決断
伝承が明らかになり、魔法やその他の事柄に関する情報が少しずつ分かってきました。まなかがこれらの問題にどう対処していくのか、見守りましょう!
夜の街を歩いている。
私と、冬夜さんと、ピーター・クラウチという男。そして、大規模な破壊を引き起こしたあの化け物たちの一人である老人。空気は張り詰めていた。
誰一人として口を開かない。静寂だけが続いている。戦闘が起きていた時も、誰にもその音が聞こえていなかったような気がする。あれは結界魔術なのだろうか。
ピーター・クラウチは政府で働く魔術師で、私たちをどこかへ連れて行っている。だけど――なぜ私なの?どうして私はこんな面倒事に巻き込まれたの?
頭の中には無数の疑問が渦巻いていた。やがて私たちは目的地へ到着した。そこはカフェだった。コメダ珈琲。待ち合わせにも使われる有名な店で、人の出入りも多い場所だ。
私たちは店内へ入った。
「お帰りなさいませ、ピーター様」
カウンターにいた女性店員が私たちを出迎える。いや――違う。何かがおかしい。この女性は普通の店員じゃない。私には分かる。彼女からは膨大な魔力を感じる。
ピーターは軽く手を上げ、その敬意を受け入れた。
「ユニットに伝えろ。多数の死者が出た」
彼は淡々と命じる。
「大統領にも状況を報告しろ。できるだけ早く後始末を進めるようにな」
その声には権威があった。静かな嵐のような男。異常なほど鍛え上げられた肉体だけで、人を従わせる迫力がある。まるで人類の肉体の到達点のようだった。
「座れ」
彼は私たちに言った。
私たちは席につき、彼も向かいの椅子へ腰を下ろす。ピーターは深く息を吸い、ゆっくり吐き出した。その視線は冬夜さんへ向けられている。
「自己紹介はもう済ませたな。冬夜京太郎という名前も知っている」
そして視線が私へ移った。
「君は何という名前だ? お嬢さん。魔術師なのか?」
肩に重圧がのしかかる。
「私の名前は……小山まなかです」
「まなか? 小山だと?」
その言葉に、背筋が凍った。
「まずは説明から始めよう」
ピーターは腕を組んだ。
「10年前、お兄様が亡くなる前に、私に手紙をくださいました。その中で、あなたのことを話してくれました」
彼は冬夜さんを見る。
「もし何かあれば、お前が彼の後を継ぐと書かれていた」
一拍置いて。
「……なんとも期待外れな結果になったものだ」
その表情が全てを物語っていた。師であった男の弟に対する失望。
冬夜さんは恥ずかしそうに俯いた。
「聞きたいことがあります」
私は口を開いた。
「なぜ私がここにいるんですか? 私は見習い以下の魔術師です。魔法すらまともに使えません。それなのに、どうして……?」
こんな重苦しい空気の中でも、どうにか言葉を絞り出した。
「誤解を解こう、小山愛花」
ピーターは落ち着いた口調で言う。
「君が見た怪物たちは、かつてこの世界に生きていた人間だ」
「……」
「死後、彼らは並行世界へ渡り、その世界の歴史の一部となった」
私は頷いた。
「それは聞きました。冬夜さんが説明してくれました」
「ほう?」
「その人たちは異世界で生きた後、魔術師によって再び現実世界へ召喚されたんですよね?」
ピーターは笑みを浮かべた。その笑みはどこか不気味だった。
すると冬夜さんが咳払いをして存在を主張する。
「話せ」
ピーターが促した。
「その……一つ質問があります」
冬夜さんは言う。
「この戦争――『ゲーム・オブ・ウォー』についてです」
彼は続けた。
「システムから得た情報によると、これは殺し合いで、生き残って十四日間を耐え抜けば報酬が与えられるらしいんです」
私も気になっていた。一体何のために存在するのだろう。なぜ異世界の英雄たちがこの世界へ呼び戻されるのか。
「その記録は残っていない」
ピーターは即答した。
「この戦争の起源も、魔術師がどのように生まれたのかも不明だ」
彼は咳払いをして続ける。
「我々が確認できる最古の記録は一九三九年だ」
「一九三九年……」
「その年、魔術師たちの秘密結社が初めて政府と接触した」
「ドイツですか?」
冬夜さんが尋ねる。
「そうだ。彼らはドイツ政府に姿を現した」
「つまり召喚術の知識をドイツへ提供し、戦争に利用されたと?」
ピーターは頷く。
「信じる者は少ないが、第二次世界大戦では魔術とミュトスが使われていた」
「ミュトス?」
聞き慣れない言葉だった。
「我々が異世界の英雄たちを呼ぶ際に用いる正式名称だ」
なるほど。あの老人も、血を飲む怪物も、金髪の外国人も。彼らは全員ミュトスなのだ。
「魔術師には三つの勢力が存在する」
ピーターは指を一本立てた。
「第一勢力は政府派だ。外の世界と接触した魔術師たちは政府に協力し、そのために働く」
二本目の指を立てる。
「第二勢力は秘密結社」
「秘密結社?」
「我々ですら全容を把握できていない」
彼は続ける。
「一般社会との接触を拒み、名門の血筋を重視する者たちだ。技術の発展を嫌い、自らの伝統に固執している」
要するに、時代の変化を拒んだ人々ということだろう。
「そして第三勢力――教会」
その言葉に空気が変わった。
「彼らはイエス・キリストの信徒だ」
「……」
「彼らにとって魔術は罪であり、認められるのは奇跡のみ」
ピーターの目が鋭くなる。
「最も危険な勢力だ。彼らは魔術師を殺すために訓練されている」
沈黙が落ちた。情報量が多すぎる。頭が追いつかない。
魔術師を殺すための組織――そんなものが存在するなんて。
冬夜さんが口を開いた。
「その三勢力は誰が作ったんですか?」
「確定した記録はない」
ピーターは答える。
「だが有力な説では、元々は一つの組織だった」
「一つ?」
「思想の違いによって三つへ分裂したと言われている。それぞれが祖先の哲学を受け継いでいるのだ」
私はもう限界だった。
「それ、私の質問の答えになってません」
勇気を振り絞って言う。重圧は相変わらず苦しい。
「どうして私がここにいるんですか?」
ピーターはまず老人を見た。そして私を見る。再び老人へ視線を戻した。老人は静かに頷く。
「焦るな、小山まなか」
名前を呼ばれるだけで気分が悪くなる。彼の視線も言葉も――うまく説明できない。
「君に提案がある」
ピーターはそう言って、老人を指差した。
「このミュトスのパートナーとして、この戦いに参加する気はあるか?」
この章をお読みいただき、ありがとうございました!SodaKun Out ☆!




