街を散策する
どこまで話したっけ? わからない。彼女が欲しいって頼んだのに、君たちは一人もくれなかった…くそ、どうやら僕は運が悪すぎるみたいだ。
ドライブウェイの綺麗な砂利の感触はとうに背後へと消え去り、代わりに三鷹市のありふれた灰色の アスファルトが広がっていた。正午だった。秋の太陽が頭上高くで鋭く照りつけ、引き締まった空気の中を切り裂いて、私の足元に小さく不格好な影を落としていた。
私の頭の中は、未解決の精神的トラウマと不可解な矛盾が入り混じったカオスなカクテル状態だった。歩道をぶらぶらと歩きながら、私の脳内は今朝の災難のループを延々と再生し続けていた。まずは地下訓練場でのランスロットによる圧倒的な敗北、それに続いた彼の滅び去った王国についての苦悶に満ちた告白。彼は自己処罰のために物乞いのような格好をしている伝説の王であり。
「感情を持たぬ王には民の心を真に理解することなどできはしない」
と主張する男だった。それからラインハルトだ――ただ私の身体をからかい、私の「運命」について暗号めいたヒントを落とすためだけに、サッカージャージを着た甘え上手の子供の姿へとあっさりと変貌してみせた、あの暴虐で全裸の黄の神。
頭を冷やす必要があった。完全に正気を失ってしまう前に、自分を現実へと繋ぎ止めるための、安全で予測可能な人間の世界の現実が必要だったのだ。
私は角を曲がり、三鷹の商業地区の活気溢れる中心部へと直接足を踏み入れた。買い物客の喧騒、コンビニのドアの規則的なチャイムの音、そして焙煎されたコーヒーの濃厚な香りが瞬く間に私を包み込んだ。それは素晴らしく、完璧にノーマルだった。
――私の首の後ろの温度が一瞬にしてゼロにまで急降下するまでは。
「おやおや。これは実に愉快な偶然だね、シニョリーナ」
その声は柔らかい絹の糸のようで、カミソリの刃のような流れるような正確さで私の耳の奥へと滑り込んできた。私の全身が硬直した。ブーツが舗装路の上に凍りつく。真昼の太陽の温かさは消え去り、私の隣に歩み寄ってきたその人影が放射する、恐るべきオーラによって完全に呑み込まれてしまった。
チャコールグレーのトレンチコート。汚れなき真っ白な聖職者用のカラー。明るい日光を冬の霜のように捉える、きっちりと分けられた白髪。そして、信心深い聖職者の穏やかな温かさを湛えながらも――その実、虐殺者の冷徹な超然さを宿した、一対の鋭い琥珀色の瞳。
サンティノ・フェボ。"聖堂教会"の高等代行者。つい昨日、私の首を自分の壁に飾ると約束した男。
「サンティノ……」
私は息を詰まらせ、本能的に半歩後退しながら、ポケットの中で両手をきつく握り締め、その声は情けなく震える囁きとなってひび割れた。
「そんなに怯えた顔をするな、小山まなか」
サンティノは静かに言った。その唇には、温かさを模倣することすらしていない、完璧で優しい微笑みが浮かんでいた。彼は巨大な鉄板から湯気が立ち上っている、すぐ近くの露店へと無造作に手を向けた。
「周りを見てごらん。太陽はまさにその頂点にある。群れが豊かに溢れている。真昼間の光の中では、私はただ主の御言葉を説く卑しき一司祭に過ぎない。彼の創造物の素朴な喜びを賛美するために、こうして街を彷徨っているだけだよ」
私は彼を見つめた。心臓がまるで罠にかかった小鳥のように、肋骨の裏で暴力的に鳴り響いていた。
「素朴な喜び、ですか?」
私はどうにか言葉を絞り出したが、喉はまるで粗い紙やすりのようだった。
「その通りだ」
サンティノは、その鋭い横顔をフードのベンダーへと向けながら物憂げに言った。
「例えば、私はこの一時間、日本の『タコヤキ』というものの純然たる文化的魅力を観察していてね。実に注目すべき発明だと思わないかい? 繊細な生地が完璧な球体を成し、そのまさに中心にタコの一片を隠匿している。ある意味では、人間の魂を鏡のように映し出しているのだよ――暗く、もつれ合った中心を隠し持った、脆くありふれた外側というね。君は伝統的な風味のソースを好むのかな? それともマヨネーズは不必要な放縦だと感じるかい?」
私はパチパチと瞬きをした。突然のシュールな精神的鞭打ちの波が、私のパニックを突き抜けてクラッシュした。たこ焼き? 私たちは混雑したショッピング地区のど真ん中に立っていて、私の存在そのものを抹消したがっている高等魔術師狩りが、何事もないかのようにストリートフードのトッピングについて私の意見を求めているのだ。
「私は……ソースが好きです」
私は盲目的にブツブツと言った。彼のあの絹のような声が、いつ脅迫のトーンへと落ちるかも分からないという恐怖から、とにかくその場を凌げる言葉を必死に出した。
「おやか。実にチャーミングだ」
サンティノは静かに呟き、その琥珀色の瞳を再び私の目に固定するためにシフトさせた。微笑みは彼の顔に貼り付いたままだったが、彼の周囲の空気は息が詰まるほど重苦しくなり、まるで冷たい蛇が私の気管からゆっくりと空気を絞り出すように巻き付いてくるかのようだった。
「食事とは普遍的な恵みだ。夜というものがこれほどまでに容赦なく、このような平和な対話を私たちに放棄させるのは、実に惜しいことだね。しかし、空が青くある限り、私たちはただ散歩を共有している二人の市民に過ぎない」
この遭遇は私を精神崩壊の手前まで追い詰めていたが、息の詰まるような恐怖の下で、私の胸の中に突如としてあるリアライゼーションが火花した。今は昼間だ。 彼は昨日、ハサミを見るような場所で教会は血を流さないと明言していた。この明るい正午の太陽の下、何も知らない何十人もの一般市民に囲まれている状況では、彼には絶対的に何のレバレッジもないのだ。彼は私を無理やり引き留めることはできないし、ましてや刃を引き抜くことなど絶対にできはしない。
「もう行かなきゃ」
私は自分の一歩を踏み出す動作に、突発的な、強張った鋭さを無理やり込めて言った。
「私の……私の友達が待っているんです」
サンティノは私を止めようとはしなかった。彼はただ頭をわずかに傾けただけで、その白髪が日光の中に輝き、彼の微笑みはほんのわずかに引き裂かれすぎているかのように広がった。
「もちろんだよ、小鳥よ。お行き。太陽の温かさを、それが続くうちに楽しむといい。私たちの神学的議論の続きは……影が長く伸びる頃に執り行うとしよう」
私は彼の言葉が最後まで終わるのを待たなかった。私は踵を返すと雑踏の中へと猛ダッシュで飛び込み、心臓を激しく叩きつけながら、後ろを振り返る勇気もないまま、あのチャコールグレーのトレンチコートが完全に視界から消え去るまで買い物客の海を無理やり突き進んだ。
私はハァハァと息を切らし、残滓のパニックで胸を激しく上下させながら、どうにか肺に空気を取り戻そうとブティックの脇を行き詰まるようにして進んだ。屋敷に戻らなきゃ、 私はヒステリックに思った。今すぐに。ストリートは安全じゃない。
ドンッ!
私の肩が固い物体と暴力的に衝突し、その突発的な衝撃によって私のバランスは完全に崩れた。私は鋭い悲鳴を上げ、通学用のローファーが舗装路の上を滑り、後ろへと跳ね返りながら、どうにか転倒する寸前で踏みとどまった。
「おっと! 貨物に気をつけなよ、サムライ!」
大声で耳障りな声が愚痴をこぼした。
私はパッと目を開けた。目の前に立っている、あの無造作に乱れた茶髪の塊と、そこに張り付いたいつものお調子者の薄笑いを認識した瞬間、私の眼差しは純然たる殺意のそれへと鋭く変化した。ルーク・ジェインだ。私のクラスメイトであり、私の毎日の頭痛の種であり、そして絶対的なタイミングの悪さの王。
「ルーク!」
私は制服のジャケットを整え、純然たる不満から地面を激しく踏みつけながら低く唸った。
「あんた、私が危機を切り抜けようとしているまさにその瞬間に、私の目の前に直接歩いて飛び込んでくるための個人レーダーでも持ってるわけ!? 私は今大ピンチなのよ!」
ルークはパチパチと瞬きをした。標準的な日本人の激昂を処理しようとする時、彼がいつも浮かべる、あの古典的で痛々しいほど大げさなクエスチョンの表情に顔を歪める。
「ヘイ、ストリートの歩行者を責めないでくれよ!」
払いのけるような手を振りながら、大声で抗議した。
「突進するカイジュウみたいに歩道を突っ走ってきたのはまなかの方だろ! あんたには……その……野生のイノシシのオモテナシがあるよ!」
私の額の神経が暴力的にピキリと鳴り響いた。
「その単語は『おもてなし』っていう意味よ、この大馬鹿者が!!」
私は完全に呆れ果てて絶叫した。
「野生のイノシシが野生のイノシシのおもてなしを持ってるって何よ!? それじゃ全く意味が通じないでしょうが! あんたの語彙力は絶対的な自然災害よ!」
ルークは胸を大きく張り、その侮辱を完全に聞き逃したまま、信じられないほど根拠のないプライドを放射した。
「あー、サンキュー! 俺の日本語がトータルでスバラシイフルなのは知ってるさ! 俺はローカルの言葉のマスターだからね!」
「スバラシイフルなんて単語存在しないわよ! あんたはただの日本語の形容詞に英語の接尾辞を接着しただけじゃない! もし本物のサムライが今のあんたの言葉を聞いたら、純然たる文法上の慈悲からその刀を抜いてるわよ!」
「ヘイ! 褒め言葉は褒め言葉さ!」
ルークは笑った。私の言葉の暴力を全く気にも留めていない。
この不毛で騒がしい口論のおかげで、数秒の間だけ、サンティノ・フェボのあの琥珀色の瞳の血の凍るような記憶を完全に消し去ることができた。教室の机や、高校生活のドラマといった、安全で平凡な日常へと引き戻される。
しかし、私がその気晴らしを利用するよりも早く――彼の襟首を掴み、彼のマンションに今まさに転がり込んでいるあのイスラエルからの正体不明の服で全身を覆い隠した外国人について、リアルで実際的な情報を要求するよりも先に――ルークは唐突に自分の腕時計を確認し、その顔を大げさな悪ガキのニヤニヤ笑いへと引き裂いた。
「うわ、マジか! 時間を見てくれよ! 俺はもうランネスだ!」
彼は一歩後ろへ下がりながら宣言した。
「ああ、それとさ、まなかちゃん! 夏休みのワークシートを終わらせるのを忘れるなよ! 明日からは、刑務所のゲートが再び開くんだからな! 学校が始まるぞ!」
その言葉が頭に登録された瞬間、私の脳内は暴力的なバグを起こした。
「え……何ですって!?」
私は息を呑み、純然たる恐怖に襲われて顎をアングリと外した。
「明日!? 学校が始まるのって、明日 なの!?」
ミュトスたちの戦闘、魔術の修業、屋敷しもべ妖精のヨダレ、そして魔術師狩りたちのせいで、私はカレンダーの感覚を完全に、そして完璧に見失っていた。高校生活というありふれた日常は、決して安全な避難所などではなかった――それは、私が完全に何一つ準備できていない状態で迫り来る、恐るべき締め切りだったのだ。
「ルーク、待ちなさい! そこに止まりなさい! あんたに聞かなきゃいけないことが――」
「ホームルームで会おうな、まなか!」
ルークは私の必死の命令を完全に無視して、文字通り大声で叫んだ。
彼は踵を返すと、その大声で耳障りな笑い声を活気溢れる通りに響かせながら、歩道をフルスピードで猛ダッシュして去っていった。彼は肩越しに手を振り、その茶髪を秋の風に翻しながら角を曲がり、私が追跡するための一歩を踏み出すよりも早く、雑踏の中へと境界線なく消え去った。
私は三鷹市の賑やかなノイズが耳の奥で嘲笑うように響く中、商業地区のど真ん中にただ一人で立ち尽くしていた。
ルークの家にいるあの外国人のプレイヤーに関する疑問は、何一つ明かされないまま残された。白髪の代行者がもたらした脅威は、今なお沈みゆく太陽の上に覆い被さっていた。そして明日、私は学校の机に座り、普通のティーンエイジャーのフリをしなければならないのだ。
私は長く、震える息を吸い込み、青空を見上げながら指先をきつく強張らせた。昼間のセーフティネットはすでに燃え尽きようとしており、闇は私が走れるよりも遥かに速い速度で迫り来ていた。
この章をお読みいただき、ありがとうございました!SodaKun Out ☆!




