普通ではない
すべての決断には様々な結果が伴います!ご安心ください!作者は常に、劇中の登場人物が悪い選択をしないように配慮しています!
決めるのは――私だ。
「どうする、小山まなか?」
全員の視線が私に向けられていた。どう答えればいいのか分からない。そもそも私は、自分とは何の関係もない超常の世界へ勝手に引きずり込まれたのだ。なぜ私が選ばれたの?
「よく考えるんだ」
ピーターが言った。
それだけの価値があるのだろうか。この老人のパートナーになることに。私はそれに相応しいのだろうか。むしろ足手まといになるだけじゃないの?だって私では、この人の本当の力を引き出せない。
「一つ聞きたいことがあります」
私は老人へ向かって尋ねた。
「何だ?」
「どうして私が必要なんですか? それに、どうやって私が召喚者になるんです? あなたはもう誰かに召喚されていたんでしょう?」
老人は即座に答えた。
「私の元の召喚者は、あの英雄たちとの戦いの最中に命を落とした」
静かな声だった。
「我々ミュトスは、この世界の人間を媒介にしなければ存在できない」
彼は続ける。
「言わば我々は幽霊のようなものだ。そして君たち召喚者は、その依り代だ」
――ああ。
そういうことか。つまり召喚者は、彼らが存在するために必要な存在なのだ。
元の召喚者は死んだ。そして、その召喚者は――。
「アロ……」
私は小さく名前を呟いた。
考えたくない。私は今日、全てを失った。小山まなかという少女の人生は終わったのだ。唯一愛した人も、もういない。アロが召喚者だったかどうかなんて関係ない。ただ一つの事実だけが残る。彼はもう、この世にいない。ならば私は何にしがみついているのだろう。普通の人生?そんなもの、もう失ったじゃないか。受け入れるべきなのかもしれない。魔術師になる運命を。小山弘樹に引き取られたあの日から、私の運命は決まっていたのかもしれない。
「私は……」
言葉が止まる。
声にならない。胸が苦しい。涙が溢れてくる。
「ごめんなさい! お断りします!」
涙を流しながら、私は拒絶した。受け入れられなかった。今夜、私は全てを失った。怖かった。知らない誰かのために命を懸けるなんてできない。
「私は知らない人たちのために命を懸けられません! ごめんなさい!!」
思わず叫んだ。
「大切な人すら守れなかった私に、誰かを救う希望なんてありません!!」
誰も反応しなかった。
沈黙だけが続く。その静寂を破ったのはピーターだった。
「そうか」
彼は静かに頷く。
「それがお前の選択なら尊重しよう、小山まなか」
「……」
「帰っていい」
そう告げた。
「君の意思を尊重しよう、お嬢さん」
老人も深く息を吐いた。
怒っている様子はない。だが、その声にはわずかな落胆が混じっていた。
次の瞬間。老人の姿が消えた。誰も驚かなかった。おそらく――それが彼の最期だったのだろう。召喚者を失ったミュトスは存在できない。間接的に、私は彼を殺したのかもしれない。
「京太郎、少し来い」
ピーターが言う。
「二人だけで話がある」
冬夜さんは立ち上がり、ピーターと共に店の奥へ消えていった。
「帰ろう……」
私は小さく呟いた。
カフェを出る。
冷たい夜風が頬を打った。冬は嫌いだ。涙が風に冷やされていく。
通りは静かだった。月が明るく夜空を照らしている。人々は眠っている。この超常の世界のことも。大成高校で起きた悲劇を知らずに。
「……帰ろう」
私は歩く速度を上げた。
家へ向かう。
その時だった。
ぞくり――背筋に寒気が走る。
振り返る。空気がおかしい。
「こんばんは、シニョーラ。少しお時間をいただけますか?」
男の声だった。
振り返る。
そこには背の高い若い男が立っていた。白い髪。染めているのか、それとも別の理由なのかは分からない。黒い服を着ている。どこか教会の司祭服にも似ていた。そして何より――。蛇を思わせる顔立ち。
不気味な笑みを浮かべている。
「少しお話しませんか、お嬢さん?」
流暢な日本語だった。
「少しだけ時間をいただきたいのです」
ゆっくりと距離を詰めてくる。誰?私の本能が警鐘を鳴らしていた。
「おじょさん、ご迷惑はおかけしません。少し質問したいだけです」
もうすぐ目の前だ。
三鷹市は観光地ではない。彼は日本人じゃない。外国人だ。ジブリ美術館こそ有名だけど――。
「あなた、誰なんですか!?」
思わず叫んだ。
危険だ。この男は危険だ。嫌な気配がする。
三鷹市に教会なんてない。深夜に司祭が歩いている時点で異常だ。普通の人間じゃない。
「魔術師の臭いがしますね」
笑顔のまま言う。
私の身体が震えた。
教会。この男は教会の人間だ。
「魔術師狩り……」
つい先ほど聞いた言葉を呟く。
その瞬間――
パンッ!!
乾いた破裂音。
「ぁ……っ!!」
身体が崩れ落ちる。
腹部が焼けるように熱い。
火薬の臭い。男の手には拳銃が握られていた。
血が溢れる。
「ぐっ……!」
激痛に悲鳴が漏れた。
男はゆっくり近づいてくる。
「なんと素晴らしい」
恍惚とした笑み。
「異端者の悲鳴は、まるで天上の賛歌ですね」
彼はしゃがみ込む。
「もっと苦しめて差し上げたいところですが」
銃口が向けられる。
「召喚体が見当たりませんね。あなたのミュトスはどこですか?」
「……わ、たしは……召喚者じゃ……」
血が流れ続ける。息が苦しい。
男の笑みが薄れた。
「なるほど」
興味を失ったように言う。
「ですが、おかげで手間が省けました」
銃口が額へ向けられる。
「今夜は小物を一人始末しただけですか」
彼はため息を吐いた。
「せっかくならミュトス同士の戦いを見たかったのですが」
そして――。私の頬を舐めた。次の瞬間。引き金が引かれる。銃声が静かな夜道に響いた。
「どうする、小山まなか?」
――え?
目を見開く。
私はカフェにいた。
この章をお読みいただき、ありがとうございました!SodaKun Out ☆!




