学校での虐殺事件
平穏な日々は終わった!学校が危機に瀕している!!一体どんな戦士がこれほど多くの生徒を虐殺できたのか?!
ラインハルトの手の中には、一本のポーションがあった。まるで化学実験室で使われるような、独特な形のガラス瓶だ。
「それは何だ?」
俺はラインハルトに尋ねた。
「若返りのポーションだ。この瓶の中には神秘の液体が入っている。飲めば誰でも子供に戻る」
「若返りのポーション? そんなものがお前の世界には存在して、どうして車は存在しないんだよ」
ラインハルトは瓶の蓋を開けた。
「どの時代、どの世界でも、平民は愚かだ。俺の世界には魔力とマナが満ち溢れている。だが、この世界にはない。環境が違えば、人類の進化も異なる。それこそが真の発展というものだ――我が召喚者よ」
そう言って、奴は自信満々に笑った。
環境の違いが進化を変える――か。確かに、太古の生物の進化論みたいな話だ。水を泳ぐことを好んだ犬が、やがてクジラへ進化したように。
ラインハルトは、そのままポーションを口へ運ぼうとした。液体の一滴が唇へ触れようとした瞬間――
「っ!?」
「な、何だ!?」
全身に悪寒が走った。体内のマナコアが暴走を始める。左腕に、線のような紋様が浮かび上がった。
「ラインハルト……お前も感じてるのか?」
返事はなかった。だが、その表情を見れば分かる。奴も同じものを感知していた。
マナコアの異常。それによって体内のマナの流れが狂い始める。この現象が起こる理由は二つしかない。一つは、魔術師のマナコアが破壊された時。その場合、体内のマナが暴発し、魔術師自身を殺す。もう一つは――誰かが莫大な量のマナを放出した時。その影響で、周囲の魔術師たちのマナコアが暴走する。
「面白い展開だ。この退屈な街にも、別の戦士が存在していたとはな。新しい娯楽ができた」
いつの間にか、ポーションの瓶はラインハルトの手から消えていた。
……何なんだ、こいつの魔法は。いや、本人は“魔法”ではないと言っていた。異世界の力は、俺たちの魔術とは根本から違う。しかも、誰にも再現できない唯一のものだと。
その時、ほんの一瞬だけ、俺の目がそれを捉えた。黄金の鍵剣。短剣ほどの大きさをした、“鍵”の形の武器。宝石で装飾されたそれが、奴の左腰に下げられていた。
「マナの発生源は、あちらの方向だな」
ラインハルトは東を指差し、それから俺を見た。
「貴様のような弱者では、この距離を短時間で移動することは不可能だ。光栄に思え。“英雄の中の英雄”たる俺が手を貸してやる」
考える暇もなかった。ラインハルトは俺の襟首を掴み――次の瞬間、視界が一気にぼやけた。
「っ!?」
空だ。俺たちは空中にいた。ラインハルトは楽しそうに笑っている。地上から百メートル以上はある。全部が小さく見える。怖すぎる。
「はははははっ! 楽しめよ、雑種!」
次の瞬間、俺たちは急降下を始めた。
「死ぬぅぅぅぅぅっ!!」
俺は叫びながら目を閉じた。地面へ叩きつけられる衝撃を覚悟したが――何も起こらない。
「……え?」
「目を開けろ。母親を探して泣く子供みたいな声を出していたぞ」
恐る恐る目を開ける。
まず大きく息を吸った。空中に長く居すぎて、頭が酸欠になりそうだった。
「弱いな」
ラインハルトが笑う。
その時だった。鼻に、嫌な臭いが入ってくる。血の臭いだ。生暖かく、鉄のような臭気。
俺は目を見開いた。
「なっ――!?」
惨劇の舞台は――学校だった。大成高校。中から生徒たちの悲鳴が聞こえてくる。いつの間にか、学校は警察に包囲されていた。集まった野次馬たちが、目の前の惨劇を見守っている。
「下がれ! この区域は危険だ! 民間人は避難しろ、早く!!」
警察官が群衆を押し戻す。その中には、自分の子供がまだ学校の中にいると泣き叫ぶ親たちもいた。
近くでは、ニュースレポーターが生中継をしている。
「速報です! 校内で何が起きているのか、現在も不明ですが、日没直後から校舎内で悲鳴と凄惨な叫び声が聞こえ始めました! ちょうど部活動が終わる時間帯で――」
最悪だ。これは完全に悪夢だった。認めたくはない。だが、校舎内で虐殺を行っているのは、普通の人間じゃない。異世界の戦士だ。止められるのは――ラインハルトしかいない。
「ラインハルト――!」
「言われるまでもない。俺は弱者の命令など聞かん。だが、どうせ行くつもりだった。王だからな。どんな獣が暴れているのか、見てみたい」
ラインハルトは群衆の中を歩き始めた。
堂々としている。一切迷いがない。月光が黄金の髪を照らし――まるで獅子。百獣の王。
「お、おい! 君――!」
警察官が止めようとした。だが、ラインハルトが軽く触れただけで、警官の左腕がへし折れた。
「法を執行する者であろうと関係ない。王は常に貴様らの上に立つ。ゆえに、下等な人間が俺に触れることは許されぬ」
そのまま奴は、校門を一跳びで越えた。しかも、本気ですらない。今日、俺は目にすることになる。ラインハルトの本当の力を。
その直後、警察が校庭へ向けてスモークグレネードを投げ込んだ。
「何やってるんだ、あいつら……」
俺は小声で呟く。
すると、一人の警察官が怒鳴った。
「これより校舎へ突入する! 一般人が勝手にヒーロー気取りすることは許さん! 各員、配置につけ! 犯人を射殺する許可は下りている!!」
ライフルを持った部隊が、次々と校舎へ突入していく。
「くそっ……!!」
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