三つ巴の戦い(4)
三つ巴の戦いの決着が近づいている!勝つのは誰だ?!悲劇の理想王、ドラキュラ、それともラインハルト?!
ドラキュラにとって、状況は一変していた。先ほどまで最も弱い存在だったのは老人だった。だが今は違う――彼が握るその剣によって、不利な立場に立たされたのはドラキュラの方だった。聖剣から放たれる神聖な力。それは夜の怪物にとって、まさしく天敵。たとえ一太刀かすっただけでも、死に等しい激痛を味わうことになる。ドラキュラは本能でそれを理解していた。老人もまた、ドラキュラの表情の変化に気づいていた。直感が告げている。この三つ巴の戦いで、最初に死ぬべきはドラキュラだと。そんな確信にも近い感覚を抱きながら――
「騎士として、お前のような化け物を世界に野放しにはできん。塵となるのは――お前だ」
老人は殺意を込めて言い放った。もはや誰一人として、彼の言葉を虚勢だとは思わない。聖剣が現れた瞬間、この戦いの優劣は完全に覆っていた。今や、何が起きても不思議ではない。
老人は夜の怪物へ向かって空中へ跳躍した。
その身体の動きは異質だった。他の戦士たちとは違う。この老いた戦士だけは、何かが根本から異なっている。理由は不明だが、彼はマナを自身の肉体へ流し込み、限界以上に身体能力を強化していた。
この技術は――“マナ強化”。マナを外へ浪費するのではなく、自らの肉体へ循環させる技法だった。例えるなら、食事をした後に一切の排泄物を出さず、すべてを栄養へ変換するようなもの。マナを一滴たりとも無駄にしない、完全循環の技術。
「死ね!!」
老人はドラキュラへ向けて聖剣を振り下ろす。
だが、この未知の技術を用いたとしても、速度ではなおドラキュラに及ばない。しかし――
「ぐあぁぁぁぁッ!!」
ドラキュラが苦痛の声を上げた。
刃は髪一本すら触れていない。それなのに、まるで全身を焼かれているかのような激痛が襲ってくる。何だ、この力は。聖剣の神聖さか?それとも剣そのものの性質か?ドラキュラが一瞬怯んだ隙を、老人は見逃さなかった。聖剣がドラキュラの腹部を斬り裂く。
「ァァァァアアア!!」
絶叫。激痛に耐えきれない。続けざまに老人の蹴りが炸裂し、夜の王は地面へ叩き落とされた。
「これを避けられるか!!」
ラインハルトの身体には興奮が駆け巡っていた。まるで新しい玩具を与えられた子供のように。何年ぶりだろうか。これほど胸を躍らせる戦いは。
ラインハルトは黄金の棍棒を振り下ろした。だが老人は聖剣でその一撃を受け止める。次の瞬間、老人の拳がラインハルトの顔面へめり込み、彼を別の建物へ吹き飛ばした。
「なるほど……拳はさらに重くなったか」
ラインハルトは血を吐きながら呟く。
立ち上がった瞬間、老人はすでに目の前へ迫っていた。視界で捉えずとも分かる。
圧倒的なマナの存在感。
「捕まえたぞ!」
ラインハルトの拳が老人の顔面を貫き、鼻骨を砕く。老人は吹き飛ばされ、その先にはドラキュラが待っていた。
「お前の正体、分かったぞ」
吸血鬼の王としての威厳は、もはや崩れ去っていた。神聖な剣によって衣服は焼け焦げ、かつての優雅さは失われている。
「ほう? こんな恥知らずの男が歴史上の人物になっているとはな」
老人は冷たい声で返した。
誰かに正体を知られることを、彼は心底嫌悪していた。
ドラキュラは笑う。
「聖剣を持つ者を誰が知らぬ?我が国でも、お前の伝説は語られていた。かつて我が祖国は、お前の支配下だったのだからな」
「そんな国から、お前のような存在が生まれたことを恥じるよ」
「俺が国を征服した時、民は皆お前の英雄譚を口にしていた。俺はてっきり、おとぎ話だと思っていたよ」
「そうであってほしかったさ」
老人はこの会話を不快に感じていた。
自分自身のすべてを嫌悪している。自らの伝説など、ただの作り話であれば良かったと。こんな恥知らずな男には、何一つ相応しくない。
「完璧すぎた王。誰も届かなかった理想の王。一度も敗北を知らなかった男。だが理想を追い続けた末に、自らの国を滅ぼした王――。完璧であることも、また呪いなのかもしれんな」
ドラキュラは嘲笑した。
「すべてを失い、孤独に死んだ王。誰にも看取られず、自らの民に裏切られた男。忠実な臣下に裏切られた、完璧なる英雄――」
老人の瞳には何の感情も宿っていなかった。もはや気にしていない。彼はとうに、自分を恥じることすらやめた男だった。
ドラキュラは、老人が背負った悲惨な運命を嘲笑い続ける。
「お前は――」
「黙れ」
その言葉を遮ったのは、黄金の戦士だった。
「言葉など不要だ。二人とも実に素晴らしい。俺は長い間、こんな愉快な時間を待っていた。さあ――始めようではないか!!」
その宣言を聞き、三人は理解した。今この瞬間が、勝敗を決する時だと。
「行くぞ!!」
「来い!!」
「終わらせる!!」
三者の叫びが重なる。この戦いの決着は、ほんのわずかな差によって決まる。
「最弱から退場だ!!」
ラインハルトが狙ったのは、意外にもドラキュラだった。
聖剣による攻撃で弱体化していたドラキュラは、不意を突かれる。
ラインハルトの蹴りが炸裂。
その隙を逃さず、老人の聖剣が振るわれる。次の瞬間――ドラキュラの右腕が宙を舞った。
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