エルフのパーセリー
数々の暗い章と激しい戦いを経て、明るいトーンの章という新たな章に突入します!作者はいつも嘘をつく!!
これは、三鷹市の大災害が起きた十年前の物語だ。ニュースでは、日本の発展を妬む国々によるテロだと報じられた。だが、私は本当の真実を知っている。
忘れ去っていた遠い記憶が、夢となって蘇ったのだ。
冬の夜の冷たさには、まだ慣れない。今夜の月はやけに明るく輝いている。私が小山弘樹に養子として引き取られてから、二か月が経っていた。
「お前は失敗作だ!」
怒鳴り声が響く。
「ごめんなさい!」
私は謝罪した。書類上では私の養父であるその男に。彼は魔術師で、私は殴られる以外に何もできなかった。
「忌々しい……。マナ強化程度もまともにできんのか。時間の無駄だ。いっそあの時、そのまま死なせておけばよかった」
そう言いながら、彼は私を殴り続ける。
それは日常だった。
毎日の虐待。家には結界が張られている。だから私の悲鳴も苦痛も、外へ漏れることはない。毎日が同じだった。
「――――」
私が救い主だと思っていた男は、実際には悪魔だった。憎い。でも私は弱い。数時間後、ようやく彼は殴るのをやめた。全身が傷だらけだ。呼吸をするのも苦しい。私は床に倒れたまま動けない。彼は私を放置して部屋を出ていった。たぶん寝たのだろう。
私は立ち上がろうとした。だが痛みが身体を縛る。
「……いた……い……」
苦痛に呻く。
どれほど時間が経ったのか分からない。
私はようやく床から起き上がった。小さく弱い身体を引きずりながら台所へ向かう。
もう限界だった。私は目を閉じ、決意した。もうサンドバッグとして扱われるのは嫌だ。
行動しなければならない。彼に対して。
私は人生で最も幸福な記憶となる行動を取った。私を愛さなかった養父を殺すこと。
悲しむべきだろうか?いや。同情するべきだろうか?いや。もし彼が生き続ければ、いつか死ぬのは私の方だ。
彼が眠っている間――私は静かに首へ刃を突き立てた。刺す瞬間、手は震えなかった。彼は声も上げず、抵抗もしなかった。ただ静かに私を見つめながら死んだ。
それが――私と養父・小山弘樹との最も甘い思い出だった。
悪夢が薄れていく。ゆっくりと目を開く。
「……うっ……」
窓から差し込む朝日が目に入った。
「……ん……」
私は再び目を閉じる。
「もう少し……だけ……」
そう呟いて枕に顔を埋めた。
枕?なんだか感触が違う。そもそも私は普段、床で寝ているはずなのに――この感覚は……
「ベッド?」
私は飛び起きた。
柔らかくて暖かい。とても寝心地のいいベッドだ。
「小山さんがお目覚めです!」
見知らぬ生き物がベッドへ飛び乗ってきた。
「きゃああっ!!」
「ぎゃああっ!!」
私たちはお互いの姿を見て同時に悲鳴を上げた。
私は反射的に蹴り飛ばす。
ベッドから転げ落ちた。いや、本当に奇妙な生き物だった。生まれたばかりの赤ん坊のような顔。しかも驚くほど不細工。身体は小さく、目は大きい。鼻は真ん中から折れたように曲がっていた。
「パーセリーは小山さんに謝ります!」
その生き物は立ち上がり、ぺこりと頭を下げた。
「パーセリー?」
「はい。パーセリーです。私はパーセリーです。冬夜様に小山さんがお目覚めになったことをお伝えしてきます」
礼儀正しく言うと、そのまま部屋を出ていった。
「冬夜様……?」
その瞬間、昨夜の出来事が頭に蘇る。
「目が覚めたか?」
冷たい声が聞こえた。
私は声の主を見る。
長い金髪。黄金の瞳。椅子に座る男――裸だった。その身体は――
私は顔を真っ赤にする。全部見えている。完全に。
慌てて視線を逸らした。
「真の輝きを前にして目を逸らせる女など存在せん」
彼はそう言った。椅子から立ち上がる。
その時、ドアが開き、冬夜さんが入ってきた。
「冬夜さん!」
なぜか分からない。
その姿を見て安心した。
冬夜さんは私の赤い顔を見た後、金髪の男へ視線を向けた。
「ハイドリヒ! 何か着ろ!!」
怒鳴る。
「下賤な民に王の服装を指図する権利はない」
冷たく言い返した。
その瞬間、私は気付く。この人だ。レイと一緒にいた外国人。冬夜さんのミュトス――ラインハルト。
ラインハルトは部屋を出ていった。
「ここはどこですか?」
私は冬夜さんに尋ねた。
「昨日、君はあの神父との戦いで失血して気を失った。だから俺の家へ連れてきた。ここなら安全だからな」
彼は答えた。
「あの生き物は何なんですか?」
「生き物?」
「はい。起きた時に出迎えてきた、あの変な……」
「ああ、パーセリーか。エルフだ。うちの使用人だよ」
「使用人? エルフ?」
日本の作品のせいで、エルフといえば美しく整った容姿を想像していた。だから余計に衝撃だった。
「本当に魔術世界について何も知らないんだな、小山くん」
冬夜さんは椅子を引いて座った。
沈黙。
ただ私を見つめている。
なんだか居心地が悪い。
「ふぅ……」
しばらくして――
「命を救ってくれてありがとう」
彼は礼を言った。
私は驚いた。まさか感謝されるとは思わなかった。
「冬夜さん!」
「君がいなければ、俺はあの神父に殺されていた。本当に感謝している」
「私は……」
言葉が出てこない。
どう説明すればいいのだろう。私が彼を助けなければ――死んでいたのは私の方だった。彼を助けた結果、自分も助かったのだ。
「頼みたいことがある」
「私に?」
「小山くん」
冬夜さんは真っ直ぐ私を見た。
「俺と同盟を組んでほしい」
この章をお読みいただき、ありがとうございました!SodaKun Out ☆!




