三つ巴の戦い(2)
戦いが始まっているのか?!この老人は一体誰だ?!なぜ王のようなオーラを放っているのか?ドラキュラがトップだ!!
黄金の王――その手に戟を握る男は、老戦士へ向けて容赦なく突きを繰り出していた。だが老戦士は理解していた。この黄金の王は近接戦闘こそ可能だが、技術が足りない。武器は扱える。だが、本当の意味で使いこなしてはいない。その一撃一撃は、歴戦の戦士である老人の目にはあまりにも読みやすかった。
老人の脚が鋭く跳ね上がる。次の瞬間、顎を狙った致命的な蹴りが放たれた。その瞬間の反射で、ラインハルトは腕を前に出して蹴りを防ぐ。しかし、その衝撃は重かった。ラインハルトの身体は踏ん張りを失い、足元から大きく崩れる。二人の戦士は互いを見据めた。老人から放たれている気配は、ラインハルトと同じだった。王者の風格。絶対的な威圧感。
「悪くないな。力は互角だ。だが、速度と持久力では俺に分があるようだ」
老人は黄金の王を称賛した。
その言葉に、ラインハルトは愉快そうに笑う。黄金の瞳には、この老戦士よりも遥かに長い時が宿っていた。
「どうやら俺を舐めているようだな、老いぼれ。現代の人間だと思ったのか? この服を着ているからといって、勘違いするな」
王は誇らしげに言い放つ。世界のあらゆる快楽を味わってきた王のように。
「失礼した。見た目と時代が一致しなかったものでな。騎士として、年長者である貴方に謝罪しよう」
老人の口調が変わる。穏やかな声で頭を下げた。ラインハルトは思わず目を見開いた。しかし同時に、目の前の男が自分の自尊心を満たしていることも理解していた。
「知っているか? 俺はこの現実世界を楽しんでいる最中なんだ。異世界では数年間、数え切れない冒険と試練を経験した。だが……ある時から挑戦者がいなくなった。気付けば、俺が最強だった」
それは老人にとって重要な情報だった。もし本当に、自分より遥か昔の時代の戦士なら――この黄金の男の正体にも心当たりが生まれる。
ラインハルトは高笑いした。
「これは第二の機会だ! 異なる時代から来た俺たちは、現実世界へ召喚された! 新たな挑戦者を見つけ、この俺が最強の異世界戦士であることを証明するためにな!」
傲慢と誇りに満ちた声。英雄の中の英雄、ラインハルトはあらゆる挑戦を歓迎していた。
老人は一切の躊躇いなく拳を突き出す。それをラインハルトは受け止めた。いつの間にか、彼の手から戟は消えている。どうやら、これからは拳の勝負らしい。
両者の膂力は互角。まるで同じ力同士がぶつかり合っているようだった。だが、身体構造という差が存在する。老いてなお脆そうな身体でありながら、歴戦の戦士はラインハルトの拳を真正面から受け続けていた。一方のラインハルトは、相手の拳をまともに受けるたびに身体を揺らしている。黒いジャケットは、老人の拳圧によってボロボロに裂けていった。
「異世界の者たちを、この現実世界で自由にさせるわけにはいかない。貴様たちの娯楽のために、どれだけの罪のない命が失われると思っている」
ラインハルトの口元が歪む。次の瞬間、彼の右手にメリケンサックが現れた。一直線の拳撃。老人は吹き飛ばされ、崩壊した校舎の中へ叩き込まれる。
さらに今度は、ラインハルトの両手に二本の日本刀が現れた。一本は長く、もう一本は短い。彼は一気に老人へ迫る。
「最高だ!!」
歓喜がラインハルトの全身を駆け巡る。何年ぶりだろうか。本気を出せる相手。全力をぶつけられる敵。校舎内へ飛び込んだラインハルトの短刀が閃く。老人は間一髪で回避した。だが次の瞬間、長刀が顔面へ向けて突き出される。防ぐため、老人は咄嗟に左手を前へ出した。刃が左手を貫く。
「この戦いで、最初にお前を流血させたのは俺というわけだ。危険な受け方をしたな」
ラインハルトは嘲笑する。だが老人にとっては、腕を犠牲にする方が死ぬより遥かにマシだった。
「それこそが狙いだ」
その言葉に、ラインハルトは眉をひそめる。
老人の拳が炸裂した。凄まじい一撃がラインハルトの顔面へ叩き込まれる。地面が崩れ、砕け散った。老人は即座に距離を取る。
もしあと一瞬遅れていたなら、突如ラインハルトの手に現れた三叉槍が、彼の心臓を貫いていただろう。何度も死を潜り抜けてきた。
「外へ出るべきだ。この建物では動きが制限される」
老人は小さく呟く。
幾重もの階を突き破り、外気のある夜空へ飛び出した。――だが、そこにはさらなる驚きが待っていた。ドラキュラもまた、空中にいた。闇そのもの。月光の下における究極の捕食者。
「血と命を捧げろ」
その冷たい声に、老戦士の身体が震えた。言葉そのものではない。問題は、ドラキュラから溢れ出した膨大な魔力。切り札を使う気だ。骨が砕ける音。肉が裂ける音。
それらが響き始める。ドラキュラは己の切り札を解放しようとしていた。
「我が血塗られた命をここに捧げる――魔王の血の命」
その瞬間、ドラキュラの身体が爆ぜた。骨も、肉も、空気も、内臓すら――。すべてが体内から弾け飛んだ。
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