第005話 エコバッグを持て 前編
佐倉結衣は、静聴会の建物の前に立っていた。
スマートフォンの画面を確認する。
住所は合っている。
目の前の建物も、思っていたより普通だった。
「……ここか。」
看板には
静聴会
とだけ書かれている。
結衣には、ここに通っている友人がいた。
最近、友人の様子が少し変わった。
以前より明るくなった。
楽しそうでもある。
だからこそ、余計に気になった。
「宗教って……大丈夫なのかな。」
本人に聞いても、
「別に変なところじゃないよ。」
そう言うだけだった。
なら、自分で見てみるしかない。
結衣は小さく息を吐き、建物の中へ入った。
「こんにちは。」
受付の信徒が笑顔で迎える。
「見学ですか?」
「はい。」
「こちらへどうぞ。」
案内された机には、簡単な用紙が置かれていた。
名前。
連絡先。
見学理由。
結衣は用紙を見つめた。
「……普通。」
「はい?」
「いえ、なんでもありません。」
記入を終える。
結衣が受付で少し身構えた
「献金とか、求められるんですよね?」
黒田は穏やかに答える。
「任意です。」
結衣は少し肩の力を抜く。
すると黒田が続けた。
「ただし。」
結衣が身構える。
「領収書は出せます。」
「そこ?」
黒田は真面目だった。
「経理は大事ですので。」
「礼拝は十八時からです。」
「礼拝……。」
「よろしければ、ご一緒にどうぞ。」
「はい。」
結衣は礼拝堂へ向かった。
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午後六時。
礼拝堂のスクリーンには、静聴会の紋章が映っている。
信徒たちは静かに座っていた。
結衣もその後ろに座る。
前方には、一人の男性。
教祖らしい。
表情は真面目で、落ち着いている。
結衣は周囲を見回した。
もっと怪しい雰囲気を想像していた。
だが、
誰も叫んでいない。
変な踊りもしていない。
ただ静かに座っている。
「……普通だ。」
その瞬間。
教祖がマイクへ手を伸ばした。
礼拝堂が静まり返る。
そして――
『『拝聴せよ。』』
「……え?」
結衣は顔を上げた。
今の声。確かに聞こえた。
どこから聞こえたのか分からない。
けれど、聞き間違いではない。
結衣は周囲を見た。
信徒たちは何事もなかったかのように姿勢を正している。
教祖だけが、静かに目を閉じていた。
「……今の。」
思わず口に出しかける。
だが、誰も反応しない。
結衣はもう一度周囲を見る。
やっぱり誰も驚いていない。
教祖が目を開けた。まだ何も言わない。
結衣は息をのんだ。
――何かを聞いている。
そう思った。
しばらくして、教祖がマイクを握り直した。
「神託が下った。」
結衣は姿勢を正した。
神託。
今度は、何を言うのだろう。
教祖が口を開く。
「――」
結衣は待った。
しかし。
その先の声は、聞こえなかった。
「……?」
結衣だけが、わずかに眉をひそめた。
周囲の信徒たちは、静かに教祖を見つめている。
教祖が口を開いた




