未知の敵
物語はすべて順調に進んでいます!私は最高です!
話し合いを終えると、それぞれ自分の部屋へ戻り、眠りについた。冬夜はすでに就寝しており、まなかもまた床に就いた。
だが、まなかの気持ちを変えたものは何だったのか。それを知っているのは、まなか自身だけである。
冬夜は、彼女が外へ出ることを諦めて家に残る決断をしたことに満足していた。しかし、その判断が本当に正しかったのかどうか、確信を持てない者が一人だけいた。
その男は、外で待っていた。
彼は眠ることができない。
まなかのミュトス――ランスロットである。
ランスロットは、召喚者であるまなかが十分な魔力を供給できない以上、自分も普通の人間のように日常生活を送らなければならないことを理解していた。だからこそ、敵を探しに外へ出ることはしなかった。もし強敵と遭遇し、切り札である異世界の遺産を使わざるを得なくなれば、その負担でまなかは命を落とす。召喚者が死ねば、自分もまた消滅してしまうからだ。
「……申し訳ありません、お嬢様。ですが、私はこの行動を取らせていただきます」
それは、一人の騎士としての信念に反する行為だった。
彼は王に仕える前に、まず騎士である。まなかと契約を交わしたあの日、彼は彼女への忠誠を誓った。それなのに今、彼は主の命に背こうとしていた。
彼は冬夜の屋敷の外へ出る。
だが、その背後には屋敷など存在しない。幾重にも重ねられた隠蔽魔法によって、屋敷は多くの魔術師の目から完全に姿を消しているのだ。
彼の衣装が変化する。
今の彼は戦装束をまとっていた。白い絹の長袖を備えた紫色の高貴な長衣。その肩には、黒くふわりとした外套が掛けられている。老年こそが全盛期であった彼は、長い白髪と白い髭をたたえ、その姿には一層の威厳が漂っていた。
「私は、お嬢様に召喚された以上、強敵と戦い、戦士として相応しい最期を迎えるためにここへ来たのです」
彼は翡翠のような漆黒の剣を右手に召喚する。その武器の完成度は、凡百の武器とは比較にならない。天の神に選ばれし者だけが振るうことを許された聖なる剣である。
彼は駆け出した。
いや、ミュトスの基準では歩いているに等しい。だが現実世界の尺度では、人間には到底到達できない圧倒的な速度だった。
「私にも……願いがある。夢がある」
彼は静かに呟く。
今日、まなかの命令に背こうとしている自分の罪悪感を、その言葉で少しでも和らげようとしていた。彼はガイアから召喚された戦士。同じガイアから来た強者たちと戦い、殺すか、あるいは殺されるためにここへいる。そして、この戦争の勝者に与えられるという報酬を望んでいた。たとえ終わりのない戦争であり、決着など永遠につかないとしても――それでも、ほんのわずかでも勝利の可能性があるのなら、彼にとって他のことはどうでもよかった。
「ゴーレム……」
人間の常識では考えられない速度で夜の静寂を切り裂いて進む。もし一般人が、この威厳あるミュトスと接触すれば、その肉体は塵となって消し飛ぶだろう。それほどまでの速度だった。
ランスロットはすでに五、六体ほどのゴーレムを視界に捉えていた。
それらは伝承に語られるユダヤのゴーレムとはまったく異なる。泥や粘土ではなく、PVCパイプ、電線、廃材となった金属――人間のスクラップだけで作られた見張り用のゴーレムだった。
「遅い」
その言葉は自分へ向けたものではない。ゴーレムたちへの宣告だった。
彼らが状況を認識するよりも早く、ランスロットは突撃する。一体、また一体と、彼が歩みを止めることなく触れただけで、五体すべてのゴーレムは粉塵となって崩れ去った。
「ずいぶん急いでいるようだな」
その声を聞き、ランスロットは足を止めた。
「それらは貴殿のゴーレムか。貴殿が噂のマナ型ミュトスですか?」
彼は迷うことなく核心を突く。
進路の先には、一人の青年――あるいは若く見えるだけの成人が立っていた。
見知らぬ男は、かすかに微笑む。
「どうやら目まで衰えたらしいな、老人。俺が何者に見える? 本でも抱えた老魔術師か? むしろ、その格好のほうがマナ型に見えるぞ」
皮肉を込めた返答だった。
目の前の青年もまた、間違いなくミュトス。その身から放たれる魔力が何よりの証拠だった。
「その通りです。失礼しました。マナ型は私をも凌ぐほど膨大な魔力を有すると聞いております。ですが、あなたの魔力は私よりも弱い」
騎士とは、戦場で戦うだけの存在ではない。己の名誉と騎士道を守る者でもある。
青年は口元に笑みを浮かべた。
「俺の名は……忘れた」
その言葉に、ランスロットは眉をひそめる。
「……冗談だ。驚いたか? 俺の名は、藤 蓮だ」
ランスロットの目がわずかに見開かれた。
これほどあっさりと自らの名を明かすとは。名を晒すことがどれほど重大な意味を持つか、ミュトスなら誰もが知っているはずだった。
藤蓮は腰に手を当て、得意げに笑う。
「驚いたか? 俺が名前を隠すと思ったんだろ? その格好、どう見ても俺の時代のものじゃない。あんたは間違いなく大昔の人間だ。だから俺は名を隠す必要がないんだよ。それに……その服装と風貌を見る限り、中世モンスドラトの貴族階級ってところだろ?」
あまりにも鋭い。
未来の時代から来たミュトス――つまり、自分より後世の英雄であることの優位性だった。ランスロットは、目の前の男について名前以外何一つ知らない。しかし相手が名を明かした以上、騎士道に従うなら、自らも名乗らなければならなかった。
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