征服者ディケロス
戦いを乱すこの騎手は一体誰だ?! なんと威厳のある姿だ! 読んでみよう!!
二人の偉大な英雄の決闘に、何者かが割って入った。
極限まで高まっていた戦いを邪魔したその乱入者へ、二人の視線が向けられる。
その男はとても若く見えた。見たところ、年齢は二十歳ほど。まるでモデルのように整った、美しい青年だった。短く燃えるような赤髪は、夜の闇の中でも炎のように鮮やかに映える。口元には大胆な笑み。
そして、彼をより異質に見せているのは――その肉体だった。筋骨隆々とした鋼のような身体。
彼はギリシャ青銅時代を思わせる青銅の鎧を身にまとい、赤い毛皮のような質感を持つマントを羽織っていた。これほど逞しい肉体を持ちながら、その顔立ちはあまりにも美しい。
この場へ現れた青年は、「力強さ」と「美しさ」を併せ持つ男だった。
彼を乗せている馬もまた、主に相応しい軍馬の装飾を施されていた。
馬はゆっくりと歩みを止める。
青年は両腕を広げた。まるで、これから語りかける相手が長年離れ離れになっていた戦友であるかのように。
「時空を越え、現実世界へ召喚された友よ! 召喚されたその日に、これほど素晴らしい闘志を持つ者たちに出会えたことを、心から嬉しく思う! 私は、この無意味な決闘を止めに来た!!」
彼は獅子のような咆哮でそう叫んだ。
その堂々たる話し方は、まさに王そのもの。歩き方一つ取っても、王者の風格を漂わせている。
ラインハルトの冷たい瞳が、自身の人生で最も高揚していた瞬間を邪魔した男へ向けられる。
「くだらん時間の浪費だ。貴様のような下郎が、この瞬間に割って入るとはな。死をもって償うべき罪だ」
ラインハルトは冷酷に言い放った。
老人は深くため息をつく。
まったく、とんでもないタイミングで首を突っ込んできたものだ。
「同感だ。お前は何者だ? どんな戦士なんだ?」
老人は青年へ問いかける。
だが、その乱入者は不思議そうな顔を浮かべた後、にやりと笑った。
「おっと、名乗りを忘れていたな。王たる者、自ら名を明かすのは当然の礼儀だ!」
青年の豪快な笑い声が、街中へ響き渡る。
その言葉に、黄金の王は殺気を込めた視線を向けた。
この愚か者が、自分のような偉大なる王を“臣下”扱いしたことが、到底許せなかったのだ。
「随分と無礼な舌だな。下郎に品格を期待した私が愚かだった。貴様が王だと? この世に王は一人しか存在しない――それは、この私だ」
青年が二人を臣下と呼んだことで、老人の眼差しにも冷たさが宿る。
「私は自分の歴史を嫌っている。だが、それでも誰かに仕えるつもりはない。私もまた王だ」
老人は静かに告げた。
その言葉に、赤髪の青年は眉を上げる。
奇妙な偶然だった。三人とも、それぞれの時代で王だったのだ。
異世界から来た三人の戦士は、全員が王。
「誤解しないでくれ。私は二人を侮辱するつもりなどない! だが、ここに三人の王がいる以上、誰が頂点かを示すには名を明かすしかないだろう! さあ、私の名を聞いて、貴様らが知っているか試してみるがいい!!」
その考え自体は間違っていない。
同じ地位に立つ者同士――たとえば三人の大統領がいたとして、その中で格を示すには、自らの名と歴史を語るしかない。
だが同時に、それは自分の弱点を晒す危険な行為でもある。
「我が名はディケロス! すべてを征服せし者だ!!」
若きディケロスは、天へ向かって名を轟かせた。
その名を聞いた二人の英雄は、まったく異なる反応を見せる。
ラインハルトにとっては初めて耳にする名だった。
そもそも彼は、この歴史の中でも最古に位置する王。だから、この若造の名など塵にも等しい。
だが、老人は――
「まさか……」
信じられないものを見るように目を見開いていた。
この青年は、老人と同じ時代の人物なのか?
いや、違う。老人が生まれるより、実に八百五十年も前に死んだ人物――それが、このディケロスという男だった。
「その名はアヴェスター文明の民から与えられたものだ! 本当の名は……母ですら私に名を与えなかった。だから私は、自らの手で名を勝ち取った!」
黄金の英雄は、嘲笑を込めて笑い始める。
ディケロスを、愚かな道化でも見るかのように。
「実に傑作な冗談だ。笑いすぎて涙が出そうだぞ、自称の王よ」
この黄金の戦士にとって、自分以外の存在はすべて格下。
この男もまた、取るに足らない愚か者に過ぎない。
ディケロスは、自分を嘲笑する黄金の英雄へ視線を向けた。
「何がおかしい? 王とは、自ら名を明かすものだろう」
「私が笑っているのはな、貴様のような弱き支配者が、なぜ異世界戦士になれたのかということだ。今では誰でも資格を得られるほど、基準が落ちたのか?」
ラインハルトの言葉にも、ディケロスは怒らなかった。
それも当然だ。彼は、自分の死後に何が起きたのか知らない。自分が歴史書に残ったのかどうかすら、分からないのだから。
「信じ難い……お前が、あのディケロスだとは」
老人のその言葉に、ディケロスの顔へ笑みが浮かぶ。
「私を知っているのか!?」
老人は静かに頷いた。
こんな男を知らぬ者などいるものか。
三つの大陸を征服した王。
その名が歴史から消えることなどあり得ない。
――ディケロス・ザ・ゴレミオト・オスヴァユヴァツ。
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