第003話 製氷機もたまに洗え
午後六時。
礼拝堂のスクリーンには静聴会の紋章が映っている。
教祖・天城修は演台の前に立ち、マイクへ手を伸ばした。
静寂。
『『拝聴せよ。』』
全員が自然と姿勢を正す。
天城だけが、その先の声へ耳を澄ませた。
そして神は告げた。
『製氷機も、たまに洗え。』
天城は少しだけ目を閉じた。
……またか。
数秒。補足が続く。
『氷を作るからといって、汚れないわけではない。』
天城はゆっくり目を開けた。
さらに続く。
『見えないところほど、忘れる。』
そこで神託は終わった。
天城はマイクを握り直す。
「神託が下った。」
礼拝堂が静まる。
「製氷機も、たまに洗え。」
信徒たちは黙って聞いている。
「氷を作るからといって、汚れないわけではない。
見えないところほど、忘れる……との仰せです。」
熊谷が腕を組んだ。
「なるほど……。」
天城に目を向ける。
「これはつまり――」
「普通に製氷機の話だと思う。」
熊谷が止まった。
「……はい。」
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礼拝後。台所。
信徒たちは製氷機の前に集まっていた。
「どこを洗えばいいんだ?」
「とりあえず、外せるところから……。」
「説明書は?」
「あります。」
黒田守が説明書を広げる。
「……ここ、洗浄方法が書いてあります。」
熊谷が覗き込む。
「神託とは、説明書を読むきっかけを与えるものなのですね。」
天城が横から言う。
「それは神託がなくても読んでほしい。」
信徒たちは部品を外し、ひとつずつ洗っていく。
しばらくして。
「……こんなところも外れるのか。」
「知らなかった。」
「ここ、結構汚れてるぞ……。」
一同が黙り、天城も覗き込む。
「……本当に汚れてるな。」
熊谷が深くうなずいた。
「神はすべてをご存じなのです。」
天城は少し考える。
「いや。」
製氷機を見る。
「たぶん、神も知らなかったと思う。」
一瞬の沈黙。
「……だから言ったのかもしれません。」
熊谷は真剣な顔で製氷機を見つめた。
「神の御心は、深い。」
「便利な言葉だな、それ。」
礼拝堂の外まで、小さな笑い声が響いた。
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【教団報告】記録係:佐藤
神託
「製氷機も、たまに洗え。」
実施率
本部:100%
確認事項
製氷機の洗浄方法を知らなかった者:多数
追伸
「氷はきれいだった。」




