まなかからの視点
物語は主人公の視点から続きます。私のシリーズの主要キャラクター2人の会話です!
すべてが血に染まっていた。私はどうにか、生き延びることができた。さっきの攻撃で、多くの野次馬たちが命を落としたというのに。これは――十年前よりも酷い地獄だ。あの人たちの血が、私たちの上に降りかかっている。髪は真っ赤に染まっていた。
「なっ――?!」
それが、私が助けた人物の第一声だった。どうしてなのか、自分でも分からない。私たち二人が死ぬ未来を、私は知っていた。だから、その運命から逃れることができた。
立ち上がろうとしたけれど、足に力が入らない。
周囲を見た瞬間、胃の中がひっくり返りそうになった。吐き気が込み上げてくる。
先に立ち上がったのは、冬夜京太郎だった。彼は私の腕を支え、立たせてくれる。
「どうやって……?」
彼が問いかけてきた。
「どうやってって……何がですか?」
「どうして分かったんだ……。あの時、伏せなかったら、俺たちもあいつらみたいに死んでたって」
彼は地面を指差した。
そこには、一般人たちの血肉が散乱していた。臓器、骨、皮膚――バラバラになったそれらが視界に映るだけで、気分が悪くなる。恐怖で、体が震えていた。
「分からないんです」
「……は?」
「私にも分からないんです! どうして伏せなきゃ死ぬって分かったのか!」
「でも……どうして俺の名前を知ってる? 名字で呼んだよな?」
それは、私自身にも説明できないことだった。頭の中で、さっき見た光景が何度も蘇る。私と彼が一緒に死んだ、あの未来。未来視?そんな馬鹿な。でも、あまりにも現実的だった。あの光景は、本当に“起こった”ように感じた。
「どう答えればいいのか分かりません、冬夜さん。でも……今は何とかしないと!」
私はそう言った。
三鷹市で破壊が起きている。建物は焼け落ち、学校は完全に崩壊していた。あの化け物たちは何なの?あんな力、人間の範囲を超えている。魔術師?そんなはずがない。私は今まで、あれほど大規模な破壊を起こせる魔術師なんて聞いたことがない。
冬夜さん――私が死の運命から救った男は、そっと私の肩に手を置いた。
「俺たちには何もできない。俺たちは魔術師だが……戦ってる奴らは、魔術師の限界を超えてる。こんな破壊、止められない」
その言葉に、私は目を見開いた。
足が震える。息が苦しい。涙が溢れてきた。悪夢から覚めたい。こんなの認めたくない。私は、普通の日常を失った。学校も、友達も――
「いや……いや、お願い……冗談だって言ってよ。そんなの、あまりにも酷い……。アロ……!」
私はその場で泣き崩れた。
私を愛してくれた人。ありのままの私を受け入れてくれた、たった一人の人。全部失った。私は今日、全てを失った。友達も、日常も、そして何より――愛する人、アロを。
「離してください!!」
私は壊れた学校へ向かって走ろうとした。だが、冬夜さんが私の手を掴む。私は叫び続けた。
離して!もう生きていたくない!
「馬鹿かお前は?! 危険すぎる! 相手がどんな存在か分かってないだろ! 頼むから、ラインハルトが勝ってくれることを祈れ!」
「ラインハルト……?」
涙で濡れた目で、私は彼を見つめた。
「初心者の魔術師か。身体強化すらまともに使えないんだな。ああ、そうだ」
私は魔力の技術を、本格的に学んだことがない。父は魔術師だった。そして、私はその弟子だった。けれど――私たちの関係は最悪だった。父親としても、師としても、あの人は失格だった。
冬夜さんはため息を吐く。
「その状態で敵を倒そうとしてたのか……。自殺願望と変わらないぞ。敵が何者かも、どれだけの資金や力を持ってるかも分からないまま戦うのはな、“敵の庭で戦う”ってことだ。つまり、死ぬ」
「じゃあ、どうすればいいんですか?! もう私の人生は終わったんですよ! あの時間、学校にいた生徒はみんな死んだ! あなたには私の痛みなんて分からない!!」
私は彼に怒鳴った。
感情が抑えられない。胸の中で、何もかもが溢れ返っていた。
「少しは落ち着け、このガキ!! お前も魔術師だろうが! その在り方を侮辱するな! 死を経験せずに魔術師にはなれない! 俺だって家族を全員失った! 魔術師にとって、死は世界を守るための日常なんだよ!!」
冬夜さんも怒鳴り返した。
「だから黙れ! 戦ってる奴らは普通の存在でも、魔術師でもない。異世界の戦士だ。あいつらの力は、俺たちの理解を超えてる。だから黙ってラインハルトを信じろ!」
冬夜さんは冷静さを失っていた。
私も、あんな言い方をするべきじゃなかったのかもしれない。
「ラインハルト?」
「ほら、あの金髪の男が他の二人と戦ってるの見えるだろ?」
「どこですか?」
私は必死に三人の姿を探した。けれど、見えるのは崩壊していく建物だけだった。
「そうか、初心者だから見えないのか。まともな魔術知識もないんだな。名前は? 父親は誰だ?」
私は唇を噛んだ。
忘れたかった記憶が蘇る。魔術という名目で、私の人生を壊した男。心の底から憎んでいる人間。あの人の名字を名乗るだけで、嫌悪感が込み上げる。養女として与えられた、その姓。
「私の名前は小山まなかです。父は――」
その瞬間。
遠くから、馬の駆ける音が聞こえた。
「馬……?」
「馬?」
私たちは同時にそう呟いた。まさかと思った。でも、その予想は正しかった。一頭の馬が、凄まじい速度で私たちの横を駆け抜けていく。騎乗している人物がいた。その馬は、まるで中世の騎馬のように古めかしい装飾を施されていた。
「まさか……また異世界の戦士?!」
この章をお読みいただき、ありがとうございました!SodaKun Out ☆ !




