第35話
「へぇ~お2人って3歳差なんですね」
「そうそう、うちの方が上なんだけどね」
「ちなみにお付き合いされてからどのくらいなんですか?」
「そろそろ5年になるかな~」
「え!? 凄い長いじゃないですか!?」
「まぁね~色々あったけどなんだかんだ続いてる感じ? みたいな」
そう盛り上がりながら会話をしているのは芽依と匠の姉である祥子だ。
先日出会ったお祭りの日から2人は連絡を取り合っていたらしく、あれよあれよと祥子が提案していた『匠と祥子が住んでいるアパートでの飲み会』が決定した。
メンバーは匠と祥子とその彼氏である陽に加え芽依の4人である。
匠と祥子は赤ワインを準備しており、陽は梅酒を、芽依は日本酒を持参してきた。以前飲んだら美味しかったが普段買うような値段では無かったそうで、この機会にとわざわざネットで探して購入したらしい。
飲み始めてからおよそ30分程経過し、ある程度アルコールも回った4人の現在の話題はもっぱら祥子と陽についてである。
と言っても実際に喋っているのはほとんど祥子と芽依の2人ではあるが。
「でも実際にお話し伺って……お2人って結構タイプが反対だなぁって感じてるんですけど……そんなに長続きするの本当に凄いですね……」
確かに陽はバンドマンのイメージとは真逆の真面目な性格だし、口数も多い方ではない。
今日も先程から口を開いておらず、喋ったとしても話しかけられたことに対して簡潔に返事をするだけだし、内容も至って真面目である。
それに対して祥子はずっと喋っているし、割と冗談も好む所謂陽キャなので2人のタイプが反対だと思われても何ら不思議では無い。
「あ〜ね……自分でも不思議だけど……まぁタイプが違うから噛み合ってる部分もあるっていうか……えっと……芽依ちゃん英語イケる?」
そう問われた芽依は少し困惑した顔をしたが。
「あ、はい多少なら……」
と答えると祥子は軽く頷いた後。
「He is always calm《陽はいつも落ち着いてるから》, and I feel comfortable with him《一緒にいて快適なんだよね》. And…… he is addicted to me《あと彼私にべた惚れだから》. That's why we continue our relationship《だからうちらの関係は続いてるんじゃないかな》.…… I think《私が思うに》.」
「Oh……I get it……That sounds great……《なるほど……凄いですね……》. 」
匠と同様陽も英語はからっきしなので、恐らく祥子は直接陽に伝えるのが恥ずかしいことを言ったのだろう、と匠は推測するが、当の本人である陽は『え? なになに? 日本語で喋ってよ……』と困り顔だ。
困惑している陽を見つつ、匠は芽依が英語を流暢に喋っていた事に内心驚く。
世界中と取引する総合商社に居たのだから考えてみれば当たり前と言えば当たり前なのだが、今まで直接目の当たりにしたことが無かったので何となく想像していなかったのだ。
「まぁまぁ私達の話はもういいって……んで? 芽依ちゃん今彼氏いないんだよね? 好きなタイプとかあるん?」
「――姉ちゃん!?」
『いきなりなんて話題を振るんだ!?』と匠が驚き祥子を見ると、祥子は心底楽しそうににこにこと笑顔だ。
「恥ずかしかったら英語でも良いよん」
と言われ芽依は『そうですね……』と思案している様子だったが、ややあって少し恥ずかしそうに口を開く。
「……真面目で思いやりがあって……他人に対して誠実な人……ですかね……」
それを聞いた祥子は『おぉ……』と少し驚いた様子だ。
「まさかどストレートに来るとは……なかなか攻めるね〜」
「……頑張るって決めてるので……」
そう言った後芽依と祥子は顔を見合わせると、芽依は恥ずかしそうに、祥子は心底楽しそうに笑ったのだった。




