ラインハルト・ハイドリヒ
次の章は衝撃的な幕開けとなるでしょう。信じてください!大混乱が巻き起こるはずです!!
「なるほど」
私はランスロットに、これまでのことをすべて話した。
彼は私たち二人をじっと見つめている。
私が、冬夜さんがしたことや、彼がどうやって私と彼氏とのデートを台無しにしたのか。そしてアロのことをどれほど失礼に話したのかを説明している間、冬夜さんは一言も口を挟まなかった。
「……以上が全部です。私の気持ち、分かってもらえますよね?」
「お嬢様。彼の言葉に耳を傾けるべきです」
「……え?」
私は信じられない思いで、自分のミュトスを見つめた。
まさか、私の味方をしてくれないなんて。
ランスロットの返事を聞いた瞬間、冬夜さんの口元に笑みが浮かんだ。
「ほら、聞くべきだよ、小山くん。君の騎士型ミュトスでさえ、私の考えに賛成しているようだ」
ランスロットは静かに首を横に振る。
「誤解しないでいただきたい。我らが同盟者よ。私はあなたの考えに賛同したわけではありません」
彼は穏やかな口調で続けた。
「私は、お嬢様の恋人を戦いに巻き込まないという点には賛成しています。彼は普通の人間ですから。しかし、あなたの思想そのものに賛同したわけではありません。私は、誰一人として罪なき命を失わない最善の結末を望んでいるだけです」
ランスロットは冬夜さんの言葉を真っ向から否定した。
……それでも。
彼が私の味方をしてくれていることは分かる。
だけど結局は、半分くらいは冬夜さんの言葉に同意している。
私は拳を強く握り締めた。
力が入りすぎて、指の関節が白くなる。
……二人とも正しい。
なのに、私はどうしてこんなにも腹が立つんだろう。
どうしてこんなに苦しいんだろう。
理由は一つ。
冬夜さんがアロを侮辱したから。
でも、本当の馬鹿は私だ。
普通の人間であるアロに、魔術の秘密を話そうとしてしまった。
……絶対に駄目。
私は、アロをあんな地獄みたいな魔術世界に巻き込まない。
「……部屋に戻ります」
私は小さな声でそう告げた。
二人にそれ以上何も言わず、その場を後にする。
誰も私を止めようとはしなかった。
きっと、誰も感情的になっている未熟な女子高生なんて止める気になれなかったのだろう。
……そう。
私はまだ、自分で正しい判断すらできない未熟な少女なんだ。
「きゃっ!」
誰かにぶつかり、そのまま床へ尻もちをつく。
「純潔の薔薇が地に咲いているとはな。私にひれ伏したいのか?」
尊大な声が頭上から降ってきた。
見上げる。
そこに立っていたのは、誰よりもおしゃれにこだわり、人を見下すことが大好きな男――ラインハルトだった。
黄金のミュトス。
「その顔を見る限り、お前の人生は悲惨そのものだな」
感情のない黄金の瞳が、私の胸を貫く。
……何、この感覚。
あの目、本当に冷たいだけなの?
……何を考えてるの、私。
彼はゆっくりと腰を下ろし、私の隣へ座った。
こんな姿を見るのは初めてだった。
「フッ。今日は機嫌がいい。だから特別に、お前の悩みを解決してやろう」
彼は私を見つめる。
鼓動が速くなる。
危険。
本能が警鐘を鳴らしている。
この人は完全に危険人物。
……なのに、どこか違う。
「一つ聞きたいんですけど」
「何だ?」
「あなた、本当の名前は何なんですか?」
私は彼を見つめる。
「冬夜さんは最初、あなたをラインハルトって呼んでいました。でも同盟を結んでからは『ハイドリヒ』って呼んでいます。あなたはラインハルトなんですか? それともハイドリヒなんですか?」
黄金の戦士はため息をつき、傲慢な笑みを浮かべた。
「私は日本の娘というものが実に好きだ。我らが総統も、この日出ずる国――日本をたいそう気に入っていてな。優れた民族だと考えていた」
「えっ!? 総統って……まさか、あなたの前世は――」
彼は不敵に笑う。
「その通り。我らが総統だ。私は生前、ドイツ軍の将校だった」
彼は胸を張って名乗る。
「私の名は――ラインハルト・ハイドリヒ。」
「ラインハルト……ハイドリヒ……」
名前だけ聞けば格好いい。
……でも中身は全然格好よくない。
第二次世界大戦でドイツ軍にいた人間なんだから、悪人なのも当然か。
「それで、何の用ですか?」
「何だ? 記憶力まで悪いのか、このブス娘」
またそれ。
「お前の悩みを全部解決してやると言っただろう」
こんな傲慢で残酷な人が、わざわざ床に座って私を助けようとするなんて。
……信じられるわけがない。
「私を信用していないのか? 薄情だな。人の心というものは持っていないのか?」
私はじっと彼を見つめた。
「それ、ネットのミームから取ったセリフですよね!?」
彼は突然笑い出した。
「ククク……フハハハハッ!」
肩を震わせながら笑う。
「この時代に召喚されたのは実に面白い。死後、この世界がどう変わったのかを見るのは悪くない」
彼はどこか懐かしそうに続ける。
「私はこの時代が気に入っている。特に科学技術の発展は素晴らしい。……だが、ドイツは敗戦し、今や他国の犬か。日本もまた滅びたようなものだな」
……話を聞いているだけで頭が痛くなる。
でも考えてみれば当然かもしれない。
ガイアという異世界へ行く前、ミュトスたちは皆、この地球で人間として生きていたのだから。
彼が現代を気に入っているなんて思わなかった。
やっぱり、この人は何を考えているのか全然分からない。
「私に助けを乞わないのか?」
私は睨み返した。
「結構です。私は困ってません」
彼は立ち上がる。
「時間の無駄だったな」
彼は服についた埃を払った。
「せっかくのお気に入りの服が汚れた。悪い娘だ」
そして、小さく笑う。
「……フフ。お前は面白いな、小山まなか」
彼は背を向けた。
「これから先も、お前という人間を見てみたくなった」
歩き出しかけた彼は、ふと立ち止まり、肩越しに私を見る。
「その醜い顔でも、お前のことは少し気に入り始めた」
くすりと笑うと、そのまま去っていった。
……結局、何だったの。
助けるって言っておきながら。
「助ける? そんなわけないか。ただ私をからかいに来ただけだ」
私は一人、床に座ったまま呟く。
「弱いから誰にでもいじめられるんだ。最初はルーク、それから冬夜さん。自分のミュトスにまで評価を下げられて、最後はあの傲慢な英雄まで……私は鐘か何かなの? 誰でも好きな時に鳴らしに来るじゃない」
誰もいない場所で、一人ぼやく。
「やれやれ……」
私は小さく呟き、立ち上がった。
今日は本当にいろいろありすぎた。
……でも。
明日は絶対に行動する。
冬夜さんの目を盗んで、アロに会いに行く。
あの人には、もう私を止められない。
「……でも、どうやって?」
この章をお読みいただき、ありがとうございました!SodaKun Out ☆!




