第002話 USBの向きを確認せよ
午後六時。
礼拝堂のスクリーンには静聴会の紋章が映っている。
教祖・天城修は演台の前に立ち、マイクへ手を伸ばした。
静寂。
『『拝聴せよ。』』
全員が自然と姿勢を正す。
天城だけが、その先の声へ耳を澄ませた。
そして神は告げた。
『USBの向きを確認せよ。』
数秒。更に補足が続く。
『逆だと思った時ほど、案外その向きだ。』
また少し間が空く。
『一度、落ち着け。』
天城はマイクを握り直した。
「神託が下った。」
礼拝堂が静まる。
「USBの向きを確認せよ。」
「逆だと思った時ほど案外その向きだ。一度落ち着け、との仰せです。」
熊谷が静かにうなずく。
「教祖様。」
「USBとは、Universal Salvation Blessing──」」
天城は即座に遮った。
「違う。」
熊谷はひるまない。
「では、Universal Sacred——」
「違う。」
「まだ最後まで——」
「USBの話だ。」
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礼拝後。
信徒たちは礼拝堂の隅へ集まった。
事務机の上には、古いパソコンとUSBメモリ。
「試してみます。」
若い信徒が差し込む。
コツ。
入らない。
「やっぱり逆か。」
向きを変える。
コツ。
「……あれ?」
もう一度向きを見直す。
コツ。
すっと入った。
「おお……。」
周囲から小さなどよめきが起きる。
経理係・黒田守が苦笑する。
「仕事でも、毎回これです。」
熊谷は深くうなずいた。
「神の御業です。」
天城は笑う。
「いや、落ち着いたからでは。」
熊谷は真剣な顔で答えた。
「神託がなければ、三回ひっくり返していました。」
天城は少し考えた。
「それは……ある。」
礼拝堂には、小さな笑いが広がった。
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【教団報告】記録係:伊藤
神託
「USBの向きを確認せよ。」
実施率
- 本部:100%
成果
- 三回ひっくり返す者:0名(自己申告)
追伸
「USB-Cは向きを気にせずともよい。」




