↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
8/11

第008話 自動更新を見直せ


午後六時。

礼拝堂のスクリーンには静聴会の紋章が映っている。

教祖・天城修は演台の前に立ち、マイクへ手を伸ばした。


静寂。




『『拝聴せよ。』』




全員が自然と姿勢を正す。

天城だけが、その先の声へ耳を澄ませた。


そして神は告げた。




『自動更新を見直せ。』

天城は少し眉をひそめた。




数秒。補足が続く。

『使っていないものがあるかもしれぬ。』

さらに。




『忘れているだけかもしれぬ。』




そこで神託は終わった。

天城はマイクを握り直す。

「神託が下った。」


礼拝堂が静まる。

「自動更新を見直せ。」


信徒たちは黙って聞いている。

「使っていないものがあるかもしれぬ。

 忘れているだけかもしれぬ、との仰せです。」


結衣も周囲に合わせて、スマートフォンを取り出した。

「……自動更新。」


設定を確認する。

しばらくして。

「あ。」


結衣の声に、近くにいた熊谷が振り向く。

「どうしました?」


「これ……。」

結衣が画面を見せる。

「動画配信サービスです。」


「見ているのですか?」


「……最近は、あまり。」


「いつからです?」


「……半年くらい。」


結衣は画面を見つめた。

「毎月、払ってたんだ……。」


黒田守が横から画面を覗く。

「月額はいくらですか?」


「九百八十円です。」


黒田が少し考える。

「半年なら、それなりですね。」


「……。」


結衣は静かにスマートフォンを操作する。

「解約します。」


「それがよいでしょう。」


黒田がうなずいた。

周囲でも、次々と声が上がる。

「俺もあった。」


「私もです。」


「これ、まだ払ってる……。」


礼拝堂が少しずつ騒がしくなる。

熊谷が腕を組んだ。

「なるほど……。」


結衣が熊谷を見る。

「何か?」


「自動更新とは、忘れている間にも続いていくもの。」


「……はい。」


「つまり、我々は知らぬ間にも契約に縛られて――」

天城が口を挟む。

「普通に解約を忘れていただけだと思う。」


「……はい。」


結衣は苦笑いを浮かべた。

その横で、黒田が自分のスマートフォンを確認している。

「私も一件あります。」


天城が見る。


「黒田も?」


「はい。」


「何のサービスだ?」


黒田は画面を見つめた。

「……分かりません。」


「分からない?」


「何のサービスか分からないものに、

 毎月お金を払っています。」


礼拝堂が静まり返る。

結衣が思わず黒田を見る。

「それは……大丈夫なんですか?」


黒田は真剣だった。

「確認します。」


しばらく画面を操作する。

「あ。」


「何だった?」


「二年前に登録した音楽配信サービスです。」


「使ってるの?」


「使っていません。」


「二年間?」


「二年間です。」

結衣は少しだけ目を丸くした。


熊谷が静かに口を開く。

「神託とは、

 我々が忘れていたものを思い出させるものなのですね。」


天城が少し考える。

「今回は、そうかもしれないな。」


熊谷は満足そうにうなずいた。

「深い。」


「今日はそれくらいなら、まあいい。」


礼拝堂に小さな笑いが広がった。



--



【教団報告】記録係:中村


神託

「自動更新を見直せ。」


実施率

本部:100%


確認事項

使用していないサービス:多数


解約した契約:八件


備考

「何のサービスか分からないものが一件あった。」


追伸

「二年間、誰も気づかなかった。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。