表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
記録されない落下者 ~世界の外側から来た存在~  作者: 黒谷レイ
異変

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/34

第二十九話 退避

地面の揺れが、はっきりと分かるようになっていた。


最初は気のせいかと思った。だが違う。足裏を通して、断続的な振動が伝わってくる。第三層の通路の奥から、何かが押し寄せてくるような重い揺れだった。


周囲の冒険者も気づき始めている。


誰かが奥の暗がりを睨み、武器を構え直した。


その直後だった。


通路の奥の影が動く。


最初は一体、二体。


すぐに、それが数ではないことが分かった。


ゴブリン。


それも、群れ。


通路の奥から、押し出されるように現れる。次々に姿を現し、数が増え、あっという間に視界の奥が緑色で埋まった。


明らかに異常な数だった。


一瞬、通路の空気が止まる。


その沈黙を破ったのは、ダインだった。


「集まれ!」


盾を構えたまま、声を張り上げる。


近くにいた冒険者たちへ向けて。


「散らばるな!」


さらに奥の群れを見て、吐き捨てるように言った。


「あの数は無理だ!」


戦える数ではない。


近くの冒険者たちが、自然と動いた。離れていたパーティが、少しずつ距離を詰める。


だが、誰も「協力しよう」とは言わない。


それぞれのパーティが、それぞれの位置で武器を構える。


ただ、固まっているだけだ。


ゴブリンの群れが迫る。


前に出たパーティが迎撃を始めた。


カナトは短剣を握り直す。すぐ隣で、グランが斧を肩から振り下ろした。


最前列のゴブリンが吹き飛ぶ。


その足元を、カナトが踏み込む。地面に意識を落とす。


わずかな揺れ。


足場が崩れる。


バランスを崩したゴブリンの首に、短剣を滑り込ませる。


横では、別のパーティが応戦している。槍が突き出され、剣が振り下ろされる。後方からは矢が飛び、回復の光が瞬く。


灰狼団も同じ集団の中にいた。


ダインが盾を前に押し出し、クレスが横から剣を差し込む。後方でセラが回復を回し、少し離れた位置からリアナが弓を放っていた。


一瞬、セラと目が合う。


だが、すぐに視線は戦場へ戻る。


ゴブリンは止まらない。


前を倒しても、すぐ次が来る。


押され始めているのは明らかだった。


そのとき、リアナの声が響いた。


「右側」


全員の視線が動く。


通路の端。壁際。


ゴブリンの密度が、ほんの少しだけ薄い。


その先に、通路が続いている。


リアナが短く言う。


「抜けられそう」


ダインがすぐに判断した。


「行くぞ!」


盾を押し出しながら叫ぶ。


「こっちだ!」


近くにいた冒険者たちにも声を飛ばす。


固まっていた集団が動いた。


戦いながら、右側へ寄る。


前が押し、横が斬り払い、後ろが追撃を止める。


誰かが指示したわけではない。


だが、全員が同じ方向へ動いていた。


ゴブリンを押し退けながら、壁際へ進む。


通路が見える。


狭い。


だが、抜けられる。


ダインが盾で前を押し開く。


「走れ!」


誰かが叫んだ。


その瞬間、集団が一斉に動いた。


冒険者たちが、通路へ流れ込む。


背後では、ゴブリンの群れが押し寄せてくる。


足音。


怒声。


金属音。


混ざり合う音の中で、カナトは走った。


狭い通路へ、全員がなだれ込む。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ