予想外の展開(1)
新たな展開が始まりました。物語は再び動き出します。ヒロインには新たな驚きが待ち受けています!
私はベッドの上に寝転がっていた。
魔法の家の仕組みさえ理解してしまえば、どんな魔法的な異常現象を見ても驚かなくなる。
あの宙に浮かぶ床板の仕組みだってもう分かっている。
上の階へ行きたいなら、行きたい部屋の方向を向いて軽くジャンプするだけ。
すると――魔法。
足元に浮かぶ床板が現れ、それを階段みたいに使って登ればいい。
簡単な話だ……気分は最悪。
もしかして、あの日なのかな……いや、これはすごくプライベートな話だけど。
昼寝なんて普段は絶対しないのに、横になっても冬夜さんとの会話ばかり思い出してしまう。
どうしたらいいんだろう。
時計が四時を回れば、もう夕方だ。
「小山お嬢様! 冬夜様がお昼ご飯をお持ちするようお命じになりました!」
冬夜さんに仕えるハウスエルフが部屋へ入ってきた。
その手には、お盆いっぱいに並べられた見慣れない料理……どうせまた魔法世界由来の料理なんだろう。
私は運ばれてきた料理を見つめる。
「……これは何?」
私はパーセリーに尋ねた。
「とても美味しい料理です! パーセリーが心を込めて作りました!」
「いや……作ってくれたのは分かるけど、料理の名前を聞いてるの」
「フランスでとても有名なお料理です! チョコレート入りローストブレッドです!」
私はほっと息をついた。
本当にフランスで有名なのかは知らないけど……少なくとも普通の食べ物ではある。
「ん……!」
……訂正。
全然普通じゃない。
パンそのものがチョコレートでできていて、焼きたてなのか湯気まで立っている。
焼いたチョコレートパン。
「……少なくとも、顔をしかめずに食べられる料理ではあるか」
私は小さく呟いた。
本当だ。
少なくともゴブリンの肉じゃない……美味しかったのは認めるけど、それでも精神的にはきつい。
パーセリーは料理をベッド脇へ置くと、そのまま部屋を出ようとした。
「待って」
私は呼び止める。
「パーセリー……少しだけ話をしてくれない? 聞きたいことがあるの」
「小山お嬢様のお尋ねには、パーセリーがお答えいたします!」
彼は深々と頭を下げた。
本当に従順だ……いや、人間じゃないから「人」と呼ぶのも変な話だけど。
「パーセリー」
私は口を開く。
「あなたたちエルフやゴブリンみたいな存在って、どうしてこの世界にいるの? 魔術師が何か実験でもした結果なの?」
パーセリーは首を横に振った。
「違います。パーセリーたちは実験で生まれた存在ではありません」
「え?」
「パーセリーも、すべての魔法生物も、一度たりとも地球の住人だったことはありません」
「……えっ!?」
思わず声が裏返る。
「どういうこと?」
「パーセリーたちは皆、魔法世界『ガイア』の住人です。人間が死後、異世界として転生する世界と同じ場所です」
「ま、待って!」
私は慌てて声を上げる。
「つまり、あなたは別世界から来たってこと!?」
頭が追いつかない。
「でも、どうやってこっちへ来たの? 召喚できるのはミュトスだけじゃないの? それも異世界で死んだ後じゃないと駄目なんでしょう?」
パーセリーは申し訳なさそうに耳を伏せた。
「申し訳ありません、小山お嬢様。パーセリーにも、自分がどうやってこの世界へ来たのかは分かりません」
……混乱する。
魔法世界には謎が多すぎる。
彼らは地球の生き物ではなく、ミュトスたちが暮らすガイアの住人。
だからランスロットもゴブリンの肉を平然と食べられたのか。
向こうでは普通の食材なんだ。
いろいろ説明はつく……でも同時に、新しい謎も増えていく。
まるで真っ暗闇の中で、手当たり次第に矢を放って答えを探しているみたいだった。
「そうなると、一つ気になることがあるんだけど」
「何なりとお聞きください、お嬢様」
「パーセリーは、どうして冬夜さんに仕えているの?」
「パーセリーは冬夜様の使用人ではありません」
「……え?」
私は眉をひそめる。
「小山お嬢様。パーセリーは冬夜様に仕えております。ですが、冬夜様だけの使用人ではありません」
「ちょ、ちょっと待って」
頭がこんがらがる。
「余計分からなくなったんだけど」
パーセリーは大きな瞳で私を見つめている……そういえば。
エルフってドライアイになったりしないのかな。
あんなに目が大きかったら、乾燥とか埃が入りやすそうなのに。
「パーセリー、話を難しくしないで」
私は苦笑する。
「混乱しちゃうよ」
「パーセリーは冬夜家に仕える使用人です」
彼は胸に手を当てた。
「命尽きるその日まで、冬夜家にお仕えします」
静かな声が続く。
「パーセリーは昔、人間の狩人に命を狙われました」
彼は少しだけ目を伏せる。
「その時、命を救ってくださったのが冬夜様のお兄様でした。だからパーセリーは一生、この家に恩返しをすると誓ったのです」
「……そうだったんだ」
命を救われた恩。
昔話によくあるような話だ。
助けてもらった命を、生涯をかけて恩人へ返す。
少し悲しくて、でも温かい物語。
突然、パーセリーの顔が歪んだ。
「パーセリーは最低の使用人です!」
涙が一気にあふれ出す。
「十年前の戦争で、本当の主人を守れませんでした!」
そう叫ぶと、彼は泣きながら部屋を飛び出していった。
私は一人になった……いや。
焼きたてのチョコレートパンもいるけど。
「……お腹空いてない」
私はぽつりと呟く。
まだ冬夜さんの決断に納得できない。
私は子どもじゃない。
自分で考えて、自分で決められる。
それに同盟を持ちかけてきたのは、冬夜さんの方だった。
胸が痛む。
アロに会いたい。
「……でも、どうやって?」
そればかり考えてしまう。
どうすれば彼に会えるんだろう。
私は目を閉じた……何だか変だ。
ベッドの上をゴロゴロ転がりながら、アロに会う方法ばかり考えている。
「どうすれば会えるんだろう……冬夜さんもランスロットも、もうアロには会わせないって決めちゃってるし……」
私は頬を膨らませる。
もう。
何で一人でこんな独り言ばっかり言ってるんだろう。
言ったところで何になるっていうの。
魔法少女。
昔はずっと憧れてた。
でも現実は、本当に残酷だ。
「……って、私いったい何考えてるの!?」
私は勢いよく起き上がる。
「なんで私、恋愛漫画のヒロインみたいなことしてるのよ!?」
私は両手で自分の髪をぐしゃっと掴み、思い切り頭を抱えた。
この章をお読みいただき、ありがとうございました!SodaKun ☆!




