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第27話

「年金は〜!!」


「「「ふかしんで〜!!」」」


「「「ヤットヤットヤットヤットヤットヤットヤットヤット!!」」」


「ヤットサ~!!」


「「「ヤットヤット〜!!」」」


 『地域のイベント』というものは大体何処にでもある。


 そしてその中でも最も多いのは『お祭り』ではなかろうか。


 特に夏になるとあちらこちらで規模の大小はあるものの夏祭りが開催される。


 信用金庫は地域密着型金融機関ということもあり、こういったイベントにはまず間違いなく参加する。


 運営のお手伝いとして参加することもあれば、実際に神輿を担いだり盆踊りを踊ったりブースを出したりといった形で参加をすることもある。


 そして匠がいる支店では毎年夏祭りで阿波踊りを踊っているのだ。


 祭りの開催日の約1ヶ月前から週3回、支店職員全員で仕事を18時に切り上げ、1時間ほど練習をする時間を確保する。

 祭りにはパートの人は参加しないが事務職の女性は参加するので、ほぼ支店職員全員が集まる。


 地元から派遣されてきた先生の指導を受けながら、この1ヶ月見様見真似で練習をしてきたのだ。


 列の先頭には高張たかは提灯ちょうちんと呼ばれる『ふかしん連』と書かれた提灯を高々と支店長が持っており、その後ろを編笠を被りゆかたを着た女性職員が背筋を真っ直ぐに伸ばし、すり足で柔らかく優雅に踊る『女踊り』を踊りながら付いていく。


 女性職員の後ろは法被を着て頭に鉢巻をした匠達若い男性職員が腰を落とし、手と足をダイナミックに動かして踊る『男踊り』を踊っており、その後ろ最後尾には各課長や副支店長が太鼓やかねという金属の音がなる鳴り物をかき鳴らしながら練り歩いているといった状態だ。


 匠は今年で3回目の参加となるが、やはりいくら練習したとはいえ素人に毛が生えたレベルの踊りで街中を歩き回るのは羞恥心すら感じるが、こういったものは恥ずかしがってやるのが一番格好悪いと思っているのでできる限り精一杯踊る。


「ヤットサ~!!」


 というもう何度目か分からない支店長の掛け声に合わせ他の職員全員で。


「「「ヤットヤット~!!」」」


 と叫んだところで匠は歩道に駿太郎が居ることに気付く。

 後ろを見ると由香里と誠も居たので小佐野家でお祭りに遊びに来たのだろう。


「おにいちゃ~ん!」


 と言いながら駿太郎が手を振ってきたので匠も笑顔で振り返すと、由香里と誠も手を振ってくれた。

 これは格好悪いところは見せられないな、と匠は疲れで上がってきていた腰を再度ぐっと下げると、終着点である駅前の広場を目指しただ一心不乱に踊り続けた。



――――



「はぁ……はぁ……」


 駅前の広場まで戻ってきて無事午前の部を踊り終えたものの、暑さもありおよそ15分の踊りで全員既に汗だくである。

 特に男踊りを踊った匠達若手はほぼずっと中腰状態だった為、太ももがパンパンになっている。


 疲労困憊の匠達の前に支店長が来るとアナウンスが始まった。


「皆お疲れ様! 午後の部はふかしん連は14時からだからそれまでは自由行動で! 10分前にまたここに集合でよろしく!」


 と言うとそのまま支店長はどこかへと去っていった。


 『少し休んでから屋台にお昼ご飯を買いに行こう』と考えながら目線を駅前に向けると、匠達ふかしん連の次は阿波踊りの本場徳島からの招待連とのことで、少しすると彼らの踊りが始まる。


 広場を縦横無尽に動き回る男踊りは圧巻のひと言で、最早匠達とは別次元の踊りに見えるほど動きがダイナミックで格好いい。


 『これを見てしまっては自分達のはお遊戯会だな……』と匠が自嘲していると、観客の中から1人匠達に向かって歩いてくる女性が見える。

 普段のスーツ姿では無かったので最初は分からなかったが、良く見たら黒いフリル袖のブラウスTシャツに紺色のスキニーデニムパンツを合わせた、私服姿の芽依であった。

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