六 三角形
「しかし……追い詰めると言っても、いつ――?」
真薫が訊くと、兼遠は首を振った。
「今ではない。道顕様は、まだ強大すぎる。しかし、いつか必ず機会がある。――どんな権力者も、永遠ではない」
兼遠の目が、鋭くなった。
「その日のために、証拠を集め続けるんだ」
「わかりました」
真薫は頷いた。
「兼遠様を信じます」
「ありがとう」
兼遠は、微笑んだ。
「そして、もう一人」
兼遠は言った。
「合歓の君だ」
思いもよらぬ名前を聞いて、真薫は思わず眼を剥いた。
「合歓の君が……?」
「ああ。彼女も、協力してくれている」
兼遠は説明した。
「合歓の君の父、大江宣隆殿は、私の古い友人だ。――有子とも知己だった」
よく三人で和歌や漢詩を朗詠したそうだ。
「宣隆殿は、どの派閥にも属さない、学識高い人だ。今上帝の東宮学士でもあったからね。覚えもめでたい。道顕様も、自派閥に取り込みたいと思っている」
兼遠は目を細めた。
「だからこそ、彼女は中宮様に仕えることになった。そして、私も宣隆殿の御息女を支援している」
真薫は、驚いた。
次子と兼遠が、繋がっていた。
「三人で、道顕様と戦うんだ」
兼遠は、真薫を見た。
「三角形の関係。どこか一つが断たれても、他が繋がる」
兼遠の眸は暗く、けれど燃えるように光っていた。
「合歓の君から中宮様の情報を得て、私が君に伝える。君が集めた情報を、私が彼女に伝える」
兼遠は、強く、宣言した。
「我々は道顕様を監視し続ける」
決して断たれぬ糸を、繋ぐのだ。




