↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お后候補として二人同時に召喚されたので、私は私の幸せを選びます  作者: みゅー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
11/15

11 小さなつむじ風

 新しい生活に戸惑いながらも、覚えることは多く、毎日があっという間に過ぎていった。


 今日は霊術を使うって言ってたけど、私大丈夫かな? そもそも、私、本当に霊術なんて使えるの? それに……。


 透子はカイのことを思い出す。


「透子様? どうされたんですか?」


「いえ、なんでもないです。レオンさんを待たせたらいけないんで、もう行きますね」


 透子は慌てて部屋を出ると、指定された訓練場へ向かった。


 いつもは透子よりも遅く来る留里が、護衛のサイラスを伴い、先に来ていた。


「透子、少し遅いんじゃない? まぁ、留里と実力を目に見える形で比べられるんだもん。来たくなくて当然だよね」


 留里は自信に満ちあふれ、このときを待っていたと言わんばかりの態度で透子に言い放った。


 透子はそれを無視した。ここで返事をすれば相手の思う壺だ。


 留里はそれが気に入らなかったのか、ムッとする。


「ちょっと、なんなのその態度。気に食わないんだけど?」


 そんなこと知ったことではない。


 すると、サイラスが慌てた様子を見せた。


「留里様、そのようなことをおっしゃるのはあまりよろしくありません」


 留里はサイラスを睨みつける。


「なによ、うっさ……」


 留里は慌てて口を閉じる。カイが訓練場に入ってきたからだ。


「カイ先生、おはようございます!」


 留里は瞳を潤ませ、しなをつくると続けた。


「カイ先生、来てくれたんですね? よかった! 留里、今透子に酷いことされてたんです」


 カイは留里には目もくれず、鬱陶しそうに答える。


「関係のない話はするな。少し黙れ」


 留里は口を尖らせた。カイは話し始める。


「そろっているようだな。では、さっそく霊術について少し話そう」


 よかった、すんなり授業が始まりそう。


 透子は胸をなでおろした。


 横を見ると、留里もカイの話すことに真剣に耳を傾けているようだった。


「霊術は使おうと思うだけで使えるものではない。魂から自ずと出てくる術、それが霊術だ。説明するより実践するのがいいだろう」


 カイは訓練場の広い空間に向けて下からなにかを投げるような動作をした。


 すると、その先に小さなつむじ風がおきる。


「これが霊術……」


 透子は自分にもこんなことができるのだろうかと思いながら、そのつむじ風が消えていくのを静かに見つめた。その横で、留里は余裕の表情を浮かべていた。


「先生、留里にもそれぐらいならすぐにできると思います」


 留里は一歩前に出てカイと同じ動作をした。


 すると、ビュンッという音とともに大きな風が巻き起こり、大きく渦を巻いて訓練場の壁に当たった。その衝撃でもう一度強い風が吹き起こり、透子は慌てて乱れる髪を手で押さえた。


 留里は自信たっぷりに振り向くと、カイに微笑んだ。


 透子はそんな留里を見つめる。  


 すごい、留里はいつの間に習得したのだろう?


 驚く透子とは逆に、カイは表情一つ変えずに頷く。


「お前の今の実力はわかった」


 今度は透子を促すように目で合図した。


 私にもやってみろってこと? 透子は頷く。


「はい、できるかどうかわかりませんけどやってみます」


 透子は先ほどカイが出したつむじ風をイメージする。


 つむじ風、つむじ風。


 そうして、手を振った。


 するとカイが出したものと同じぐらい小さいが、綺麗なつむじ風ができ、しばらく訓練場の中央にとどまった後すっと消えた。


「ちっちゃーい!」


 留里はくすくすと笑ったが、透子自身はイメージ通りのつむじ風を起こせたことに感動していた。


「先生、私にもできました!」


 思わずカイに向かって叫ぶ。


「とりあえず二人とも基礎は合格点だ。今は霊術を出す感覚さえつかめていればいい。これからは、その力をどう制御し操っていくかを学ぶ」


 留里は透子を押し退けて前に出る。


「はい。留里、頑張ります!」


 カイはそんな留里を一瞥し、話を続けた。


「よろしい。今日は他の霊術も出せるよう訓練をする。今、風を出したようにイメージしながら出す」


 こうしてカイの指導のもと、透子と留里はさまざまな霊術を試していった。


 透子は一つ一つカイの言う通りに霊術を習得していった。


 留里は変わらず透子よりも威力の強い霊術を連発しつづけ、その都度透子に勝ち誇ったような顔をした。


 だが透子は最初に霊術を使ったとき、結構な体力を消耗するのだと自覚していた。


 留里、あんなに力を出して大丈夫なのかな?


 そう思った瞬間、留里がふらついて倒れそうになり、サイラスが慌てて支える。  


「離して。大丈夫だから」


「留里様、いけません。少し休まれたほうがいいです」


 サイラスは困ったようにカイに目で訴えかける。それを受けてカイは言った。


「それでは授業にならない。留里、お前は部屋に戻れ」


「留里、まだ先生の授業受けていたいのに……」


 そう言いながら、留里はサイラスに抱えられ部屋へ連れて行かれた。それを見送ると、カイは透子に向かって言った。


「透子。今日はこれぐらいにする。お前も休め」


 透子は留里ほど体力を奪われていなかった。 


「私は力を抑えていたので、大丈夫です」


「そうか、だが初日だ。休んだほうがいい」


 そうかな? せっかく霊術を使えるようになったから、もう少し練習してみたかったのにな。


 でも、カイ先生と二人きりはちょっと緊張するしな……。


「わかりました。ではまた次の授業でお願いします」


 透子はカイに頭を下げ、訓練場の外で待っていたレオンと部屋へ戻ることにした。


「透子様、流石ですね。初めて霊術を使ったのに、あんなに制御できるなんて」


 レオンは羨望の眼差しで透子を見つめた。透子はその反応に気恥ずかしくなり、視線を逸らす。


「そんなことないと思います。それに、それを言うなら、留里のほうが威力の強い霊術を出していたし」


「確かに、留里様も素晴らしかったかもしれませんが、霊術の極意はその制御にあります。初めての霊術で、あれだけ綺麗に制御できる方はそういません」


「そう、でしょうか?」


「はい。自信を持ってください」


 そっか。レオンさんは、私が留里との威力の差に落ち込んでいると思ったんだろうな。


 もちろん、まったく落ち込んでなどいない。透子はレオンを安心させるように言った。


「レオンさん。私、威力の強い霊術を出せないからって落ち込んだりしてません。留里は留里、私は私ですから。そんなに心配しないでくださいね」


 レオンは立ち止まって目を見開き、しばらく透子を見つめた後にはっとして言った。


「まさか、私は本当のことを言っただけで……。透子様は誤解しています!」


「うん。わかってます。ありがとう」


 透子が明るい笑顔でそう返したとき、廊下の向こうから透子の名を呼ぶ男性の声がした。


 レオンは素早く透子を背後に隠し、腰にある短剣の柄に手をかける。


 そうして一瞬緊張した空気が流れたが、突然レオンが警戒を解いて言った。


「ルーカス! お前何をやっているんだ」


 透子は恐る恐るレオンの背後から顔を出すと、そこにはレオンと瓜二つの兵士が立っていた。


「あ、あれ? レオンさんが二人?」


 透子は一瞬、これは霊術なのかと思い、レオンとルーカスの顔を交互に見つめた。


 レオンは申し訳なさそうに言った。


「透子様、すみません。ルーカスは同じ任務に就いている弟です。混乱させてしまって申し訳ありません」


 弟? すごい、瓜二つ!  


「もしかして、レオンさんは双子なんですか?」


 透子の目には、グリーンの瞳も、ややクセのあるブルネットの髪もまったく同じに見えた。


 するとレオンは苦笑する。


「双子ではありませんが、魂の形が似ているので容姿もかなり似てしまったようです」


 そこで透子は思い出す。この世界では、魂の形によって姿が決まるのだということを。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。