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第31話

「で? 2人は仲良くスマホ見ながら何してたん?」


 陽から焼き鳥の入ったカップを受け取りつつ、祥子はにこにことした笑みを浮かべながら恐らく2人を見た時から抱いていたであろう疑問を口にする。


「いや……今度飲みに行くお店決めてただけだよ……」


 という匠の返事に祥子は『へぇ……』と意外そうに言いながら笑みを深くした為、匠は邪推されているのを感じ訂正を試みる。


「えっと……藤森さんがお酒飲むのが好きで色々なお店に行ってみたいらしいんだけど、女性1人だと何かと危ないだろ? だから一緒に行くってだけ……ボディーガードみたいなもんだよ」


 匠がそう言うと祥子は興味深そうに『ふぅん……』と言った後、芽依に対して。


「そうなんだ?」


 と問いかける。


 いきなり話しかけられ芽依は一瞬固まった後、少し照れたような表情をしつつ。


「えぇ……一応そういう感じです……私からお願いしまして……」


 と答えると、その様子を見ていた祥子は『なるほどなるほど……そういう感じね』と言いながら何かに納得したようだ。


 しばし祥子が考える素振りをしていると思ったら。


「え、じゃあさ、お店も良いんだけど良かったら今度うちで一緒に飲まない?」


 と言い出したので匠は困惑する。


 つい先ほど芽依は『色々なお店に行きたい』と言っていたと伝えたはずなのに何故そうなるのだ……と思いつつ。


「姉ちゃん話聞いてた……?」


 と言った瞬間――。


「え!? 良いんですか!?」

 

 と芽依が言った為匠は思わず芽依を見るが、その横顔は本当に嬉しそうだったのでますます困惑が広がる。


「もちろんもちろん全然おっけーだよ。いつにする? あ、連絡先交換しよ~」


 と連絡先を交換しつつにわかに盛り上がっている2人を横目に匠が陽を見ると、我関せずといった様子で1人もくもくとお好み焼きを食べていた。


 陽は匠と目が合うと『諦めろ』といった様子で軽く首を横に振ったのだった。



――――



 匠には芽依と祥子が何を考えているのかさっぱりだったが、14時が近づいてきたので3人と別れ集合場所である駅前広場に向かう。


 芽依も受付に戻るようだし、祥子と陽は歩道で匠達の踊りが見やすい場所を探すとのことだ。


 匠が駅前広場に着くと、既に他の職員達は概ね集まっているようだ。


 匠はなるべく目立たないように集団の端っこの方にこっそりと立つが、営業課長にすぐに気付かれる。


「おぅ朝倉、デートは楽しんできたか?」


 そう営業課長がニヤニヤとした顔で言うと、他の職員達も匠に気付いたようで、好機の視線が一斉に匠に集まる。


「いえ……デートとかそんなんでは……」


 と匠はしどろもどろにそう言うが誰も信じてはいないようだ。


「まぁ今は時間が無いから良いが……後で詳しく聞かせろよ」


 と営業課長が笑顔なのにも関わらず笑っていない目でそう言うと、周りの職員達がうんうんと頷いたので、匠は『これは面倒なことになりそうだ……』と軽く絶望する。


 他の職員に芽依とのやりとりを見られたり、芽依と居る時に姉と遭遇したりと『今日はとんでもない厄日なのでは無いか……』と思いながら匠は他の職員と一緒に午後の部の踊りを踊る為、一度頭の中をあれやこれやは無視し、定位置である駅前広場の中央へと歩き出した。

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