模倣犯
スタイルを変えようと思っています。序文とあとがきをこれまでとは違う書き方で書いてみます。皆さんはきっと驚くでしょう!
藤蓮が手にするその剣は、常識的な剣の概念をはるかに超えていた。ランスロットはガイアでも現実世界でも、これまで数え切れないほどの神剣、魔剣、そして美しい名剣を目にしてきた。しかし、この剣だけは――まったく異質だった。
「はあっ!」
蓮は身構えると、そのまま一直線にランスロットへ駆け出した。
そして勢いよく剣を振り下ろす。
「……?」
その一撃はあまりにも弱かった。力も技術もまるで乗っておらず、まるで剣を握った経験がほとんどない初心者のような太刀筋だった。
振るうたびに隙だらけ。
斬撃は素人同然で、ランスロットはどう評価すべきか迷うほどだった。速度も遅く、剣に込められた力も弱い。避けることなど造作もない。
興味深い点があるとすれば、独創的な剣の造形と、蓮の知性くらいだろう。とりわけ、その剣は異様だった。柄には普通の鍔ではなく、時計の歯車が組み込まれている。柄尻から伸びた無数の配線が鍔へと繋がり、大きな機械仕掛けの歯車が絶えず回転し続け、"カチ、カチ"という規則的な音を響かせていた。まるで未来から持ち込まれた兵器のような剣だった。
「知識は見事ですが、戦いに関しては……どうやら未熟のようですね」
ランスロットはそう告げると、小指を軽く突き出した。
それだけで十分だった。
未来的な剣は、小指一本であっさりと真っ二つに折れてしまう。
「期待外れですね。未来の戦士とは、この程度なのですか。知識を持つことは立派ですが、一対一の戦いでは、戦場の知恵がなければ何の役にも立ちません」
ランスロットは失望の色を隠そうともせず、蓮を見つめた。
彼は期待しすぎていたのだ。これほど戦闘技術に欠けた相手と剣を交えることは、騎士としての誇りさえ傷つけられる思いだった。しかし――
「まあ、こうなるのは最初から予想してたよ。だってこれは本物じゃなくて、ただのコピーだからさ。『メイド・イン・チャイナ』に、本物と同じ性能を期待しちゃ駄目だろ?」
ランスロットは怪訝そうに首を傾げた。
「……メイド・イン・チャイナ?」
眉をひそめる。
「え? 中国って国を知らないのか? 本気で?」
歴史上の英雄と戦っていることよりも、ランスロットが中国を知らないことのほうが、蓮には驚きだった。
ランスロットに理解できたことは、一つだけだった。
「模造品は、何があろうと本物にはなれません。決して本物の品質には及ばない」
蓮は苦笑しながら肩をすくめる。
「その通り。それがコピーってやつさ。本物は高品質だから高価になる。だから世の中には安いコピー品が出回る。中国製って品質はイマイチでも、その代わり大量生産が得意なんだよ」
その言葉と同時に、蓮の手の中に再び剣が現れる。長さも重さも形状も、先ほど折られたものと寸分違わぬ一本だった。
「十本壊されたら百本作る。それが俺のギフト。どんな武器でも、好きなだけコピーできる。それだけが俺の取り柄だからな。だから俺は武器型ミュトスなんだ」
新品同然の未来的な剣が、再び彼の手に収まる。
「それなら、なぜ私の剣を複製しないのです? その方が、多少は勝機もあったでしょう」
蓮は苦笑した。
「言うのは簡単なんだけどさ。この世界の物には全部『設計図』みたいなものがある。俺のギフトは武器の構造を解析して、その設計図を頭に記録し、コピーを作る能力なんだ」
そう言って、自分の頭を指差す。
「見事です。頭脳で戦士となった男は賞賛に値します。しかし、それではあなたの弱点は覆せません」
「ああ。それにはちゃんと理由がある。あんたの武器は神造品だ。人間の俺には、その設計図そのものを理解できない」
神造の武具は、人間が作り出した武器とは根本から違う。どれほど優れた職人であろうと、人の技では神の御業には届かない。神の武具は、人類が一度も見たことのない理で造られている。ゆえに、人間の知性ではその構造を理解することすら不可能なのだ。
蓮は鍛冶師でも芸術家でもない。ただ、"複製する能力"を持つだけの男。だから神剣を視覚化し、再現することは不可能だった。
「では、続きを始めましょう」
「はぁ……もう疲れたんだけどな」
蓮は戦士ではない。ただ偶然、この戦いへ召喚されてしまっただけの、ごく普通の青年だった。それでも彼は剣を振るう。斬り、薙ぎ、突き。思いつく限りの技を次々と繰り出すしかし、そのすべてが空を切る。ランスロットは一歩動くだけで、すべてを難なくかわしていた。
――なぜ私は遊んでいる?一撃で終わらせれば済む話ではないか。なぜ苦しませる?なんと情けない男だ。
ランスロットは胸の内で自らを責める。
また同じ過ちを繰り返している。それが自分を破滅へ導いたというのに。
なぜ私は、こうも冷酷で無慈悲なのだ……
「終わりです」
ランスロットは剣を掲げた。
この一撃で決着をつける。
そう決めた、その瞬間――
「そうはさせない」
蓮が静かに呟いた。
次の瞬間、夜の静寂を切り裂くような轟音が響き渡る。剣に蓄えられていた力が極限まで高まり、一気に解放された。それは暴風だった。剣から巨大な竜巻が巻き起こり、ランスロットを飲み込む。暴風は街を蹂躙し、進路上にあるすべてを破壊していく。家屋すら風圧で吹き飛ばされ、木端微塵に引き裂かれていった。
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