新人
エゴ対エゴ対エゴ。この戦いの結果はどうなるだろうか?次に何が起こるだろうか?
この場を包む空気は、極限まで張り詰めていた。
ここはもはや普通の場所ではない。戦場だ。
これほどまでに圧倒的な破壊は、人類が生み出した兵器によるものでも、自然災害によるものでもない。
この惨状を引き起こしたのは、異世界から来た怪物たち。
人間と似た姿を持ちながら、人類すべてを合わせた力すら凌駕する存在たちだった。
その二人の戦士へ名を明かした乱入者――それこそが、三大陸を支配した王として世界中に名を轟かせた偉大なる王、ディケロスである。
「下郎が」
沈黙を破ったのはラインハルトだった。
彼からすれば、この若造など足で踏み潰せる虫程度の存在に過ぎない。
この場にいる中で最も古き存在はラインハルトだ。
英雄の中の英雄――人類文明の黎明期を生きた男である彼が、自分の死後に現れた未来の戦士たちを知らないのは当然だった。
だからこそ、この傲慢なる王はディケロスという男を認めようともしない。
だが、老人は違った。
彼はこの若き男と、その生涯に成し遂げた偉業を知っている。
間違いなく、この戦いにおける危険な強敵。
そして同時に、老人の推測も確信へ変わった。
黄金の王は、ディケロスよりさらに古い時代の存在なのだ。
「私は戦いに来たわけではない。貴様ら二人の力は見せてもらった。だからこそ、一つ提案がある」
ディケロスは落ち着いた声でそう告げる。
提案?
こんな状況で、一体何を言い出すつもりなのか。
若き筋骨隆々の王の笑みは消えない。
その威厳は、ギリシャ神話の神々の美しさすら思わせた。
「武器を捨て、我に従え。私の軍へ加わり、我が伝説の一部となれ。この世のすべてを征服する、我が腕となるのだ」
――あまりにも馬鹿げた提案だった。
再び沈黙を破ったのは、最初の文明を築いた王だった。
「ははは! なんという喜劇だ! 王を名乗りながら、まるで宮廷道化師ではないか!」
冷たい嘲笑。
だが、その傲慢な言葉もディケロスには届いていなかった。
ディケロスは文化を愛し、征服を愛した男。
生涯、一度たりとも敗北を知らない。
その存在そのものが“勝利”だった。
「断る。私も王だ。他の王の下につくなど……私は恥知らずな男だが、それにも限度がある」
老人は静かに提案を拒絶した。
どれほど名高い王であろうと、この世界では排除すべき障害に過ぎない。
それが老人の考えだった。
ディケロスは眉を上げる。
「面白い。まさか、この私と共に世界征服を成そうという提案を断る者がいるとはな。これは“誇り”の衝突だ。偉大なる王に仕えることを拒んだ、二人の英雄か! 実に愉快だ!!」
彼は豪快に笑い声を上げた。
どの視点から見ても、状況は最悪だった。
三人の王による決戦へ発展するのか。
誰が“真の王”なのかを決める戦い。
それは王としての誇りの問題。
ラインハルトは、宇宙最強を証明しようとする戦闘狂。
老人は、謎の目的を持つ歴戦の戦士。
ディケロスは、日本をその手に収めようとする征服王。
彼らの欲望は交わらない。
戦いは避けられなかった。
だが――誰も動き出す前に。
「覚悟しろ!!」
聞き覚えのない声が響いた。
この戦場と化した場所にいる誰の声でもない。
声は彼らの頭上から降ってくる。
一瞬、ドラキュラが復讐のため戻ってきたのかと思われた。
だが違う。
新たな乱入者だった。
空中へ浮かぶ男は、非常に背が高い。
肩幅は広く、腕は人間離れした筋肉を誇っている。
短く刈り込まれた黒髪に、太く整えられた口髭。
鮮やかな深紅の軍服のようなものを身にまとっていた。
異質な存在――だが同時に、それほど重要には見えない。
なぜなら、この男は彼らのような異世界戦士ではない。
ただの魔術師だったからだ。
「虫けら風情が、私を見下ろすだと?」
「人間……か」
「おおっ! 空を飛んでるぞ!」
それぞれの反応は、ラインハルト、老人、ディケロスの順だった。
英雄の中の英雄にとって、人間ごときが自分より上空に立つこと自体が侮辱だった。
老人は驚かなかった。
だが、彼の感覚は告げている。
この男は普通の魔術師ではない。
確かに人間だ。
しかし、その肉体構造も、周囲に漂う空気も――明らかに異常だった。
「何者だ?! 客人の振る舞いではないな。王たちの戦いを邪魔する客は敵だ」
皮肉なものだ。
最初に決闘へ割って入った男が、別の乱入者へ同じことを言っている。
老人は内心で思う。
――こんな男が、どうやって三大陸を征服したのだろうか、と。
男は、三人の英雄たちを見下ろしながら口を開く。
「異世界戦士ども。貴様らは獣だ。戦いと流血しか興味がない……止めることもできない。獣とは、召喚主に従っている時だけ価値がある。この破壊こそが、貴様らの正体――ただの殺戮兵器である証明だ」
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