巫琴が呪文
♢
「それじゃあ、お二人の剣と斧に魔法をかけますね」
「ああ。頼む」
「よろしくな」
「でも、巫琴ちゃん。どうしてこんな朝早くに、こんな人気のない場所に来たの?」
「いや。危ないかと思いまして」
「どうしてだ? またあいつら魔物が出ると思ったんなら、あのあとすぐにの方がよくなかったか?」
「いや……。そうではなく、威力の方が心配で」
「その威力が心配というのは、不足という意味でか?」
「いや……。そうではなく、逆に威力があり過ぎたら困るかと……」
「そんなことがあるのか!?」
「はい……。たぶんですが……。アーサー様もライムさんも、一度試しておきますよね」
「それは……そうだな」
「そうしておいた方が、あとの心配がなくなる」
「ですよね……」
「なんだか、巫琴ちゃんから、そんなこと言われると怖いわね」
「なにせ、ワタシが最初に思った。不足ではなく、あり過ぎるだからな」
「なんにせよ、威力があり過ぎて困るなんてことはなかろう」
「そんなに簡単に考えていいの、アーサー」
「わからん。そのときはコントロールするまでだ」
「どちらにせよ、そのときはワタシたちでどうにかするしかないだろうな」
「あぁ……」
「では、アーサー様から剣を貸してください」
「頼む」
「では……集中しますので、少しお静かにお願いします」
アーサー様の剣のイメージ……。
「ΦΨδζηρσξψБЖДЧЩж……」
「巫琴が、呪文!?」
「驚くのはわかるけど、静かにしないとダメよ、アーサー」
「ЩжЧδζψЖξΨБ……」
「ハイ。できました!」
「わかった……。ありがとう。なんだか、少しパワーを感じるな」
「あぁーー。それはたぶん、魔法をかけた直後だからではと」
「そうか。ときに巫琴。さっき珍しく呪文を唱えていなかったか?」
「呪文? そーーですか。あたし、凄く集中していたので、自分でも気がつきませんでした」
「そうか……。そんなこともあるんだな」
「では、次はライムさんの斧を貸してください」
「あぁ。頼んだぞ」
「では……」
ライムさんの、斧のイメージ……。
「ΦΨδζηρσξψБЖДЧЩж……ЩжЧδζψЖξΨБ……」
「ハイ。完了です!」
「本当に、なにか底知れぬパワーを感じるぞ……」
「そーーですかぁーー。だったら成功かもですね」
「ところで巫琴。鞘から剣が抜けんのだが」
「あぁ。それはですね。剣を抜くときの言葉を決めました」
「なんだ。その言葉というのは」
「はい。剣を抜くときには、こう言ってください」
「我が名は、アーサー。正義のために、いざ参らん。こうです」
「それは……なんだかちょっと恥ずかしいな……。変えなれないのか?」
「う~ん。無理ですね。たぶん……。かなり集中して、強い魔法をかけちゃいましたから」
「そうか……。なら、仕方ないな」
「でも、イイじゃない。ちょっと前のあなたみたいで」
「からかうな、エミリ」
「ワタシのも、そんな言葉をかけなければいけないのか」
「いえ。ライムさんのは、最初に話したとおり、普通に旋風刃の掛け声だけで大丈夫です」
「そうか。なら安心した」
「それじゃ、あの村から、こんな辺ぴな場所まで来たんだから、二人とも一度その威力を試してみないとね」




