信頼の結果
まなかは生き残るのか、それとも死んでしまうのか?彼は新たな決断を下した。これが彼女の死につながらないことを願う!作者は邪悪な野郎なのか?
「そんな考えなしの罠に飛び込むつもりはない。俺は反対だ。それに、お前たちも夜は外へ出ず、大人しく家にいるべきだ」
冬夜さんはきっぱりと言い切った。
アロから得た情報を、彼は完全には信用していない。彼の中では、アロはあくまでも敵陣営の人間なのだ。
「ですが、お嬢様。私はこの危険を承知で動くべきだと思います。もし冬夜殿のおっしゃる通り罠であれば、残念ながらお嬢様の恋人と刃を交えることになるでしょう。しかし、その情報が真実であれば、彼は我らに極めて重要な情報を与えてくださったことになります」
ランスロットは静かに自分の考えを述べた。
……どちらを選んでも危険。まるで諸刃の剣だ。いや、違う。これはどちらの味方をするかではない。アロを信じるかどうか、それだけだ。ここに残れば、私はアロの言葉を疑うことになる。でも、外へ出れば――ううん。私はアロを信じる。あの人が私を裏切るはずなんてない。アロは、いつだって正しい。
「行こう。ランスロット、一緒に来て。この問題は私たちで解決する」
私は勢いよく立ち上がった。
もう隠れているだけではいられない。いつまで敵から身を隠し続けるつもりなのだろう。戦いから逃げ続けることなんて、できるはずがない。
「御意、お嬢様」
老騎士の声には、新たな闘志と揺るぎない忠誠が宿っていた。
その瞬間、彼のぼろ布のような服装が光に包まれ、一瞬で初めて出会った時の騎士の姿へと変わる。
漆黒の豪奢なマントを羽織り、その内側には気品あふれる紫の正装。まさに歴戦の騎士そのものだった。
「好きにしろ。俺はもう止めないし、ついて行く気もない。もし誰か一人でも死ねば……いや、お前たちは契約しているんだったな。どちらかが死ねば、結局二人とも死ぬ。せいぜい頑張れ。ちゃんと死んだ後で、俺が死体だけは回収してやる」
そんな縁起でもない言葉だけを残し、冬夜さんは部屋を出て行った。
もうこの同盟にも、この作戦にも興味を失ったようだった。
私が死のうと、生きようと、今の冬夜さんには関係ないのかもしれない。
きっと、私を説得しても無駄だと悟ったのだろう。
私はランスロットを見る。
彼は無言で頷いた。
――行こう。
そう言っているようだった。
私たちは二人で屋敷を後にした。
もう魔法には驚かない。
冬夜さんの屋敷は、何重もの気配遮断と防御結界によって守られている。敵から見れば、あの屋敷は存在そのものが消えているようなものだ。
「冬夜さんの言葉を無視したことなんて気にしない……私のアロへの想いは、それ以上なんだから」
私は自分に言い聞かせるように、小さく呟いた。
静まり返った夜道を歩く。
辺りは不気味なほど静かだった。まだ深夜という時間でもないのに、この静けさは異常だ。いつもなら仕事帰りの大人たちが歩いている時間なのに、人影は一つも見当たらない。
私は少しだけ後ろを振り返る。
ランスロットは無言のまま私の後ろを歩いていた。
まるで、ただ主人を守ることだけを使命とする忠実な騎士のように。そういえば――契約を結んでから、もう三日が経つ。私はこの戦争のプレイヤーになった。それなのに、私たちは二人だけでまともに話をしたことが一度もなかった。
「お止まりください、お嬢様」
ランスロットの声に私は足を止める。
彼は素早く私の前へ出た。
その先を見た私は、思わず目を見開く。
「これは……!」
目の前に広がっていた光景は、言葉では言い表せないものだった。
まるでSF映画のワンシーン。
人の背丈ほどの機械人形が何体も歩き回っている。けれど違和感がある。未来的なロボットではない。塩ビパイプや電線、廃材、金属片などを寄せ集めて作られたような、粗雑で無骨な姿。私と同じくらいの背丈しかない、小柄な機械人形たちだった。
「あれって――」
「ゴーレムです」
ランスロットが私の言葉を引き継ぐ。
ゴーレム……私の知っているゴーレムは土や粘土でできているはず。でも、目の前のそれは、どう見ても機械だった。
「お嬢様、私の後ろへ」
ゴーレムたちは辺りを歩き回っているだけだった。
……これがマナ型ミュトスの仕業?魔法の世界なのに、どうしてこんな科学技術みたいなものが存在するの?異世界ガイアでは魔法が当たり前のはずなのに。なのに、どうして科学者みたいなことをしているの?
「魔術の世界の人たちって……どうして魔法から科学に行き着くの?」
私は小声で尋ねた。
「私にも、この種のゴーレムは初めてです……ですが、間違いなくゴーレムです。本来は失われた技術だったはずですが……」
ランスロットも困惑していた。私とは違う理由で。それでも、一つだけ確かなことがある。アロの情報は正しかった。これで冬夜さんも、もうアロを敵視しなくなるはずだ。
「マナ反応を検知。ミュトスのマナ反応を確認」
五体ほどいたゴーレムたちが、一斉にランスロットへ顔を向ける。
次の瞬間、とてつもない速度でこちらへ突進してきた。世界最速の人間さえ軽く超える速度。
私は思わず目を閉じ、ランスロットの背中へ身を隠した。
何かが砕け散る音。何かが吹き飛ぶ音。
恐る恐る目を開けると――
「……わあ」
五体すべてのゴーレムが、一瞬で破壊されていた一秒。いや、一秒もかかっていなかったかもしれない。
「ランスロット、すごく強い……」
「敵が弱いだけです。これほど脆弱な相手を倒したところで、誇るほどのことではありません。この程度では、並以下のミュトスにすら及びません」
その声には失望が滲んでいた。
弱い敵では満足できない。
それが騎士である彼なのだろう。
「まなか」
誰かが私の名前を呼んだ。
同時に、馬の駆ける音が夜道に響く。
馬上には、一人の巨躯の男が乗っていた。
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