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猫と桜  作者: 詩音
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最近更新ペースが落ちてごめんなさい。 第十二章

  第十二章 事後 後編

「あ~気持ちい~。ねえ、吹雪ちゃん」

「うん、気持ちいいね」

 ここは、鏖妖組の女風呂、大浴場。修練後や、一日中職場で缶詰めになる人、それに今回のような襲撃後などに使われ、そのお湯は異能によって常にきれいで温かい状態に保たれている。

 襲撃やらなんやらで結局、ミヤの鏖妖組に来た本来の用事を果たすことができず、今日は鏖妖組に泊まって明日にその用事を終わらせることにしたのだ。

 ミヤたちが医務室を去ったのは夜もかなり更けていたため、浴場には自分たち以外は見られない。

 それをちらっと見ると、ミヤはさらに全身の筋肉を緩ませより深く体を休ませる。

「でも、あんなに激しい戦いだったのに、ここに来るまで何も壊れていなかったね」

 そう、襲撃の時にはかなりたくさんの爆発音や、何かが壊れる物音がしたのに、ミヤが見た限り鏖妖組の建物は一切壊れておらず、それどころかすべての場所が全く汚れていないのだ。

「あ~それはね~、そもそもこの建物は厳密にいえば存在してないのよ~」

「え、それどういこと?」

 存在していないというが、ミヤはお湯の温かさや、浴場のヒノキの触感などはっきりと感じることができる。

「う~ん、説明が難しいな~。………えっとね、鏖妖組の建物は全部ここの人たちの妖力でできているの。あ、妖力っていうのは異能を使うために必要な力のことで、それを使ってお屋敷の建物を顕現させている、って感じかな。だから、実体がないのと一緒だから壊れてもみんなの妖力を使ってすぐに直ちゃうし、そもそも汚れることがない。………あと、これは襲撃をできるだけ減らすために、定期的に個々の間取りをガラッと変えたりもしてるのよ~」

「へー………やっぱり襲撃とか多いの?」

「まあ、多いわね~。まあ、強い妖たちはみんなうちで相手にしてるから、妖からは相当恨みを買うわね~。まあ、でも最低でも2人は幹部が本部にいるようにしているから、あんまり苦戦とかはしないわね」

「ん、幹部っていうのは吹雪とかのこと?」

「ええ、そうよ~。鏖妖組は今、分隊が5つあって、そのうちの4番隊までが先頭を受け持って、5番隊はけがの治療とか、呪いの解除とかを受け持つの。そして、そこの隊長と副隊長、それに頭取の高くんと、副頭取の風牙くんの11人のことを幹部っていうわよ。ミヤちゃんの知ってる人だったら、和夜も3番隊の隊長だし、斑ちゃんもああ見えて一応5番隊の隊長よ~」

「え、斑さんが?」

「ええ、正確には難ありだけれど、彼女の医療の知識は本物よ~。だから5番隊には必要不可欠な人なのよ~」

「へー」

 ミヤの、斑への尊敬度が少し上がった。

 話がいったん切れて、ミヤは吹雪とほぼおなしタイミングで大きく伸びをすると、さっき話してもらったことを思い出して、ある一つの違和感を見つけた。

「あれ、5番隊まであって、そこの隊長と副隊長、そして頭取と副頭取が幹部なら11人じゃなくて12人じゃない?」

「あ~。……それはね、恥ずかしい話なんだけど、私の隊の2番隊は誰も隊員がいないのよ~」

「え、なんで?」

 それを問うと吹雪は、少しばつの悪い笑みを浮かべながら答えた。

「えっとね~、鏖妖組では訓練としてだいたい対人戦をしてるんだけど、基本的に同じ隊でやるのよ。だからね、あの、……ミヤちゃん、見たでしょ、私がたすき掛けした時の性格」

「あーうん、あの時は驚いたよ」

「うん、それでね、その……訓練の時に…………しにしちゃったの」

「え、なんて?」

「……ろしにしちゃったんだって」

「ごめん、もう一回」

「だから、これぐらい行けると思ったら間違って半殺しにしちゃったんだって!」

 3度目になって、もう自棄になった吹雪はきちんと帰庫る声で白状してくれた。

「へ、へー」

「あ、やっぱり!引いたでしょ!だから言いたくなかったのよ~!」

 余裕のある聖女の顔はどこかへ消え去り、今はかわいらしい女の子が年相応に嘆いているようにしか見えない。吹雪の新しい一面が知れてミヤは嬉しかった。

「あ、いやそんな、引くとかではないんだよ?いや、でも大変だな~って。やっぱり強すぎるっていうのも逆に困ることもあるんだね~」

「そうなの!強すぎると色々大変なことあるんだよ!」

「例えば?」

「えっとね………」

 そのまま、ミヤと吹雪はのぼせる一歩手前までお風呂で談笑した。

 一緒にお風呂に入ったことで、昼よりももっと吹雪を身近に感じることができてミヤは胸に温かいものが灯るような気がした。


 吹雪とともにお風呂から上がり、吹雪から借りた寝巻に着替えたミヤは、今日お泊りする予定の吹雪の部屋に来ていた。

 鏖妖組では幹部クラスになると、一人に一部屋が与えられるらしい。吹雪の部屋は、きれいに片付いていて、床の間に飾られた一枚の一羽の鶴の掛け軸が彼女の神秘的な見た目を強調していた。

 彼女の部屋に来てから、また他愛のない話を楽しんだり、和夜が作ってくれたらしいお菓子を夜食でちょこっと食べたりした。やっぱり、吹雪と話すのはとっても楽しいし、夜食を食べたときは少しだけ悪いことをしているような気もして、二人の秘密にしようと吹雪と言い合ったときは、その響きに舞い上がるような喜びを感じた。

 いい感じに夜も更け、そろそろ眠くなってきた二人は、部屋に二人の布団を敷いて毛布にくるまり、また少し話をした。

 障子から漏れ出る月明かりに照らされ、きらきらと彼女の銀の髪は同性のミヤから見てもとてもきれいで、だからこそこの問いを口にした。

「そういえば、吹雪はなんで髪の色が白色で、瞳の色が赤色なの?」

 吹雪と最初に会ったときは、その前に出会った人が高しかいなかったため特に不思議に思わなかったが、鏖妖組で様々な人に会って、その中で吹雪一人だけ髪の色が白銀のような純白なのだ。ほかの人はみんな完全な漆黒の髪で、斑も所々白い部分があったが、それも少しだけで吹雪の白とはまた別ものだろう。

「え~。今さらそれ聞くの~?ふつうは出会ってすぐに聞かれるんだけどな~?」

「あはは……その時はまだ吹雪が特別だなんて思わなかったからさ……」

「やっぱり変?」

 途端、吹雪は少し目を細め何かを試すようにそう問いかけた。

 しかし、吹雪の変化は傍から見ると微々たる差であり、ミヤはそれに全く気付かないまま素直に答える。

「まあ、変か変じゃないかで言ったら、少しおかしいような気もするけど…………別に全然気にならないし、それに猫の耳としっぽついてる私のほうが相当変だけどね」

 そう言って、カラカラと笑いだすミヤを見て、吹雪はまるでキツネにつままれたようになったが、ミヤにばれないように小さく微笑むと、自分の髪の色について少しずつ語りだした。

「私の髪の色が白いのはね~、最初は私が外国から来たからって思ってたんだけど、斑ちゃん曰くアルビノっていう種類?だからなの」

「え、吹雪って外国から来たの?どこから?」

「あ、そこに食いつくのね」

「あ、ごめん、別に、そのアルビノ?っていうのに興味がないわけではないんだよ。……えっと」

「謝らなくてもいいのよ~?………でね、そのどこから来たっていうのはね、実は全くわからないの」

「え?」

「えっとね~、とても遠くから来たっていうことはなんとなくわかるんだけど、どこから来たとか、どうやって来たとか、それまで何をしていたのかっていうのは全くわからないの。七歳くらいの時に気づいたら一人で海岸に倒れていて………あ、でも外国から来たってのは本当よ。妹が外国の人の髪の色してるもの」

「妹?」

「そうよ~。(あかり)っていうんだけど、その子の髪はきれいな金色なのよ~。私と同じで記憶を失ったまま、ここまで流されて、五年前から鏖妖組で一緒に働いてるわ。今は任務で遠くまで行ってるけど、確かもう少ししたら帰ってくるはずよ」

「へー。…………ん、なんで記憶がないのにその燈さんが妹だってわかったの?」

「それは、やっぱりあったらわかるわよ。……たとえ記憶が全くなくても家族に会ったら、ああこの人が家族なんだな、ってわかるものよ~」

「…………なんか、そういうのいいね」

「ふふ、ありがとう。……ミヤちゃんも早く家族が見つかればいいね」

「うん、そうだね。………でも、たとえ家族がいなくても吹雪たちがいてくれるから全然さみしくないよ」

「あら、うれしいわね~。じゃあ、もっと寂しくないようにしましょうか~」

 そう言い、吹雪は自身の布団から抜け出し、ミヤの布団に潜り込み体をピタッと近くにつけた。

「あはは、ありがとう吹雪。………じゃあ、寝よっか」

「ええ、おやすみなさい、ミヤちゃん」

「うん、おやすみ、吹雪」

 二人はそのまま、互いの体温を共有しかつてないほどの安心感と多幸感を感じながら意識を闇の中に流していった。


 そして明け方、一緒に朝ご飯を食べようと二人を起こしに来た斑は、そのあまりにも百合百合しい光景を見て、あまりの興奮で体からいろいろな汁を垂れ流しながら地に伏したのであった。

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