アロは邪悪だ(3)
今日、事故に遭って、今…痛いです!こんなことは良い人にしか起こらないんですね。
読者:まあ…それは一貫性のない変態にしか起こらないことですよね。
炎上するイチョウの木から立ち上る分厚く渦巻く煙は、結界の人工的な黄昏の世界を、どす黒い紫色の嫌な色合いへと変えていた。私は両手と両膝を床についたまま、グレーのアスファルトの上に擦り剥けて血を流す拳を置き、制服のジャケットからは焦げたウールと焼けた布地の臭いが微かに漂っていた。私の呼吸は、砂のように喉を引っ掻く不規則で激しい喘ぎとなっていた。
「あんた、完全に盲目になってるの!?」
私は絶叫し、炎の猛烈な熱から這うようにして後退しながら、その声は高音の、絶望的な音域へとひび割れた。私は自分の乱れ髪と汗まみれの髪のカーテンの隙間から、彼を激しく睨みつけた。
「あんた、自分が正義を執行しているとでも思っているわけ、アロ? 自分がどこかの聖なる復讐者のつもり!? ドラキュラは街全体を脅かす脅威だったのよ! もしランスロットが刀を抜いていなければ、あんたたちの貴重な調査チームが掘り起こすための瓦礫の山さえ残っていなかったわよ! あんたは現実をグロテスクな嘘へと捻じ曲げているわ!」
アロは、激しく跳ね上がるオレンジ色の炎の反射の中に完璧に縁取られて立ち、その細い身体は仕立ての良い学校の制服のジャケットの下で完全に硬直していた。彼のあの冬の霜のような純白の髪は、密閉された空間の静電気を孕んだ熱気の中でも微動だにしなかった。彼の黒い瞳は、私が言葉を発するごとに彼の両肩の周囲の空気を黒く澱ませるかのような、純然たる、一切の手加減のない憎悪を湛えて、広く、光を失った空っぽのままだった。
「君の文脈など無意味だ、まなか」
アロは冷酷に言葉を返し、その重低音の声は、私のエモーショナルなパニックを完全に切断する平坦で旋律的な一本調子へと落ちていた。
「そんな背景放射を民間生活圏に流出させることを許す魔術師など、駆逐されるべき悪性に過ぎん。君は国家の軍事機構に自らの存在を繋ぎ止めることを選択した。君は、俺たちのクラスメイトの血がまだコンクリートの上で濡れているというのに、冬夜の食卓に座ることを選択したのだ。帳簿は、バランスが保たれねばならんのだよ、まなか」
「あんたのくだらないノートの中の、ただの登録項目みたいに私を語るんじゃないわよ!!」
私は絶叫し、部屋着……いや、制服のままアスファルトの上を這い上がるようにして立ち上がりながら、純然たる不満から地面を激しく踏みつけた。あまりの事態の不条理さに、私の精神は崩壊しかけていた。私たちは高校の校庭に立ち、巨大な黒い天蓋が朝の太陽を圧殺しているというのに、二人の政治家のように国家の登録簿や魔術的犠牲者についての議論をしているのだ。
「私はあんたの彼女よ! 私たち、まさにこの歩道の上で手を繋ぎ合ってきたでしょう!? あんたは私を知っているはずよ! 私を見て、政治的な特異点としてではなく、私自身を見るべきでしょう!」
「もう十分に見たさ」
アロは平坦に言い放った。
彼は私に、呼吸を整えるための次の一秒さえ与えなかった。彼の細い指先が一瞬にして制服の袖の下で閃き、カミソリの如き速度の印のジェスチャーで煙る空気を切り裂いた。その唇は恐るべき、流れるような速度で動き、彼は能動的に第二の呪文をブツブツと漏らした。
「……目に見えぬ刃よ、偽りの糸を断ち切れ……突風よ、特異点を刈り取れ……」
ヒュッ、ヒュッ、ヒュッ!
一連の高速の、半透明な三日月状の波動が彼の指先から噴出し、鋭く、悲鳴のような風切り音を立てて静電気の黄昏を突き抜けた。私の意識的な思考はその迫り来る危険を処理する時間など持ち合わせていなかったが、朝の演習中にランスロットが私の核へと暴力的に叩き込み続けた筋肉の記憶が、一瞬にして起動した。無意識のうちに、私の重心がシフトした。私は後ろの踵をコンクリートに鋭く突き立て、普段の不格好なドタバタぶりを完全に超越した、必死の、絶望的な右への旋回を繰り出した。
風の刃は、ほんの1ミリ秒前まで私の胴体が存在していた虚空を綺麗に切り裂き、激しい気圧の擦過が私の頬を削って三本の微細な血の滲む傷跡を残すと、そのまま私たちの背後にある校舎の強固なレンガの壁へと暴力的に激突した。
ズガァァーーン!
レンガの石組みが激しく粉砕され、強固な鉄筋を貫いて、深い水平の斬撃痕が綺麗に刻み込まれた。
私は近くのコンクリートのプランターに激しく叩きつけられたが、今度は、純然たる一切の手加減のないフラストレーションの猛火が胸の中の恐怖を完全に塗りつぶした。私はレンガに刻まれた深い傷跡を見つめ、それからアロのあの頑強で空っぽな無表情へと視線を戻した。
違う、 私は激しい怒りと共に心の中で思った。指関節がきつく強張る。私の脳内で、ある絶望的な仮説が根を張っていった。これは私の知っているアロじゃない。本物のアロが、あんな冷徹な超然さで私を見つめるわけがないわ。彼は操られているのよ。誰かが彼を洗脳したか、あるいはどこかのはぐれ魔術師が、私たちの同盟を分断するために影から彼の糸を引いているんだわ。
そして、もし彼がコントロールされているのだとしたら、その対処法は完璧に分かっていた。アロは知識人であり、その生身の肉体が信じられないほどに脆弱であるがゆえに、完全に呪文や視覚化だけに依存している魔術世界の使い手なのだ。彼は一年の半分は体育の授業を休んでいるような、病弱で、細く弱い少年なのだ。もし私が間合いを潰し、彼の構えの内側に入り込むことさえできれば、物理的にあいつをぶん殴って、彼の精神を上書きしているいかなるトランス状態からでも引き戻すことができる。
「あんたのその頭をぶん殴って、正気に戻してやるわよ!!」
私は絶叫した。
私はランスロットを呼ばなかった。バッグに手を伸ばすこともしなかった。私は血管の中のすべてのアドレナリンを両足へと注ぎ込み、グレーのアスファルトの上をフルスピードの猛ダッシュで前方に突進し、突進する野生のイノシシの如く、彼のあの細く、頑強な身体に向かって真っ直ぐにチャージを仕掛けた。私たちの間の距離が瞬く間に縮まっていく――10フィート、5フィート――彼を地面の塵の中に組み伏せてやるために、私は両手を拳にしてきつく握り締めた。
アロはパチパチと瞬きをしなかった。彼はただ呼吸を素早く、厳かに吸い込み、その声を響き渡る命令のバリトンへと落とした。
「顕現せよ。ディケロス」
シュゥゥゥーッ!
突如として、私の顔面の真前で真緑色の魔力の激流が爆発し、浴室のあの壁の如き静電気の稲妻となって黄昏の世界を切り裂いた。その空間変位の凄ましき速度は強烈な衝撃波を生み出し、私の前進の勢いを暴力的に停止させ、私は防衛のために両腕を突き上げながら、ブーツの底を舗装路の上に鋭く滑らせた。
フェードしていく緑色の光の粒子の隙間から、一人のシルエットが具現化した。
ディケロスが、私たちの間に立ちはだかっていた。
その高い身長と、激しく引き締まった肉体は、彼のいつもの戦闘装束である古代ギリシャの青銅鎧の、伝統的でミニマリズムな軽鎧によって飾られていた。彼は右手に短く、幅の広い鉄の剣を握り締め、その鈍く鈍色に光る金属が、頭上の漆黒の天蓋の不穏な残光を反射していた。
しかし、その存在が完全に凝固しても、彼は即座に攻撃を仕掛けようとはしなかった。代わりにディケロスは首をわずかに傾け、その鋭く、計算高い眼差しを、アロのあの空っぽで凍りついた表情から、私の汗まみれで激しく喘ぐ身体へと往復させた。深淵な、目に見えるほどの動揺が、このミュトスの古代の容貌を激しく引き裂いた。
「マスター……?」
ディケロスが呟いた。その声はガラガラとした、不確かなバリトンとなって、密閉された校庭の空間に静かに反響した。彼は自身の短剣をほんの数インチだけ下げ、その佇まいは完全に躊躇っていた。
「貴方がこの私に、その刀を抜けと命じる相手は……貴方の愛した人ではないのですか? これは、何らかのトリック、あるいはテストの類いなのですか?」
私の呼吸が喉の奥で完全にストップし、私の動きが完璧に麻痺したまま、純然たる不信感の波が胸の中を突き抜けた。
本物よ、 その理解が物理的な一撃となって私の脳を殴りつけた。これは偽物なんかじゃない。冬夜さんの敵が作り出した偽物の幻影でもなければ、教会の悪ふざけでもない。契約は、アロの血に直接反応しているのだ。このミュトスは、彼を正真正銘の"真の召喚者"として認識している。
あいつは精神支配されてるのよ、 私は頑なに、そして絶望的なまでに自分自身に言い聞かせた。純粋な、困惑に満ちた裏切りの涙で視界が激しく滲む中、私の精神は他のいかなる現実をも受け入れることを拒否していた。見てみなさいよ、ディケロスがあんなに動揺してる! もしアロが正気なら、彼自身の存在がその命令に疑問を抱くはずがないわ! 私はただ、あの剣の脇をすり抜けて、あのトランス状態をブチ壊せばいいだけよ!
「アロ、目を覚ましなさーーい!」
私は絶叫し、小刻みに震える両足を無理やり動かした。
私はただの一瞬の猶予も置かずに前方へと突進し、私たちの間の最後の3フィートの間合いを潰そうと、彼の制服のジャケットの襟首を掴んで虚空の淵から引き戻すために、両手を真っ直ぐに伸ばした。
アロの空っぽな瞳は、微塵もシフトしなかった。彼の唇はただ静かに開き、一切の躊躇を孕まない、平坦で冷徹な命令を放った。
「ディケロス。殺せ」
契約の絶対的な強制力が、物理的な狂風となって校庭を駆け抜けた。ディケロスは動き進みたくはなかった。彼の古代の顔のあらゆるラインが、深淵な、悶絶するような拒絶に歪んだが、彼の肉体は、主従の絆という魔術世界の譲らない絶対法則によって完全に上書きされ、蹂躙された。彼に選択の余地などなかった。魔力が彼の高身長の手を強制的に動かしたその瞬間、慈悲という名の贅沢は消え去ったのだ。
短い鉄の剣が、人工的な黄昏の世界を、恐るべき、流れるような速度でブレながら切り裂いた。
サクッ。
それは完璧に美しく、力みのない一刀両断だった。古代の鋼鉄の極限まで研ぎ澄まされた刃が、冷酷な風切り音を立てて空気を切り裂き、私の意識的な思考がそのガードの崩壊を認識するよりも先に、私の首の柔らかい組織と骨を完璧に通過していた。
物理的な世界が突如として暴力的に傾き、グレーのアスファルトと激しく炎上するイチョウの木が、私の視界の中で混沌とした、ちぐはぐなループを描いて回転した。
私の頭部が胴体から離れて落下していくのと同時に、突発的で、恐ろしいほどの明確さが思考の霧を突き抜けた。精神支配なんてものは存在しなかった。彼の魂を上書きしている隠されたトランス状態も、外部からの操作も何もなかった。彼のあの黄金色の混ざった瞳の奥に宿る揺るぎない、冷徹な憎悪は、完璧に、紛れもなく彼自身のものだったのだ。彼は私を救いたくもなければ、試したくもなかったし、そして――私のことなんて、これっぽっちも愛していなかったのだ。
彼は、本気で私を殺したがっていた。
私の頭部は、グレーのアスファルトの舗装路の上に"ゴトッ"と鈍く、空虚な音を立てて激突し、一度だけバウンドすると、投げ出されていたスクールバッグの近くの塵の中へと転がっていった。ほんの数瞬の間だけ、私の消えゆく意識は校庭の惨状を見つめ返していた。私の頭部のない、制服に包まれた身体は、一瞬だけ恐ろしく、堅固に直立したまま佇んでいたが、次の瞬間には激しく両膝から崩れ落ち、切断された首の断面から鮮烈な真紅の血液が噴出し、グレーの地面を巨大な、溜まっていく赤の海へと染め上げていった。
アロはその虐殺の傍らに立ち、墓場の静電気の混ざった沈黙が私の最後の息を完全に呑み込む中、その表情を微塵も崩すことはなかった。
この章をお読みいただき、ありがとうございました!SodaKun Out ☆!




