Chu!!さぼり気味でごめん♪ 第十六章
第十六章 到着、そしてひと時の休息
ミヤの目に反射する色のほとんどはは蒼と白で構成されていた。
それもそのはず。なぜなら、ミヤの眼前に広がるのは水の都。
竜宮城のように蒼瓦と漆喰で塗り固められた立派な建物が立ち並び、その様はまるで自分が水中にいるようであった。白の岩でできた石畳の脇には水路があり、どちらの道にも多くの人々と船が行きかっている。
そして、上には竜宮城らから吹き上がる湯気のと雲一つない蒼穹で塗りつぶされ、下にはどこまでも広い海と白銀の砂浜。
暴力的なまでに美しいそこはまさしく現世の桃源郷であった。
そして、ミヤもまたその美しさに目を奪われたものの一人であった。
いや、ミヤだけではない。高に吹雪、風牙、燈、和夜。ミヤとともに来た仲間たち全員が息をのみ、美しき光景を目に焼き付けた。
あの総会から今日で三日が経つ。
総会が終わってからミヤたちは次の日の朝に鏖妖組の屋敷から旅立ち、約二日の陸路を進んだのち、今回の目的地であるこの水の極楽へとたどり着いたのであった。
ちなみに、旅路では文庫換算60ページほどの紆余曲折がなかったこともないが、尺と中の人のやる気によりカットさせてもらう。
「お~!久しぶりに来たけどやっぱりきれいですね、ここ」
最初に言葉を発したのは風牙であった。
ちなみに、今回の旅でも基本的に風牙と燈が話の起点となって積極的にコミュニケーションを取ってくれ、口数の少ない残りの野郎二人と、基本的に聞き役の吹雪、そしてすべてが初めてだらけで会話どころでなかったミヤは大いに助かった。
「……えっと、ここが?」
「はい!ここが今回の目的地。日の輪一の観光地、水の都です」
ミヤは念のためここが到着なのか問うと、旅の時よりも二割り増しくらいにテンションの高くなった風牙がそう答えてくれた。
「……んん。あー、じゃあ、これからこの町の当主に会いに行くからみんなついてきてくれるか?」
そこに満を持して口を開いたのは高。
小さいながらも芯のある咳払いに皆の意識が向く。
そして、皆一様に趣向の意を示し、一団は当主の経営する一番大きい旅館へと歩を進めた。
その旅館へ到着し、代表して高が受付に事情を話すと、やがて全員が奥の応接間に通された。
「ああ、ああ、鏖妖組の方々。ご到着を首を長く、長く、長く長く長くして待っておりました」
様々な調度品で埋め尽くされた洋室には、すでに男がいた。この人の好さそうな初老の男性がおそらくこの都を統べる当主なのだろう。仕草や服装など至る所からその育ちの良さが漏れ出ていた。まあ、話し方からそれ以上の曲者感があふれ出ていたが。
「ささ、ささ、立ち話もなんなんですからこちこちらに」
そこで、男は応接間の真ん中に退治する王にして鎮座する二つの大きなソファに腰かけることを進める。流石に六人で座るほどの広さはなかったため、代表して高と風牙が腰を下ろし、それを見届けた男も反対側のソファに座る。
「おっと、おっとおっとおっと、自己紹介が遅れましましたなたな。私は水川泉 ここ、水の都を収めているものものです。以後、お見知り知りおきを」
「ああ、こちらからもよろしく頼みます。俺は神野内高。鏖妖組の頭取です。そして、こっちは……」
「副頭取の風牙です。よろしくお願いします!」
「はい、よろよろしくしくおねがいししまますね」
互いに挨拶をすると、ついに本題に入る。
「………それで、依頼内容についてなんですが……?」
「はい。はいはいはい。そのそのことなのですですが……。最初にそれが出た出たのは二週間程程前だったと思思います。その頃頃からやけやけに行方不明不明者者が増えましてなななな。……そしてそして、五日前、ついついに、そのその、なんなんと言い言い言いましょう……人間間ではできないようような傷つけられられ方をしたした、遺体が見つ見つ見つかりましましてな。それそれで、依頼頼した次第となりますますます」
(まったく話が入ってこない……!)
ものすごく真面目で絶対に聞いておかないと行かない話のはずなのだが、当主の明らかにおかしいしゃべり方でなんかネタっぽく聞こえるし、全く内容が入ってこないミヤであった。
一応、『話聞いてますよ!』みたいな感じでキリっと後ろで立っているのだが、何か聞かれたら詰むやつであった。ちなみにそんな間にも高たちの問答は続き、そのたびに当主の狂ったトークが火を噴いた。
「……ふむ。わかりました。では、これから早速都の方に、情報を集めていきたいと思います。出来るだけ、早く祓うのでどうか安心してください」
「はい。はいははははい。本当当当にありがとうとうとうございます。……しかし、皆さんさんさん、旅でお疲れでしょしょしょしょしょう。今日今日今日のところはこの宿で休んでくださいさいさい」
(え、今私たち気遣われた?)
相も変わらずバグった口調であったため、まともなことを言っているように聞こえないのだが、言っていることは至極真っ当でなんなら、普通の人よりも良心的であった。
「いえ、俺らの心配は大丈夫ですよ。異能使いは基本的にタフですから」
「でも、でもでもでも、今回の妖は強強強強いんでしょう?なら、一旦旦旦旦体を万万全にしてからから妖に挑んだほうほうが良い良いと思い思いますますが?それに、我が我が我が都の温泉は日の輪一一です。どんな傷傷傷でもたちたちどころに治りますます」
当主に押しに押され、やや苦笑いを浮かべる高はちらりと隣の風牙とアイコンタクトを交わし
「じゃあ、お言葉に甘えて少し休ませてもらいます。ご厚意、本当に感謝します」
「いえいえいえいえいえいえいえ、ではでは、皆様の部屋へと案内しましましょう。さささ、こちらへ」
(あれ?話の内容全く理解できないまま話し終わってた!?)
口調以外は全てが人として最上級だというのに……本当に残念な人である。
やや湿っぽい空気と女性特有の甘い匂いが部屋の中を満たす。
「わあ~、吹雪。ほんとに大きいよね、おっぱい」
「ん~?そうかしら~?」
そう、ここは女子脱衣所。全男未踏の乙女の園である。
当主の押しと癖の強い休養の勧めのより鏖妖組一行は全員温泉を満喫することとなった。
ちなみに、こんな昼間っからお風呂に入る人はミヤたち以外い内容で貸し切り状態である。
ミヤは初めての旅で大分疲れていたため願ってもないことで、すぐ入ろう今入ろうとやや急ぎ目で衣服を脱いでいたのだが、吹雪の携える二つの核兵器級のモノに目を奪われていたのだ。
吹雪と会ったその日に一度風呂を共にしたこともあったが、その時はあって日も浅い、というか数時間しかたっていなかったためあまりじろじろ見るのは失礼かとやや目をそらし気味であったのだが、こうして中を深めた今、よく見てみるとそれはそれは立派なものであった。
大きいだけではなく、張りがあり垂れていないのもポイントが高い。すべての女性が目指すお手本のようなおっぱいである。
と、おっぱいにばかり目が行ってしまっていたが、改めて吹雪の体全体を見ると、肩や首元などにいくつか赤い斑点があることに気が付いた。
「あれ?吹雪、それ大丈夫?痛くない?」
「え……?………ぁ、あっ!こ、これはね、別にいたくはないから大丈夫よ?ね!?」
何故か尋常じゃないくらい慌てる吹雪。
ミヤが首をかしげる中、そこで、手ぬぐいを忘れたとかで部屋の方まで取りに帰っていた燈が戻ってきた。
「どうしたの、二人とも?……あっ!姉さん、それって………」
「な、なんでもないから!ね!ね!?」
「あらあら~。姉さんは和夜ちゃんとよろしくやってるわけか~。へ~」
「べ、別にそんなことないわよ!?これは、これはその……ちょっと虫に刺されて……」
「へ~そんなにたくさん?いいんじゃない?ちゃんと愛されてるってことだもん。それに、私だって風くんとたくさんいちゃいちゃしたいもの?ねえ?」
「うう~~~」
「ねえ、結局吹雪のあの傷何なの?」
「あ~ミヤちゃん知らない?えっとあれはね、恋人たちが結ばれた時につける証みたいなものよ」
「?」
「えっと、もうちょっと具体的に言うと、恋人たちがまぐわった時につける相手のことが好きだっていう証よ」
「まぐわう………まぐわう!?」
想定外のセクシャルな答えにボンと、まだ風呂にも入っていないのにのぼせたように顔を赤くさせるミヤ。
「えええ、ふふふ吹雪、和夜さんとそそそそんなことを!?」
「違うのよ、ミヤちゃん。これはそうじゃなくて……違う、違うのよ~~!」
口調がここの当主に近くなるまでに動揺を示すミヤ。その反応にあてられさらに頬を赤くする吹雪。
脱衣所の平均気温が二度ほど上がった。
「ごめん、吹雪。ちょっと取り乱しちゃった」
「いいのよ、ミヤちゃん。私にも非があったわ。そしてできれば今回のことは忘れてくれると助かるわ」
今回の事件は吹雪とミヤの痛み分けということで決着がついた。
ちなみにもう一人の当事者、燈は我関せずといった感じで服を脱いでいる。
さらに余談だが、吹雪と燈は双子である可能性が高いらしいが、ミヤから見た限りおっぱいのサイズは全く似ていない。
体のつくりを空気抵抗の削減に全振りしたスレンダーな体は吹雪のグラマーな体とは似ても似つかないし、逆にミヤのやや幼女趣味のためのツルペター気味な体とは酷似している。
黙々とその少女の柔肌をさらしていく燈。
と、だんだんと面積を多くしていく肌色にミヤは固まらざるを得なかった。
「あ~。やっぱり夏場のさらしは蒸れるな~」
そう、さらしだ。さらしが燈の今にも爆発せんと荒ぶる二つのたわわな果実を締め付けていたのだ。
彼女がさらしを一巻きずつ解いていくたびに、ボイイン、ボイイン、とその本来の姿を現していく双丘。やがて、長き封印から放たれたそれは、吹雪をもしのぐ化け物であった。
「汗かいてて気持ち悪いから早く入ろ~」
「そうね~。久々の温泉ね~、たのしみだわ~」
そして、巨神兵を携えていても全くおごらないその謙虚さ。
フッ、勝てねえぜ………。
ミヤは二人の戦女神に白旗を上げた。
「にゃ~。気持ち~」
神野内家の浴槽よりもやや高い温度の温泉に旅で疲れ切った体を心地よく溶かしてくれる。
「そうね~」「同感~」
デカパイ組もミヤ同様多幸感にあふれた顔で溶けている。
「そういえば、ここの温泉の効能は肩こり、腰痛、節々の痛み、古傷、冷え性、高血圧、貧血、神経痛、筋肉痛、生活習慣病、痛風、皮膚病、蕁麻疹、妖力枯渇、男性不信、女性不信、失恋、初恋のほのかでなかなか取れない、まるで喉の奥の小骨のような傷らしいわよ」
「なんか一部おかしいの混じってない!?」
燈の言葉に思わず叫びをあげるミヤ。
確かに温泉に入れば心が和らぐだろうが、そんなディープな心の傷まで治せるのだろうか?
「まあ、たしかに初恋の傷はよくわからないよね~。でも、私たちには関係ないし確かめようがないな~。私は風くんと熱々だし、姉さんも和夜ちゃんもちゃっかりしてるし、ミヤちゃんもね~。高ちゃんとはどこまでいったの~?」
「え!?べ、別にじんのうちとはそんな関係ではないよ!」
「え~そうなの~?………まあ、でも私もミヤちゃんとは会って三日くらいだから知らないところもあるかもしれないからな~。……じゃあ、姉さん目線から見てどうなの?ミヤちゃんと高ちゃん?」
「ん~そうね~………できてなきゃおかしいくらい?」
「吹雪さん!?」
まさかの裏切りが発生した。ミヤは驚きの余り目を見開き吹雪の方を凝視する。くそっ、いい体してるなあ、チキショウ!
「え、だって、ミヤちゃんと高くんが二人でいるときすっごくいい感じなんだもの~。それに、この前の総会の時、高くんに綺麗って言われた時、ミヤちゃんもまんざらじゃない顔してたじゃな~い」
「ぐっ……」
「やっぱり~!ミヤちゃん、別に隠さないでいいのよ?人に恋をするっていうのは恥ずかしいことじゃないし、むしろ幸せなことなのよ?私も風くんに恋して心から嬉しいもの!」
「うぐっ………」
あまりの居心地の悪さに、マナー違反かもしれないが浴槽に潜った。苦しかった。十数秒で息の限界がきて上がらざるを得なかった。
「た、たしかにじんのうちには空っぽの私に居場所を作ってくれて本当に感謝しているし……その…好意みたいなものも抱いてると思う………」
出会った時から、『ああ、いい人だな』と思っていたが、その優しさにだんだんと惹かれていく自分がいた。共に過ごす中で、ふとした時に現れる彼の優しさは、何も持たずに生まれ落ちた私の心を埋めていった。
胸がどきどきした。頬が赤く染まった。彼といると自然に笑顔になった。どこからともなく現れる熱情が私を襲った。幸せが私を押しつぶした。そして、
私は初めて恋というものを知った。
「でも、私が何か言ってじんのうちに余計なこと考えさせたくないし………それに、もうこんなにたくさんのものもらったのに、これ以上望んじゃだめだよ……」
そう、この生活が大切だと思からこそ、この関係を壊したくないのだ。
自分に何一つ返せるものがないから、これ以上のおねだりはいけないのだ。
それは、ミヤの本心であって、詭弁で合って、強がりで合って、ミヤの心への裏切りなのだ。
「か……か………」
「か?」
ミヤがややセンチメンタルな気分に浸っていると、燈がなぜか手をわなわなさせながら何かつぶやいていた。
「かわいい~~!!!」
途端、燈がミヤに飛びつき、その豊満なお山にダイレクトインする。普通に苦しい。
「そんなに自分のこと追い詰めてちゃダメよ!高ちゃんは鈍ちんで朴念仁だけどミヤちゃんのこと嫌いじゃないから、可愛いミヤちゃんがもっと攻めれば一発よ!もっと自信をもって!」
「ふがふががもがが、ふがが!」
「え~と……燈、まずはミヤちゃんから離れないと。苦しそうよ?」
「え?………はっ!ご、ごめんミヤちゃん!ちょっと盛り上がっちゃって……」
「だ、大丈夫だよ……」
一瞬、川の向こう岸で手を振る座敷童が見えた気もするが気のせいだろう、多分。
「えーとそれでね、ミヤちゃん、もし良ければミヤちゃんが高ちゃんをオトす方法を一緒に考えない?」
「え?ごめん、燈、私の話聞いてた?」
ミヤは自身のうちに眠る密かな恋心をそのまま寝かせておきたいといったはずだが伝わっていなかったのだろうか?
「もちろん!ミヤちゃんが高ちゃんにどう攻めるかの話でしょ?」
「うん、聞いてなかったんだね」
「なんでよ!友達の恋路を叶えようとするのは普通のことでしょう!?」
「ぐっ……友達………」
ミヤにとって決して多くない存在『友達』の言葉がミヤの胸に深く突き刺さる。その勢い神殺しの聖槍のよう。
「そうね~。やっぱり親友の恋はちゃんと結ばれてほしいものね~」
ミヤの勢いの衰えたタイミングを狙い、吹雪もそれに乗っかる。何なら若干グレードを上げてきた。
「…………ちょ、ちょっとだけだよ?」
その声にデカパイーズは歓喜の表情を浮かべた。
「せんぱ~い、お背中でも流しましょうか~?」
「いいよ、別に」
逞しく盛り上がる上腕二頭筋。しなやかに伸びる背筋。圧倒的存在感、腹筋。踊り狂う大臀筋。歓喜する大胸筋。
そう、ここは男湯。
女湯を乙女たちの楽園とするならば、ここは己が抱えし自尊心、そして業の結晶体、唯一無二の一振りの相棒とともに出向く、地の獄の戦場。
男。否、漢の世界なのであった………!!!
現在、高、風牙、和夜三名は、女性陣と同じように温泉に入っていた。
あまり長風呂ではない高は体を洗い、他二人はやや温度の高い浴槽に体を沈めている。
ちなみに、がたいのよい高と和夜はもちろんのこと、風牙も結構ガチムチであるため、絵面が大変やかましかった。
「じゃあ、和夜さんはどうです~?」
「俺もいいよ」
「え~つれないな~………じゃあせんぱ~い、ミヤさんのお話でも聞きましょうか~?」
「なぜそうなる!?」
間取りの都合上、風牙達に背を向けていた高の首がグリンと勢い良く回る。
「え、だって先輩、最近隙があればミヤさんの話をしてくるじゃないですか~?やれ、ミヤさんが笑ってくれたんだとか、やれ、ミヤさんを怒らせてしまったどうしようだとか」
「そんなこと言っていたか!?」
「言ってましたよ、何度も何度も!もしかして無自覚だったんですか!?」
「………ああ、全く気付いていなかった……」
「うそでしょ………」
「まあ、高らしいといえば高らしいが………」
高の無自覚のろけに風牙は戦慄を、和夜は慣れているのか呆れを示す。
というか、仮にも組織の頭であるのにそんな反応をしていいのだろうか……。
「……まあそれは一旦置いときまして……また聞かせてくださいよ~ミヤさんのハ・ナ・シ!」
「いや、そんなこと言われてもだな………」
「いいじゃねえの。ここには俺たち以外いねえし。それに、俺も聞きたいしな~」
「和夜お前、裏切りやがったな……」
「はは!よいではないかよいではないか~」
流石に二人にせかされれば言わないわけにもいかず、高はささっと体を洗い切ると、二人と同じ湯船につかり、いやいや口を開けた。
「………そんないきなり言えって言われても何もないんだが……」
初手から転んだ。
「別に、そんなに大きな話は求めてないですよ。なんなら先輩たちは日常の話の方がかわいいんですから」
「かわいいって何!?」
「気にしないでいいですから~。ほらほら、早く!」
「む、……うーむ、そうだな………。あ、この前、ミヤが異能の練習してた時、上手くできてたから撫でたんだが、そしたら急に慌てて……。それから少しの間動きがぎこちなかったんだがなぜだろうか?……やはりいきなり触れたことで警戒させてしまったんだろうか?」
と、高がいろいろ思い出しながら話していると、風牙と和夜は顔を手で抑え天を仰いでいた。なんか、くううぅぅぅぅ!って感じだった。
「おい、どうしたんだ?」
「いや、あまりにも先輩とミヤさんが可愛いというか尊いというか……」
「うん、なんかものすごく馬鹿にされてる気がする。やめていいかな?なあ?」
「すいませんすいません!俺が悪かったです!だからやめないでくださいよ~!」
「俺からも頼む」
「なんでお前らこういうときだけ謎に団結力強いの?」
高は二人にジト目を向けるが、知ったこっちゃないとへらへらしていた。高は久しぶりに人を殴りたいと思った。
「じゃあ話は戻しますけど、先輩はミヤさんがなぜ慌ててたかを知りたいんですね?」
「………まあ、そういうことだ」
話逸らしたのは誰だというツッコミは高の寛大さと気力の問題でカットさせていただく。
「それはですね…………ずばり、恥ずかしかったからですよ!」
「ふむ……うん?だが前まではそんなことなかったぞ?」
「え、先輩前からミヤさんの頭をなでたりしてたんですか?」
「そうだが?そんなに変なことか?」
「……いや、変じゃないって言ったらそうなんでしょうけど………それが変じゃないのは恋人限定じゃないですかね?まあ、先輩とミヤさんは恋人なんだし変じゃないか!」
「おい、風牙。最近何かにつけてそれ推してくるが俺とミヤは決して恋愛関係などではないぞ?」
「いや、恋愛関係じゃなかったらそんな甘々な質問しませんよ!?」
「甘々?俺はまじめに質問しているだけだぞ?」
「いや、天然か」
「はは、まあ、十数年間一緒に暮らしてきた俺から見ても高は間違いなく天然だな」
「お前ら、人のこと天然天然って……」
「わりぃわりぃ。……でも、まあ高と嬢ちゃんが恋人ってのは言い過ぎかもしれねえが、お前、嬢ちゃんのこと異性として意識したことあるだろ?」
「いや、それはない」
和夜は見逃さなかった。
高の淡白な否定の中でその瞳がやや揺れていたのを。
和也は知っていた。
それが高の嘘をつくときの合図で合ったことを。
「またつまらん噓を………あのな~、別に人を好きになることは別に悪いことじゃないんだよ。だからもっと自信持っていこうぜ!」
「…………別に嘘言ってるわけじゃないんだよ。………確かに、一緒に住んでいる以上ミヤのことを異性として意識したことはある。好きか嫌いかで言ったら間違いなく好きだろう。……だが、それが恋という感情ではないと思うんだ」
そう語る高の目には、確固たる意志があるようにも見えたし、未だ恋を知らずにもがき苦しむ年相応の少年にも見えた。
「それに、ミヤは多分もの凄く遠くからやってきた。いずれはそこに帰るだろう。なら、ミヤのこと好きになったりしたらミヤが迷惑するじゃねえか?」
そこまで言って、理由もなく高はかすかに笑った。
「高………お前はそれでいいのかよ?悲しくないのか?」
「まあ、いいも何も俺の問題じゃねえしな………それに悲しい悲しくない云々に関しては、俺に限って絶対にありえねえだろ」
「そうか………まあそうだよな。じゃあそれまでは嬢ちゃんとちゃんと仲良くしねえとな、高?」
「言われなくてもだよ!」
そうして二人のための恋愛相談は過ぎていくのであった。




