新しいミュトス
新たな遭遇と新たな敵が現れた! なんで私はこんなにも戦いを愛する作家なんだろう?! 愛すべきなのか、それとも憎むべきなのか?!
「やれやれ! 異端者どもに出会えるとは、なんと愉快なことでしょう」
毒を含んだような声が響いた。私の顔から汗が流れる。あいつ――
「そいつです! 教会の人間です!!」
私は叫んだ。
私を殺したあの神父の笑顔――。この状況をどう理解すればいいのか分からない。
蛇を思わせる顔をした神父が、ここにいる。
「おやおや。まさか私を覚えていてくださるとは」
銃声が鳴り響いた。合計五発。しかし、その弾丸は一発たりとも私には届かなかった。
「なんとも見苦しい行為だな」
老人が口を開く。彼はまるで盾のように私の前へ立っていた。本来なら私に命中していたはずの弾丸は、すべて彼によって防がれている。
これが――ミュトスの力なのだろうか。銃弾は簡単に人の命を奪う。銃撃を受けて生き延びるだけでも奇跡だ。それなのに五発もの弾丸が、彼の服をかすりもしない。ミュトスと呼ばれる存在の異常性を、これ以上なく示していた。
「偉大なる英雄の御前で、このような無粋な真似をしてしまい申し訳ありません」
神父は頭を下げた。
だが、その笑みは一切崩れない。
「私、サンティーノ・フェーボと申します。バチカン教会機関の一員です」
その名を聞いた瞬間、私の背筋に寒気が走った。バチカン――?あの小さな国のこと?
「そ、そんな……」
冬夜さんが衝撃を受けたように呟く。
「逃げましょう!」
冬夜さんは私を見た。
その声には恐怖が混じっている。
「奴は魔術師狩りの訓練を受けた神父だ! 教会バチカン支部の円卓に席を持てるのは、最高クラスの狩人だけなんだ!!」
「ああ……。冬夜家の失敗作が、意外と物知りで驚きましたよ。残念ながら、お兄様は十年前に私の手にかかる前に死んでしまいましたが。まあ構いません。あなたを殺して代わりにしましょう」
邪悪な笑みを浮かべる。蛇のような瞳に見つめられ、私は体が凍りついた。まるで全身を締め付けられているようだ。危険だ。この男から逃げろと、本能が警鐘を鳴らしている。
「このお嬢さんには指一本触れさせん」
私を守るように前へ出た老人が言った。その声に恐れはない。その背中はあまりにも頼もしかった。老いてなお、その背中は人に安心感と希望を与える。時の流れに抗いながらも、なお力を振るって私を守ろうとしている。
「この二人は私が保護している。殺したいのなら、まず私を越えてみせろ」
その言葉に虚勢はない。老人の言葉には確かな重みがあった。
「申し訳ありません、偉大なる英雄殿。しかし、あなたと戦うのはご遠慮させていただきます。ミュトス相手に戦うほど愚かではありませんので」
神父は笑い出した。
背筋が寒くなるような笑い声だ。
そして指を鳴らす。
「あなたには、もっと良い相手を用意しております。――来なさい、カイン!」
神父は舌を突き出した。
その舌先から紫色の火花が走る。光の線が全身へと広がっていく。それは以前見た現象と同じだった。
「こいつ……」
「……召喚者だ」
紫色の粒子が空中で舞う。眩い閃光。
そして光が消え去った時――そこには怪物が立っていた。
私の目は大きく見開かれる。
怪物と呼ぶのも生ぬるい。まるで腐敗した肉体を持つ巨大なゾンビそのものだった。その顔は恐ろしい。私が今まで見たどんなホラー映画の怪物よりも恐ろしい。まさに悪夢の具現化。白髪を持ち、身長は二メートルを優に超えているだろう。
怪物は咆哮した。
その瞬間、魂が抜け落ちそうになる。
何なの?どうして?どうやって?
そんな疑問が頭をよぎる。だが次の恐怖が、私から呼吸を奪った。
「なんという……膨大なマナだ」
冬夜さんの言葉は真実だった。私のような半人前の魔術師でも分かる。魔術師は強大なマナに敏感だ。そしてこの怪物は、まるで際限なくマナを垂れ流している。そのマナ量は老人に匹敵し、あるいはそれ以上かもしれない。
私の体内にあるマナが反応している。その咆哮だけで、自分のマナを引き剥がされそうな感覚に襲われた。
神父は蛇のような笑みを浮かべたまま語る。
「実に素晴らしい夜ですね。本日だけで二人もの異端者に出会えるとは。まさに一石二鳥。現在の冬夜家当主にまでお会いできるとは、なんという幸運でしょう」
その視線が私へ向けられる。
「どうぞ遠慮なくミュトスをお使いください。この悪魔は負けません。かつて最強の英雄たちの一人だったのですから。しかも面白いことに、この怪物は世界最初の罪人――カインと同じ名を持っています」
神父は自身のミュトスの名を明かした。カイン。アブラハム系宗教において特別な意味を持つ名前。弟を殺し、神に最初の罪人とされた男。
その物語なら私も知っている。だが、目の前の存在はそのカインではない。異世界のカインだ。異世界で英雄となった戦士。
「お嬢さん」
老人が私を呼んだ。
「彼は私でも容易には倒せない相手だ。できれば安全な場所から見ていてくれ。戦闘中は、君の安全まで保証することができん」
すると冬夜さんが口を開く。
「知っているんですか?」
老人は頷いた。
「ああ。彼はグレオメという国の伝説的人物だ。その物語は非常に有名だ。そもそも彼が召喚されること自体、おかしい。本来なら伝承によれば、彼は神々の列へ加わった存在なのだからな」
つまり――この怪物は神だ。私の体は恐怖と不安で震えた。私たちが相手にしているのは――
「神……ですか?」
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