉ちゃんも陽さん元々タイプじゃ無かったでしょ?」
匠は祥子の学生時代の元彼を何人か知っているが、陽とは全然タイプが違ったのでそう推測したのだが、どうやらそれは正解だったようで、それを聞いた祥子は『確かに……』と納得したようだが、少しして『あっ』と何かを思い出した様子で口を開く。
「え、じゃあ大学生の時の彼女はどんなタイプだったん?」
「……え?」
祥子の言葉に対し反応したのは芽依だった。
以前匠は芽依に『今まで付き合った人は居ない』と伝えていたので自然な反応だろう。
芽依が不思議そうに匠を見たので、匠は慌てて弁解する。
「いやいや……! 彼女いなかったよ……!?」
「え? マジ? でも大学3年生くらいの時に電話かかってきたと思ったら慌てて自分の部屋に行ってそのまま何時間も通話してたじゃん? 一時期よく部屋から話してる声が聞こえたし……てっきり彼女と通話してるんだと……」
「違う違う! 当時ハマってたゲームのクランの人達と話してただけで……あとその中でかなり仲良くなった人と通話したりしてただけで……彼女とかではないから……!」
それを聞いた祥子は拍子が抜けたような顔をする。
「そうなん? なんだてっきり……」
「頼むから急に変なこと言わないでよ……」
と言いながら匠が芽依を見ると、芽依は少し困ったように笑った後。
「嘘つかれたのかと思ってびっくりしました」
と言ったので。
「そんな悲しい嘘ついて意味ありますかねぇ……」
と匠が自虐的に言うと芽依は『確かに』と納得した様子でへにゃりと笑う。
少しすると興味が別の所へ移ったようで。
「ちなみにハマっていたゲームってどんなゲームなんですか?」
と聞いてきたので匠は頭の中で整理する。
「え〜っと……広いフィールドの中で……プレイヤーはモンスターを倒すもよし、鍛冶屋とか農家とか職人になって稼ぐもよしみたいな……割と自由に生活する感じで……その中にクランって集まりがあって一緒に協力したりしながらプレイする……みたいな感じですかね」
「へぇ〜……そんなゲームがあるんですね……」
そのやり取りを見ていた祥子が何かを思いついたような表情をした後に口を開く。
「折角家来てるんだし、匠が部屋で実際に見せてあげれば良くない?」
と言ったので匠は芽依を見る。
一応可能性を考え部屋は掃除してあるし、見られて困るようなものは元々無い……が……。
「えっと……興味があるようでしたら……」
と匠が言うと、芽依は何時ものへにゃりと眉が下がる笑顔になった後。
「嫌でなければ是非」
と言ったので、匠は芽依を部屋へと案内しようと立ち上がると芽依も続く。
祥子と陽は興味が無いようで。
「陽〜その梅酒飲んで良い?」
「もちろん、ソーダ割?」
とやり取りしていたので、匠は2人を置いて芽依と2人で部屋へと歩き出した。




