キングの見解
京太郎とラインハルトが再び登場!何章も経って、超常現象の二人が帰ってきた!
俺の名前は東谷恭太郎。25歳。自動車販売店でマネージャーをしている。俺が三鷹へ来た理由は、死んだ兄の仕事を継ぐためだ。そして――異世界の戦士、"ラインハルト"を現実世界へ召喚してから、全てが狂い始めた。
「どこへ行っていた? どれだけ人目を集めているか分かっているのか」
ラインハルトが俺の隣を歩いている。
この街を見て回りたいと言い出したのは、こいつだ。もちろん、あんな神話みたいな格好のまま外へ出すわけにはいかなかった。だから俺は何とか普通の服を用意した。
黒のカーゴパンツに、オレンジ色のTシャツ。その上に黒のジャケット。……なのに。なぜかその服装が、逆にこいつの美形ぶりを際立たせている。通り過ぎる人間たち――特に女性たちの視線が、ずっとラインハルトへ向いていた。
「邪魔をするな、雑種。少し面白い人間と出会ってな。この時代は文明だけが発展した退屈な時代だと思っていたが……案外、良いものも存在するらしい」
「はぁ? 何の話だよ。急に消えたと思ったら、誰に会ったんだ」
ラインハルトは口元に笑みを浮かべた。
「学生の娘だ。レイという名前だった」
「どうして名前まで知ってるんだ? その方向にある学校なんて一つしかないぞ。大成高校か?」
奴は不敵に笑う。
「人間は愚かだ。娘が自分から名乗った」
……頭が痛い。二人もこいつを見たんだぞ。しかも、好き勝手に行動している。
「面倒を起こすなよ、“英雄の中の英雄”さん。勝手に動き回って騒ぎを起こすな」
俺はため息を吐く。
この傲慢な王が俺の言うことを聞くはずがない。そもそも、俺に命令できる立場なんてあるのか?こいつは普通の人間じゃない。人間の領域を遥か昔に超えた存在だ。
「まだまだ俺は本来の力から程遠い。お前はもっと努力する必要がある」
意味が分からない。
「本来の力? 程遠いって……何を言ってるんだ?」
ラインハルトは呆れたように息を吐いた。
「本当に価値のない男だな。偉大なる王の力の扱い方も知らぬ平民とは。この時代も、お前も、実にくだらん」
馬鹿にしたような声音。この時代そのものを見下している。だが、反論はできなかった。
「じゃあ聞くけどさ、“英雄の中の英雄”様。今の現実世界について、お前は何を知ってる? 確かにお前は昔、この世界の人間だった。でも今は違う。世界は変わったんだよ。五千年も文明を統治していたせいで、車すら見たことがないんじゃないか?」
俺は皮肉で返した。目には目を。好き勝手に見下されてたまるか。
だがラインハルトは怒るどころか、静かに笑った。
「はは……実に凡人らしい考えだ。貧しい者が貧しいのは、生まれではなく環境の問題だ。それと同じこと。発展とはそんな単純なものではない。一世代の間に“車”と“空飛ぶ車”の両方を見るようなものは、本当の発展とは呼ばぬ」
俺は何も言い返せなかった。
こいつの存在感は異常だ。神聖ですらある。これが――カリスマというものなのか。かつて全人類を統一した王。
「どうして“本来の力から遠い”なんて言った? お前のステータスは全盛期のものなんだろ? しかも全盛期の肉体で召喚されてる。なのに、どうして弱いんだ?」
ラインハルトが俺を見る。その黄金の瞳に見つめられただけで、魂を支配されそうになる。
「確かに肉体は全盛期だ。だが問題は“マナ”だ」
「マナ?」
「俺の本来の力を発揮するには、膨大なマナが必要になる」
俺は呆然とした。
こいつのマナ値はBランク。つまり、生前も同じ量のマナだったということだ。
「雑種。現実世界と異世界では根本が違う。こちらの世界には、宇宙そのものにマナが存在しない。ゆえに、大気中からマナを取り込み、自身を強化したり、マナコアへ蓄積したりできない。だが異世界は違う。あの世界では、宇宙の全てにマナが満ちている」
俺は深く息を吸った。
「つまり……お前の世界では、あらゆる物にマナが存在するってことか? でも、この世界にマナがないなら……俺たち魔術師は何なんだ? どうして魔法が使える?」
俺の質問に、ラインハルトは興味深そうな顔をした。
「実に面白い疑問だ。俺は“ある者”を責めるべきだと思っている。この世界の法則へ干渉した愚かな存在をな」
「干渉?」
奴は頷く。
「狂気の実験だ。真の狂った天才にしか成し得ない所業だ」
「何言ってるのか全然分からないぞ」
ラインハルトは傲慢な笑みを浮かべた。
「理解できぬのも無理はない。第二次世界大戦が、“異世界の戦士”の存在を政府へ認識させた。だが――考えたことはないのか? “魔術師”という存在は、どうやって誕生した? 召喚儀式は誰が伝えた?」
頭の中が混乱する。実験。もし俺たち魔術師が、誰かによって作られた存在だとしたら?なら、創造者は誰だ?マナの存在しない世界で、“魔術師”という概念を生み出したのは誰なんだ?
俺たちは宛てもなく歩き続ける。ラインハルトも、俺も、何も話さなかった。沈黙。気づけば太陽は沈み、“日の国”日本は夜に包まれていた。
「退屈だな。どうやら、この世界に召喚された戦士は俺だけらしい。貴様は俺の時間を無駄にした」
その瞬間、ラインハルトの手の中に一本の瓶が現れた。ガラス製の小瓶。中には液体が入っている。――ポーションだ。
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