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第二章第一話 冒頭チラ見せ

 森が終わった。


 そう思ったのは、城壁が見えた瞬間だった。


 高い。


 村の柵とは比べものにならない。


 石を積み上げただけなのに、それだけで人間は安心するらしい。


 クレは見上げながら思った。


 熊は越えられるだろうか。


 ゴブリンならどうだろう。


 人間は、どうして壁を見ると安心するのだろう。


「大きいね」


 ツムギが言う。


「ああ」


 人がいた。


 荷車がいた。


 商人がいた。


 冒険者らしい連中もいた。


 笑っているやつ。


 怒鳴っているやつ。


 眠そうなやつ。


 同じ門へ向かっているのに、誰も同じ顔をしていない。


 クレは少しだけ目を細めた。


 面倒そうだ。


 その感想が最初だった。


「クレ」


「なんだ」


「楽しみ?」


 クレは少し考えた。


 街が楽しみかと聞かれれば違う。


 期待しているわけでもない。


 だが。


 村にはなかったものがある。


 人がいる。


 たくさんいる。


 それだけは事実だった。


「分からん」


 そう答えると、


 ツムギは少しだけ笑った。


 門の向こうには街がある。


 金がある。


 仕事がある。


 嘘がある。


 そして、人がいる。


 クレはまだ知らない。


 森よりも。


 熊よりも。


 ゴブリンよりも。


 人間の方がずっと面倒だということを。



第二章『人間社会』


7月1日 投稿開始

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