4 お后選びは三カ月!?
そうして順番に紹介を聞いているうちに、ここに集まっているのがどうやらヴァレンディアの大臣たちだとわかり、透子は次第に緊張してきた。
大臣たちの紹介が終わると、透子も軽く自己紹介をし、留里もそれに続いた。
先ほどからこの場を取り仕切っているギヨームは、二人の自己紹介を聞き終えると優しく微笑んだ。
「ありがとうございます。さて、昨夜イーへが申したとおり、今回は異例の事態で、我々も少々混乱しております。そこで昨夜から、お二人をどう扱うべきか話し合ってまいりました。まずは結論からお話しします」
二人は真剣な眼差しでギヨームの言葉を待った。
「お二人にはシジル・レゾナント候補として三カ月、競っていただくことになりました」
「シジル・レゾナント候補?」
「はい。クイーンズ・シジルを扱う資質を持つ者を、シジル・レゾナントと呼びます。お二人は現在、その候補ということになります」
即座に留里が口を開いた。
「三カ月も競う必要がある? 途中で私たち二人の力にあまりにも大きな差が出れば、そこで終わりにしてもいいんじゃないの?」
「いいえ。この三カ月という期間には理由があります」
「理由? どんな?」
「確か、お二人の世界には霊力はないはずです。ちがいますか?」
透子と留里は顔を見合わせた後、透子が答える。
「はい。確かにありません」
「ですが、この世界では誰しもが霊力を持ち、霊術を使えます。お二人も例外ではありません」
留里は瞳を輝かせ、身を乗り出した。
「そうなの?」
「そうです。そして今は、体が霊力に馴染んでいる最中なのです。完全に馴染むまでには三カ月ほどかかります。そのため、それまでは様子を見る必要があります」
そこで透子が質問する。
「では、完全に力が出せるようになってから判断するということですか?」
「はい。そのとおりです。それまでは、シジル・レゾナント候補として、そして王妃となるために必要な知識を身につけていただきます」
留里は透子をちらりと横目で見て、満面の笑みで言った。
「とにかく、最終的には能力の優れた方が選ばれるということよね?」
「いいえ。能力も重要ですが、それだけが判断基準ではありません。お二人の資質を見極め、我々や国王陛下、教育係などの意見を参考に最終的に判断いたします」
留里は自信満々に言い放つ。
「どうせ選ばれるのは留里だから。判断基準なんてどうでもいいけど」
そこで、それまで黙って話を聞いていたカロンがにっこりと微笑んだ。
「留里様はとても自信がおありのようで、こちらも大変期待しております」
「当たり前じゃない。そもそも透子は間違えてここに来たんだから」
透子は留里を無視して話を続ける。
「すみません。もう一つ質問してもよろしいですか?」
「はい、透子様。なんでもお訊きになってください」
「霊力のことですけれど、なにかテストのようなことをするのですか?」
「もちろんです。ただ、その前に一つお話ししておかなければならないことがあります」
ギヨームは二人を順番に見た。
「実は、お二人の世界の住人にしか使えない力があります」
「私たちだけが使える力? 一体どんなものなんです?」
「世の理を安定させる理術。我々はスタビライズと呼んでいます」
「世の理を安定させる? 乱れを正常にするということですか?」
「そのとおりです。現在、この世界で霊力が暴走せず、私たちが霊種たちとも共存できているのは、女王陛下がその力を使ってくださっているからなのです」
透子は疑問を口にする。
「でも、その力は目に見えにくいのではありませんか? 三カ月後、私たちはどうやってその力を測定するんですか?」
ギヨームは感心したように透子を見た。
「よくお気づきになりましたね」
留里が即座に反応する。
「ちょっと待って。留里もそれには気づいてたけど? 透子が出しゃばって話しているから黙ってただけだもん」
「そうですか、それは失礼いたしました」
横からカロンが穏やかに答える。
「もちろん、留里様もお気づきだったことはわかっております」
留里は満更でもない顔でギヨームに話の先を促した。
「それで? どうやって測るの?」
「クイーンズ・シジルで確認させていただきます」
「クイーンズ・シジル?」
透子と留里は同時に言った。
この世界に来たとき、イーへが口にしていた言葉だ。
「はい。これは古来からヴァレンディアに伝わるもので、本来は女王陛下がそのお力を使う際に用います。今回はこれを使って、お二人の力を確認することになりました」
留里は意気揚々と答える。
「じゃあ、はっきりと力の差がわかるのね!? それ最高かも」
ギヨームはそんな留里を見て、少し困ったように微笑んだ。
「少なくとも、我々が見極めるより正確にその力の大きさを測ることは可能でしょう。さて、他になにか質問はありますか?」
透子と留里は首を横に振った。
「そうですか。では、我々からの話はここまでにいたしましょう。今はまだ霊力に馴染み始めたばかりです。今日はゆっくりお休みください」
その言葉を合図に、大臣たちは立ち上がると部屋を出ていった。
留里は怪訝な顔をする。
「説明はたったあれだけ? わざわざ大臣たちがする必要ってあった?」
透子は窘めるように言った。
「留里、私たちお后候補なんだから、大臣たちの顔を知っておく必要があるでしょ? 顔合わせの場でもあったんじゃない?」
留里はすぐさま言い返す。
「私たち? ちがうよね。お后には留里がなるんだから。透子は関係ないじゃない」
透子は半ば呆れ、思わず留里の顔をまじまじと見つめた。だが、あっけらかんとしたその顔を見ているうちに、あれこれ考えるのが馬鹿らしくなり、ため息をつくとそっぽを向いた。
明日から毎日一話ずつ投稿します。




