無知
再び主人公まなかの視点に戻ってきました!皆さんが主人公に祝福のメッセージを送ってくれたことを願っています!
混乱の光景を、私はただ呆然と見つめていた。これは何だ? 一体、何が起きている?私の理解を完全に超えていた。
私は説明を求めるように、冬夜さんへ視線を向けた。
「止まってない……。あの化け物たちは、物理法則そのものを無視してる。止める方法はないの?」
私は問いかけた。
意味のない戦いだ。結末なんてない。ただ、多くの人間の命が失われていくだけ。
「ある。止める方法はある」
「だったら止めてよ!」
「ああ。方法は“自殺”って言うんだ。最悪の手段だよ。あいつらを止めようとした瞬間、それは自殺と同じだ。俺は死にたくないんでね」
彼はそう言った。
頭が爆発しそうだった。まず、私はあの怪物たちが何なのかすら分からない。しかも、その上で馬に乗った騎士まで現れて戦いに加わった。彼の返答は、まるで自分が馬鹿だと言われているような気分にさせた。
「君、何も知らないんだな?」
「え? 何を言ってるの?」
冬夜さんが私を睨む。
「いや。こんなくだらない質問してる時点で分かる。説明しなきゃ、お前はそのうち死ぬ」
私たちはどちらも魔術師だ。でも、経験に大きな差があることくらい、私にも分かる。私は素人同然だ。魔術について何の実践経験もない。名前だけの魔術師。彼の口調からして、間違いなく一流の魔術師だった。
「私には何もできない!」
「は? お前、魔術についてどれだけ知ってるんだ? 使える魔術は? 仮にも魔術師なら、いくつか呪文くらい使えるだろ」
彼は私に尋ねた。
「父に……教わってた。でも、魔術の知識は全然ない。基礎も知らないの。ごめんなさい」
「……は?」
冬夜さんが固まった。
「待て。お前、自称アマチュア以下ってことか? 属性適性は? 自分の属性くらい知ってるんだろうな? どんな魔術が使える?」
「正直……分からない。教育が終わる前に、父が死んじゃったから……。弟子入りして数か月後に」
彼は深くため息を吐いた。
「それ、アマチュア以下だぞ」
「で、でも……身体強化ならできる」
「魔術師としての第一歩にもなってないな。身体強化なんて超基本技術だ。魔術ですらない。マナコアを形成した人間に最初から組み込まれてる機能みたいなもんだ」
料理できるかと聞かれて、「レモン水なら作れます」と答えたような気分だった。
「やれやれ……。そんなレベルで、あの化け物たちを止めようとしてたのか。無謀にも程がある。俺みたいな優秀な魔術師ですら止められないのに、前おみたいな初心者以下がどうにかできると思うか?」
彼は私を馬鹿にした。
悔しかった。でも、正論だった。
彼は大きく息を吐く。
「自分がどんな状況に巻き込まれてるか分かってるのか?」
私は首を横に振った。
「簡単に言えば、あそこで戦ってる怪物たちは“異世界”の伝説的戦士たちだ」
「あ……」
異世界?
あの、死んだ人間が転生したり、ファンタジー世界へ送られたりする物語の?
「信じられなくても事実だ。俺も最初は驚いた。異世界が本当に存在してたなんてな。しかも、この知識は魔術師社会ですら秘匿されてる」
彼は少し間を置いてから続けた。
私がちゃんと聞いているか確認するように。
「異世界で死んだ戦士たちは、“遺物”として現実世界に還ってくる。そして、生前その戦士が使っていた遺物を媒介にすると、召喚できるんだ」
混乱する。
情報量が多すぎる。
つまり、異世界の戦士たちは死後……現実世界へ戻ってくる?
じゃあ、“遺物”って何? 魔術師が召喚するの?
「理解できてないな? 要するに、お前は“生き残ることだけがルール”の秘密戦争に巻き込まれたんだ。“ゲーム・オブ・ウォー”って呼ばれてる」
「ゲーム・オブ・ウォー?」
ゲーム?
何のための?
こんなのゲームじゃない。大量破壊と殺戮じゃないか。
ゲームは楽しむものだ。成長するためのものだ。
誰が人を殺して楽しむの?
「待って……。あの怪物たちは召喚されたって言ったよね? 何のために?」
沈黙。
彼は答えなかった。
「俺にも分からない。なぜあんな戦士たちが現実世界に現れるのか。何の目的で、魔術師たちが異世界の亡霊を召喚するのか」
「じゃあ、どうしてあなたは召喚したの?」
「俺がラインハルトを召喚した理由は……兄貴の遺した手紙に、“召喚しなければ殺される”って書いてあったからだ。兄貴の仕事を継ぐなら、ってな」
「仕事って――」
その瞬間だった。
身体の内側に衝撃が走る。
圧倒的な気配。
私だけじゃない。冬夜さんも同じものを感じ取っていた。
私たちは同時に空を見上げる。
一人の男が、空中に立っていた。
次の瞬間、その男はこちらを向き――何の前触れもなく、視界から消えた。
「あっ――!」
私の目では追えない。
反応すらできない速さ。
次に聞こえたのは、冬夜さんの苦しげな呻き声だった。
男は冬夜さんの口を掴み、そのまま持ち上げていた。
男の視線は、冬夜さんだけを見ている。
死の感覚。
まただ。
あの感覚。
男が口を開く。
「貴様が、あの金髪の召喚者か?」
低く、冷たい声だった。
危険すぎる。
この章をお読みいただき、ありがとうございました!SodaKun Out ☆!




