普通の生活
シリーズの主人公の日常を垣間見ることができます!それに、大成高校は最高です!!
何かが鳴っている。
「んん……」
止まない。これは――スマホのアラーム音だ。
「もう少し寝かせて……」
昨日の夜は色々やっていて、かなり疲れていた。
だけどアラームは鳴り止まない。"寝かせて"って言っても、機械には通じない。だって、こいつは人間の言葉を理解しないし、話しもしないんだから。
「はぁ……今日、学校だった。起きないと。勝ったよ、アラーム君」
私はアラームを止めた。
時間を確認する。
朝の7時。
学校が始まるのは8時35分頃。私は部活に入っていないから、朝早く登校する必要はない。だから、まだ少し余裕がある。
「おはよう」
新しい一日に挨拶する。
私は布団から起き上がった。
「広い家で一人暮らしって、大変……」
独り言のように呟く。
床に敷いていた布団を畳み、片付ける。
それからドアを開けてキッチンへ向かった。この家、ちょっと変な造りをしている。というより――ここは元々、養父の家だ。養父が亡くなった後、戸籍上では私が娘だったから、そのまま私の家になった。寝室とキッチンが繋がっている造りで、起きるとすぐキッチンが見える。さらにキッチンはリビングとも繋がっていた。
この家を設計した人は、かなり自由な発想をしていたと思う。リビングとキッチンの間には扉すらない。私は部屋を出て、廊下へ向かった。
冷たい廊下を歩きながら、私は小山まなか。17歳。高校三年生だ。
「準備しないと」
私は洗面所へ向かった。
顔を洗い、歯を磨き、パジャマから制服へ着替える。冬は本当に苦手だ。寒さに強い方じゃない。
「よし、準備完了」
私は鏡の前でネクタイを整え、自分の姿を確認した。
「変なところ……ないよね」
小さく呟く。
私は大成高校に通っている。三鷹市でも有名な学校だ。
制服は、淡いグレーの半袖シャツに、えんじ色のストライプネクタイ。それに冬用のスカート。上には濃紺のダッフルコートを羽織っている。
靴を履き、玄関のドアを開けた。
「行ってきます」
自分自身を励ますように言って、外へ一歩踏み出す。今日は火曜日。“火の日”だ。この学校、英語教育にはかなり力を入れている。
まあ、学校については今更説明する必要もないか。私の家は学校のすぐ近くだし、歩いて行ける距離だ。
正門へ辿り着く。校内にはたくさんの自転車が停められていた。どれも部活生のものだろう。私はいつも、授業開始より少し早めに学校へ来る。
校門を開けた、その瞬間。
ピカッ――カシャッ!
突然、フラッシュが光った。
「きゃっ!?」
驚いて声が出る。
「ばぁっ!」
カメラを持ちながら舌をぺろっと出した少女が、私を見ていた。
「驚きました? 先輩」
「う、うん……びっくりしたよ、レイ」
彼女は二年生の春原レイ。玲写真部所属の後輩だ。
「こんな朝から何してるの、レイ?」
「先輩! 今日は空気が気持ちいいし、冬にしては少し暖かいじゃないですか~。だから学校の綺麗な景色を撮ろうと思って!」
暖かい……?私からしたら普通に寒い。くしゃみが出そうなくらい。
「せめて写真撮るって言ってよ。すごいびっくりしたんだけど」
「え~? それは違いますよ先輩! 一流のカメラマンは、自然な瞬間を撮るものなんです! これぞ写真術ですっ!」
玲は得意気に笑った。
「おい、レイ。何してるんだ?」
後ろから男子の声が聞こえる。
玲が振り返った。
「あっ、テン!」
「レイ、お前に暗室の作業任せただろ」
「テン! 本名で呼ばないでって言ってるじゃん! 私のあだ名は“ねこちゃん”なんだから、ちゃんとそう呼んでよ!」
写真部には独特のルールがある。雰囲気がすごく仲良しで、みんな基本あだ名で呼び合っている。玲が“テン”と呼んだのも、その男子のあだ名だった。
その男子生徒の視線が私へ向く。
「おはよう、まなか」
「っ――」
瞬間、顔が熱くなった。
自分でも分かるくらい、一気に赤くなる。
「うわぁ~、先輩、お兄ちゃん見ただけで真っ赤じゃん。ラブラブすぎ~」
レイがニヤニヤしながら茶化してくる。
この二人は兄妹だ。そして、目の前にいる男子――彼は、私の彼氏。同じ高校三年生で、同じ人文学コース。
もしこの兄妹を比べるなら――レイは全身から“元気なボーイッシュ感”が溢れている。茶色の髪もそれによく似合っていた。意志が強くて、少し荒っぽい性格だけど、友達には優しい。兄の方は、玲よりずっと背が高い。たぶん175センチくらい。肌は白く、髪は全部真っ白。とても優しくて、穏かな人だ。
“優しい人ほど酷い運命に苦しむ”
そんな言葉が本当なんじゃないかって思うくらい、彼は色々な病気を抱えていて、よく体調を崩していた。
「体調はどう、アロ?」
「昨日よりは楽かな。それと、昨日送ってくれた料理ありがとな」
その言葉だけで、また頬が熱くなる。
「……口に合ったなら良かった」
「すごく美味しかったよ。ありがとう」
……だめ。恥ずかしすぎる。
まるで子供みたいに照れてしまう。でも、彼と一緒にいると安心する。自信も持てる。私たちは付き合って一年になる。私は彼のことが、本当に大好きだった。
そんな私たちを見て、玲が嫌そうな顔をする。
「二人ともさぁ……イチャつくなら場所考えて? 見てるこっちが恥ずかしいんだけど!」
その言葉に、私たちは同時に赤面した。……学校の真ん中だったことを、完全に忘れていた。
この章をお読みいただき、ありがとうございました。 SodaKun Out ☆!




